ドラえもん のび太と緑樹の惑星


二十二世紀、昼下がりの東京シティの上空で、激しい追跡劇が繰り広げられていた。
タイムパトロールから追われているのは、国家公式研究機関の所長であった。
所長は国家そのものにクーデターを起こし、
自らの研究物と発明品を持ち出して銀河外逃亡を図っていた。
国家は、何故彼がそのような行為に走ったのか見当も付かなかった。
タイムパトロールの火山燃焼(ひやま もえやき)警部は、
追跡機に備え付けられている無線機から各追跡機へ連絡を取った。
「緑川葉助(みどりかわ ようすけ)博士のマシンを取り囲むんだ!
地上にいる市民に影響の無いように慎重かつ能率よく頼む!」
タイムパトロールは独自の訓練と技術の成果で、緑川所長のマシンを速やかに取り囲んだ。
だが、緑川のマシンには時空間移動装置が備わっており、あっさりと逃げられてしまった。」
「くそっ!いいか!絶対に博士を捕らえて真実を聞き出すまでは諦めるな!
あの緑川博士が自分からこんなことするとは思えない!」
他の隊員も同じ気持ちだった。
それほど緑川という男は信頼されていたのである。
「あなたを信用しています。博士…。」
タイムパトロールの追跡機も一斉に時空間移動を開始した。
火山は、決意の眼差しで自らの握るコントロールパネルの時空間移動ボタンを押した。
 長引いた梅雨が明け、久々の快晴が訪れた現代の関東地方。
のび太が住む東京都練馬区の上空には、鮮やかな虹がかかっていた。
のび太はやっと外出できるようになったのを喜び、
ドラえもんを連れ出して裏山に散歩に出かけた。
学校の裏山の山道は、昨日まで雨が降り続いていたので酷くぬかるんでいた。
ドラえもんが未来の防水シューズを取り出し、のび太に履くように勧めた。
だがのび太は、ぬかるんだ地面を滑りながら歩くのも楽しいと言い、
シューズを履こうとしなかった。
やがて二人は、ぬかるんだ道を苦労しての登り、山頂に到達した。
雨が上がったばかりの澄んだ空気が、
山頂から見える絶景をより美しいものにしていた。
遠方には虹が鮮明にかかっており、二人はそれを見て感動した。
側の池に目をやると、梅雨の時期に大繁殖した無数の蛙が、
池全体を覆うようにして泳ぎ回っていた。
「うわぁ凄いよ、ドラえもん。蛙がいっぱいいるね。」
のび太は両腕で池を囲い込むしぐさをして言った。
「梅雨は殆どの生き物が池に近づかないだろ。
だから邪魔されずにここまで増えたんだ。
それにしてもちょっと多すぎるような気がするなぁ。」
ドラえもんは困惑気味の表情で言った。
「どうして?いいことじゃない。」
のび太の純粋で素朴な疑問に対し、ドラえもんは深刻な表情をしてこう説明した。
「いや、大変なことになることもあるんだよ。
一見良く見えるがこれは生態系の乱れかもしれないんだ。
『食物連鎖』って言葉を知っているかい?
植物が草や木の実を作り出すだろ?
それを草食動物が食べる。次に草食動物をライオンなんかの肉食動物が食べる。
食べた物を消化しきった動物達が糞をする。
糞は植物の栄養になってまた木の実や派を作り出す。
その繰り返しを『食物連鎖』というんだ。
ところが、人間達がその何十億年も守られてきた自然のルールを壊し始めた。
ある国でコブラの発生に困った人たちが、
コブラの天敵である大量のマングースを放したんだ。
そのおかげで地元一体のコブラを完全に駆除することに成功した。」
「よかったじゃない。武器や薬品も使わないしさ。」
「問題はここからなんだ。
今度は今までコブラを天敵としていたネズミが大増殖を始めた。
農作物や家屋がネズミの被害にあって大変なことになってね。
ネズミの餌となる小さな生き物も大量に減ってしまった。
そうそう、マングースなんだけど餌となる蛇が居なくなっただろ?
