――22世紀・・・
時代の進行と共に科学も発達し、人々は歓喜した。
そして人々はさらなる科学の発展をも望んだ。それに応えるべく、
科学者達は『D−シリーズT』と呼ばれる猫型凡庸兵器を開発。
人々はこの兵器を『お世話ロボット』として使用し、
人間のコミュニケーション力、学力、人間性の向上を図った。

数十年後、科学者達は『D−シリーズT』の後継機、『D−シリーズU』の
プロトタイプを完成させた。Tは単なるお世話ロボットだったが、Uには
主人が危険になった時に発動できるプログラムが搭載されている。
その名も『Absolute rescue system(絶対救助システム)』。
通称A.R.S――これは、救助と言う名とは程遠い、
D-シリーズUに内臓、装備されている破壊兵器のロックを
解除する為のプログラムだった・・・。

そして、悲劇は起こった・・・。

22XX年、D−シリーズUのプロトタイプに搭載されていたA.R.Sが
誤作動したのだ。研究所で拘束されていたプロトタイプは、A.R.Sの発動と共に
自身に装着されていた拘束着を脱ぎ去り、研究所を
核バズーカ・『デストロイ』で爆破した。
その爆風で研究所周辺の建物は全壊し――。
プロトタイプだけが残った・・・。

 
第一話 Another−D


20世紀、東京。

「ド〜ラ〜え〜も〜ん!」
「何だい、のび太君。またいじめられたのかい?」
「違うよぉ〜。先生に社会の宿題を出されたんだよ〜!!」
「いい事じゃないか。甘えすぎなんだよ、君は。何とか一人で頑張って
みるんだね。」
「分かったよ・・・ちぇっ!」
「あ、あ、のび太君どこ行くんだい!」

十分後、帰宅したのび太の手には甘井屋のドラ焼きの袋が握られていた。

「・・・ゴクリ。」
「ドラえもん、このドラ焼き欲しい〜ぃ?」
「・・・ゴクリ、ゴクリ。」
「あげてもいいけど社会の宿題を・・・。」
「・・・えっ!?何?社会?いいよ。」
「やったあ!はい、ドラ焼き。」
「それで、モグモグ、宿題って何やるの?ムシャムシャ。」
「昔の東京について調べるんだ。でも調べるのって面倒くさいから、
タイムマシンで直接昔の東京を見たほうが早いと思って・・・。」
「本当に君って奴は・・・。モグモグ、ぺロリ。よし、タイムマシンに
乗れ。」
「は〜い!!」

ピンポーン!玄関のベルが鳴った。

「おっす!のび太、ドラえもん!」
「ジャイアン!」
「エヘへ・・・よう、のび太にドラえもん。」
「スネ夫まで!」
「どうしたんだい、君達。」
「いやさ、実は俺達、宿題を手伝ってもらおうと思って・・・。」
「仕方ないなあ・・・君達も調べるの面倒なんだろ?」
「へへ・・・分かってるなら話は早い・・・。」
「じゃあタイムマシンに乗ろうか。」

四次元空間の中、ドラえもん達は昔の東京について話していた。

「昔の東京も久しぶりだね、ドラえもん。」
「うん、結構懐かしくなるもんだね。」
「ん?何だあれ!?」
「スネ夫君、どうした?」
「あ、あそこ・・・!ド、ドラえもんが・・・!」
「ドラえもん?バカ、ドラえもんはここにいるじゃないか。」
「違う、あそこだよ、あそこ!」

スネ夫が指差す先に、確かにドラえもんはいた。ボディーカラーが白と言う事と、耳が付いている以外はドラえもんと全く同じだった。

「うわあ!何で四次元空間を単体で飛行できるんだ!?」
「ど、どう言う事だよ!?ドラえもん!」
「いいかい、このタイムマシンもそうだけど、通常は時間突破能力を持つ
ユニットに搭乗、もしくは接続しなければ四次元の引力に引かれて、どこかの時代に行ってしまう筈なんだ!(見たところD−シリーズみたいだけど・・・Tじゃないな・・・。時間突破能力はD-シリーズTには搭載されていない。僕の知らないシリーズがあるとでも言うのか?)」

ドラえもんが説明している間にもう一人のドラえもんは空気砲の様な物を
取り出していた。空気砲に比べると全体的にスッキリしているが、塗られている血の様な赤の所為で不気味さを醸し出している。

「うわあー!ドラえも〜〜ん!!」
「(あ、あれは!『エア・キャノン・コア』!あの秘密道具は危険すぎて全て回収された筈なのに!)」
「・・・ロック解除、目標固定、照準拡大・・・。」

もう一人のドラえもんが復唱すると同時に空気砲の様な物が光り、元々歪んでいた空間がさらに歪んでいった。

「エネルギー充填・・・発射!!!」

ズギャアアアアアアアン!!!!!!!

