幻想と美の赤き戦士アサルト
のび太は走り、学校の前に着いた。
「学校に何が…」
ジャイアンから理由を聞かず、出てきてしまったので何が『ある』のか分からない。
のび太は、恐怖心で足が止まってしまったが、ジャイアンの願い、そしてわずかながらの、好奇心に押され、校門から学校に足を踏み入れる。
ザッ…ザッ…
2歩ぐらい歩いた時だろうか、四方八方から物音がする。
ガザッ・・・ガザガザ
猫か、何かの生き物かと思い、のび太は学校に向かって行った。

二時間が経ち学校中を探してみたが、何も無い。先生も生徒も居ない。
「休みだからな。」
そう言って、騙された様な気持ちになりながら、学校を出る。
しかし、前に『何か』が在る。
「ジャイアン!」
其処には精気の無い目で立っている、ジャイアンが居た。
手には短剣が握られている。
頭からは、血が滴れ落ち、服は血塗れだ。
「殺し合え。麗しき友情を捨て、美しき殺戮を繰り返すのだ。」
ジャイアンの後ろから、赤色の猫型ロボットが出てきた。
赤色の猫型ロボットには、一つの角が頭から出ている。角は途中でグッと曲がっていた。緑褐色の瞳で此方を見ている。
「わが名は、アサルト。美しき赤の戦士。我が角笛、『ギャラルホルン』で奏で出す麗しき音には、幻想を映し出す力が有る。貴方が見た御友人は、幻影。此処にいるのが、真の御友人です。」
静かな口調に反し、のび太は怒りを露にして語り始める。
「なぜ血が流れている。なぜだ!!」
「そんな事簡単さ。抵抗したのだよ。だからこの男に、美しき制裁を与えたのだ。」
勝ち誇った様に言い放つ。
「ジャイアンと殺しあう事は出来ない。制裁をお前にも、与えてやる!」
のび太は走りだし、ジャイアンの短剣を取り上げ、アサルトの目の前に持ってくる。
アサルトは動揺せずに、角笛を構える。
「美しき音の先に見るもの、それは幻想の美・・・『焔のクレッシェンド!』」
ボォオ―――――
辺りは炎に包まれる。
「どうせ偽物の焔だろ。怖くなんか無いぞ。」
「ならば耐えてみよ、尚も燃えゆく焔を・・・」
ボォオ――――― ボォオ―――――
「くっ、熱くない…熱く…な…い」
ドサッ
のび太は、熱さに負けてその場に倒れこむ。
「美しくないな。人間とはこんな物か、失望したよ。次に会うときは、『美』を見せてくれよ。I am not beautiful。」
「くっ………」
辺りの炎は消え、青空の下で静けさだけが周りを包み込む。
どれ程経ったか、のび太がゆっくり起き上がる。
「こ、此処は一体・・・」
のび太は、樹の前に座っていた。辺りを見回してみると、石の階段が在り、横には雑木林が存在し、人一人が通れそうな幅の雑木林が。
どうやら上に進めるらしい。
進むか、進まないか。のび太は迷わず進んでいった。何かに導かれる様にして…
 


四次元の森@

コツコツコツ
快晴、雲ひとつ無い空。木漏れ日の中、石段を一歩、一歩登っていると、何者かが、雑木林を掻き分けてくる音がする。
ザァァザァァァザァァァ!
「!!」
のび太は恐怖に襲われた。なぜなら未知の場所で未知の生物に遭遇することになるのかもしれないのだから。
ザザッ!
木の陰で見えにくいが、猫型ロボットが現れた!
「ド、ドラえもん!」
のび太はそのロボットがドラえもんに見えた。色さえ知れないが、耳が無く、その容姿はドラえもんそっくりに見えたのか。
「待て、ファントム!」
その声が聞こえると、猫型ロボットは砂煙のように、「サァー」と音を立て、何処かに消えた。
「ちぃ、逃がしたか。」
そう悔いながら、次は灰色の作業服。足にゲートルを巻き、あまり目立たない装備の若者が出て来た。樹に寄り掛かりながら胸のポケットから無線機を取り出し、スイッチを入れる。
「こちら、KsTP(タイムパトロール機動小隊)隊長檜山。ファントムを取り逃がした。時間を置いて、再び追跡する」
カチッ
無線機のスイッチを切る。
「少年、怪我は無いか?」
檜山という男が話しかけてきた。
「ええ、大丈夫です。檜山さんは?」
「俺は大丈夫じゃけん。ところで少年、名は?」
「のび太です。」
名前を聞いただけで、次の話題へ移る。
「のび太、四次元の森にいるんや。TP(タイムパトロール)関係者以外、立ち入り禁止なはずやで」
「それが、何故か気が付いたら此処に…」
緑生い茂る森の中。二人は向き合って石の上に座っている。
どうやら、のび太は、今までの事を話しているらしい。
「そういう事かぁ、アサルト・・・『漆黒の翼』のメンバーや。にしても、凄いな。あの冷酷なアサルトを相手に、怪我一つせずに、生きているなんて。」
と、檜山が訊くと
「アサルトは、僕に傷こそ付けられませんでしたが、奴がジャイアンに傷を、制裁と言って、傷を付けたことが許せない・・・」
「アサルトが憎いか?憎いなら戦えばいい。勝てばいい。俺がTPでこうして、戦ってるのも、醜い過去があって…」
ゴ・ゴゴ・ゴゴゴ…ドッゴーーン!!
先程の天気とは裏腹に、雨雲から黄色い閃光が走る。近くで雷が鳴った。その轟音が、森全体に響く。
「雷?のび太!ここに居るのは危険だ。雷で四次元空間が歪んで、森自体が、何処かに素っ飛ばされるぞ!」

立ちこめた灰色の雨雲は、二人の行く先を塞ぐ様に空に広がっている。
 

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