「かあちゃ〜ん!!」
「ママ〜!!!」
「ドラえも〜〜〜〜ん!!!」
「何故攻撃してくるのかは分からないが・・・仕方ないな・・・
『リフレクション・クローク』!!跳ね返してやるっ!」

カキィィィィン!!!!!

「って、ただのヒラリマントじゃないかああああ!!!」

のび太が叫んだ。しかし、それでも跳ね返った光弾はもう一人のドラえもんに
対しては十分効果があった。

「任務・・・失敗・・・。」

もう一人のドラえもんは爆発し、刹那、激しい轟音が辺りに響き渡る。

「う、うわあああああああ!!!!」

爆発の反動でタイムマシンからドラえもん達は落ち、四次元空間に飲み込まれていった。

 


ザザーン・・・

波が音を立てながら砕けていく。ここは何処の海岸だろうか?
砂浜に三人の少年と青い狸の様な物が仰向けになって倒れていた。
のび太、スネ夫、ジャイアンとドラえもんである。

「う・・・うう・・・ここは・・・?」
「ま、全く訳分からねえぜ・・・白いドラえもん、そしてあの爆発・・・頭が混乱しそうだ・・・。・・・うっ!!」

ジャイアンが腕を抱えて地に膝を付けた。彼の左腕は折れていた。

「ぐっ・・・ぐあぁぁあああぁ!!!」
「ジャ、ジャイアン!ドラえもん、何か道具は持ってないの!?」
「だ、駄目だ・・・四次元ポケットが機能しない!」
「と、取り敢えず応急処置をしないと!」
「応急処置って言ってもどうやって!?」

「お〜い、君達ー!そこは危ないぞ〜!!」

突然後ろから声がした。その声は酷くハスキーがかかっていて、男のものだとすぐに分かった。

「ん?その子は怪我をしているのか?」

ドラえもん達はその声の主の顔を見た瞬間、驚愕した。

「こ、小池さん!!?」


第二話 意志の交差


そう、彼の顔は20世紀の小池さんと瓜二つだった。髪型から身長まで、何一つ変わらない。

「な、何故君たちが私の名前を知っているんだ?まあいい。彼の怪我を治すのが先だな。」

横目でジャイアンをチラリと見ると、ズボンのポケットの中に手を突っ込んだ。四次元ポケットの類らしく、お医者さんカバンに似た、大きいカバンがズルズルと出てきた。

「う、うう・・・い、痛・・・」
「もう大丈夫だ。安心しなさい。」

カバンの中からカプセルの様なものを取り出すと、それをジャイアンに飲ませた。すると、みるみる内にジャイアンの腕の変色した部分が、血色溢れる色へと変わっていった。

「・・・い、痛くねえ!ありがとよ、小池さん!」
「当然の事をしたまでだよ。ところで君達・・・その服装から見るに20世紀からのタイムトラベラーかな?そして君は・・・。『D』か?」

ドラえもんを見た途端、小池さんの目が鋭くなる。

「お察しの通り、僕はD−シリーズです。先程は彼を助けて下さり、ありがとうござ・・・」

ドシュン!!!ドラえもんの頬を、小池さんのポケットから出たと思われる槍が擦れた。

「・・・っ!!な、何を!」
「何を・・・だと?Dめ・・・町をこれ以上破壊させはしない!!」
「ま、待ってよ、町を破壊するだとか、話が飲み込めないんだけど・・・。」

スネ夫がぼやく。しかし、小池さんはスネ夫の言葉を聞いている様子はない。

「魔槍・『イグニンブル』!!対D用の最終兵器だ・・・。素手の相手にこれは使いたくは無いが、D・・・!貴様等なら別だ!!」
「小池さん、どうしちまったってんだよ!?」
「やれやれ・・・何か勘違いされてるみたいだね・・・仕方ないけど、こっちも反撃しざるを得ないね。A.R.S.発動!!!」

直後、ドラえもんの手には、剣が握られていた。

「戦神剣(いくさがみのつるぎ)・『神影』―――。」
「お前はD−シリーズUなのか?」
「いいや・・・僕はTだ。Uなんてのは知らない。(四次元空間で会ったあのD・・・あれがD−シリーズUなのか?)」
「もう一つ聞こう。何故Tのお前がそのシステムを発動できるのだ?」
「さあね。昔は僕の主人が危険な時にしか使えない、偶然の能力だったけど、
今では自由な時に、自由な場所でこのシステムが使える様になったんだよ。え〜っと、一応言っとくけど、僕は貴方が守ろうとしてる町の名前すら知らないし、場所だって知らないんだけど・・・。」
「問答無用!只のTならば見逃そうと思ったが、A.R.S.が使える以上、お前を生かしてはおけん!覚悟しろ!」
「ここで死ぬわけにはいかない!少なくとものび太達を現代へ帰すまでは!」

意志は、交差していく―――。
 


僕は今錯乱している・・・A.R.S.?小池さん?Dシリーズ?
それ以上に驚いたことがある。
・・・テストが0点だった時もこれほど驚きはしなかった。


何でドラえもんが剣を持てるんだ?


第三話 目標

「てりゃあああああああああ!!!!!」

ガキィイィン!!!

ドラえもんの神影と、小池さんのイグニンブルが激しくぶつかり合う。

「百連槍!!どりゃあああああああ!!!」

キィィィィン!

「うわっ!」

小池さんの技・百連槍に堪らず、ドラえもんがよろける。

「そこだっ!!」
「ぐあっ!」

直後、ドラえもんの腹に一蹴。のび太達の近くまで吹っ飛んだ。

「ド、ドラえもん!!くっそ〜・・・俺も助太刀するぜ!」
「素手なんかじゃあ何も出来ないよ!黙って見てるしかない・・・」

のび太が苦渋に満ちた表情で言う。

「はああああああ・・・・・!!!」

小池さんのイグニンブルが徐々にその形を変えていく。
魔槍と呼ぶに相応しい、不気味な姿へと。

「それが・・・イグニンブルの最終形態か・・・!」
「その通りだ。この状態で使う百連槍の威力は計りしれん・・・。」
「ああ、覚悟して受けるよ。」

「この勝負、ドラえもんが勝ったな。」

スネ夫が唐突に言った。

「どう言う事だ、スネ夫。」
「そうだよ、ドラえもんの方が不利じゃないの?」
「僕にはどうもドラえもんが手加減して戦っている様に見えるんだ。現にドラえもんは剣をいつも振り切っていない。」
「た、確かに・・・。」

まさしくその通りだった。A.R.S.を発動しているにも関わらず、ドラえもんは小池さんの槍を軽く受け流しているだけだったのだ。

「終わりだ・・・D!!!魔炎百連槍!!!」

小池さんは5メートルほどジャンプしたかと思うと、頭の上でイグニンブルを何回も回し、そして目にも止まらぬ速さで突いてきた。しかしドラえもんは槍の軌道を正確に読み、槍を受け流した。そして・・・

「こんどはこっちの番だ・・・。どりゃあああああああ!!!」

ズバッ!!

「ぐああああああああ!!」

ドサッ・・・

「やったぜ!ドラえもんが勝った!」
三人は手を叩きあいながら喜んだ。

「大丈夫ですか?」
「くっ・・・貴様・・・本当に町は破壊しないだろうな・・・」
「くどいですね、貴方も。僕はこの世界の事を全く知らないんです。教えて欲しいんです、この世界の事を。現代に帰るために。」

小池さんは数秒考え、そして言った。

「どうやら本当の様だな・・・そこにいる三人のためか・・・。」
「ええ。僕たちは時間漂流をしてしまったんです。この近くにタイムマシンはありませんか?」
「タイムマシンか・・・残念ながらDに破壊されたよ。」
「そ、そんなあ・・・」

情けない声でスネ夫が嘆く。

「しかし、だ。方法は無くは無い。あれを見たまえ。」

そう言うと小池さんは海の方向に向き、その水平線に僅かに視認出来る物体を指した。

「あれは廃棄されたタイムマシンなんだ。この間、望遠鏡で見てようやく分かったよ。壊れた状態だけど、直せば使えるだろう。」
「しかし、どうやって?」

途端に小池さんは黙り込んでしまった。

「問題はそこなんだ。君も知ってると思うが、四次元ポケットが機能しないんだ。Dによって特殊な電磁波が張られてね。」
「で、でもさっき俺の腕を治してくれたじゃんか!あの道具はお医者さんカバンだろ!?」

確かにそうだ。小池さんが出したカバンは紛れも無くお医者さんカバンだった筈だ。

「その通りだ。しかし、この道具しか使えないんだ・・・。他の道具にはまだロックがかかっているからね。」
「どう言う事ですか?」
「電磁波を解析し、一部の道具のロックを外すプログラムを作成する事に成功したんだ。一部、といってもたったの三個だが・・・。だが、時間がかかりすぎる。三個のロックを外すのに4年かかった。」
「4年・・・。」
「一番手っ取り早い方法がある。・・・この電磁波を張ったDを消す事だ。」

そこまで小池さんが言い終わり、そしてふと目線をのび太、スネ夫、ジャイアンの方へ向ける。

「君たちにも協力してもらいたい。」
「だけど対抗する道具が・・・」
「道具ならばある。これだ。」

ポケットから中世時代の斧の様な物と、色々とオプションが付いたショックガンを、これまたズルズルと取り出した。

「ロックを解除した道具の残りだ・・・好きな物を選びたまえ。それと私が使っていた槍も・・・」
「じゃあ俺はこの斧を!」
「僕はこのショックガンがいいなあ。」
「ほ・・・本当に戦うの!?(マ、ママー!!)」
「うるさい!つべこべ言うなスネ夫!」
「それでは村へ案内しよう。君達がその武器を使いこなせるまで私と彼が監督する。えーっとドラえもん君だったね?よろしく頼む。」
「ええ、こちらこそ宜しくお願いします。」

かくして彼等の訓練は始まったのだった。

 

戻る