だから今度は彼らが絶滅の道をたどることになってしまったんだ。
死んだマングースはまた鷲や鷹などの…」
「も…もういいよ…。それで結局その土地はどうなったの?」
「荒廃して人の住める土地じゃなくなったんだ。
あれほど繁殖していたねずみも鳥たちも最終的に全滅したよ。
怖いだろう?ちょっと生態系を乱しただけでこんなになってしまうんだから。」
「ね…練馬は……この街はどうなのかな…?」
ドラえもんの話を聞いたのび太は、脅えながら恐る恐るドラえもんに質問した。
「分からないよ。もう既に乱れているかもしれない。
現にネズミやらゴキブリやらがウジャウジャと…ひぃぃぃ…」
ドラえもんはその光景を想像してしまい、激しく身震いした。
「なに気持ち悪い悲鳴あげているんだよ、ノラえもん!」
不意に背後からスネ夫のあざ笑い声がしたので振り返ると、
ジャイアンと共に並んで立っていた。
二人は、それぞれ飼っているペットを、散歩のためか一緒に連れて来ていた。
「久々の快晴だから散歩に来たんだ。長い雨でまともに散歩できなかったからよぉ。
俺のムクやスネ夫の飼っている犬と猫も、みんな運動不足でさぁ…ククク……」
ジャイアンが何処と無く変ににやけながら言った。
「ペット達が運動不足解消の為に誰かと戦いたいんだってさ。
でも飼い主が戦闘相手になるのもなぁ…クク…ねぇ、ジャイアン?」
「そうだよなぁ…フフッ!だからお前達がその相手になれぇっ!」
危険を察したドラえもんとのび太はすぐに逃げ出そうとしたが、
ぬかるんだ地面なので滑って転んでしまった。隙を見つけたジャイアンは、
「いけぇ!ムクゥゥゥゥゥゥ!ついでに俺様もぉぉぉぉぉぉっ!」
と、血に飢えた魔獣の顔でムクに指示をし、自らも勢いに乗って二人に襲い掛かった。
転んで泥まみれになった二人は、『泣きっ面に蜂』の如く彼らの餌食となった。
数分後、気の済んだジャイアンは、
「いやぁ俺も運動不足だったからすっきりしたぜ。ありがとよ!」
と、爽やかに笑って倒れている二人に言った。
「悔しかったらのび太もペットを飼え!あはははは!」
ジャイアンとスネ夫は、虫の息の二人を大声であざ笑いながら山を下っていった。
悔しがるのび太はドラえもんにペットを出すように強請ったが、ドラえもんは当然断った。
のび太の母『珠子』がペットの飼育を許すはずが無かったからだ。
落ち込み、泥まみれの体を叩きながら山を反対に降りていた二人は、
途中、大規模な工事現場に遭遇した。
工事によって木々と土砂が一気に削られていた。
梅雨明けで、ぬかるんで掘りやすくなったこの時をチャンスとしていたようだった。
この光景を見ていたのび太は、裏山が無くなるのではと不安に思った。
のび太は、工事現場から目と鼻の先に茂る、
自分の脚の長さほどの小さな若木を見つめた。
その木もいずれ抜かれてしまうと思うと、いたたまれない気持ちになった。
そして助けたいと願う気持ちがのび太の心に現れた。
「あの樹…刈り取られちゃうんだね……。僕達の手で助けようよ、ドラえもん!」
のび太は目に涙を浮かべ、訴えるようにドラえもんに言った。
「うん!都合のいい道具があるんだ!」
ドラえもんはのび太の望みに賛成すると、
ポケットを探り小瓶に入った液体を取り出した。
「何だいそれ?」
「これは『植物自動化液』といって植物を動物のようにできる道具なんだ。
これをかければ、どんな植物でも手と足が生えて顔もできる。
しかも餌は日光と水だけで、地面に根っこを下ろさなくても生きていける。
糞もしないからペットとして手軽に飼えるんだ。ママも絶対に許してくれるよ!」
「わぁい!ありがとうドラえもん!」
のび太は植物を救えることと、ペットが手に入ることとで、飛び上がって喜んだ。
ドラえもんはその小さな若木に、自動化液を一滴垂らした。
 翌日、のび太は放課後のチャイムが鳴り終わらないうちに学校を飛び出た。
後からしずかとスネ夫とジャイアンものび太を追いかけた。
「どうしたんだよのび太、ゲームの発売日でもないのに。」
スネ夫が追いついて珍しそうに聞いた。
「もしかしてさっき話していた『キー坊』のことでしょ、のび太さん。」
「なんだよそれ、美味いのか?」
しずかとジャイアンも隣に並んで口々に言った。
のび太は誇らしげにジャイアンに言った。
「僕のペットさ!君達にも見せてあげるからうちに来なよ。」
「の…のび太の事だからきっとロクでもないペットにきまってるよ。ハエとか!」
スネ夫が冷や汗を出しながらのび太の自慢を打ち消そうとする。
それに対してのび太は断固反対して怒鳴った。
「ゴキブリじゃない!ちゃんとした『樹』のペットだ!」
「樹?あはははは!やっぱりなぁ、のび太らしいや!心配して損したよ、全く。」
「見ればどれだけ凄いか分かるさ。」
のび太は三人と共に自宅に帰った。
階段を駆け上がり部屋に入ると、『歩く樹』がのび太に飛びついてきた。
「きゅいきゅい。」
のび太は歩く樹を抱きかかえながら三人に振り返って言った。
「こいつがペットの『キー坊』さ。樹から生まれたんだ。
しずかちゃん、抱いてみるかい。」
「ええ。ありがとう。…かわいいわねぇ。」
キー坊をしずかに渡し、のび太はスネ夫とジャイアンに経緯を説明した。
「あれから僕もペットを飼おうと思ってドラえもんに造ってもらったんだ。
学校の裏山に生えていた若木にドラえもんの道具を使ってね。」
「その若木がキー坊なの!?ヒョェェェェ!」
スネ夫が口をワニのように開けて驚いた。
「なかなか愛嬌があるやつじゃないか。
でもあの動物嫌いのママがよく許してくれたな。」
横でジャイアンがキー坊を間近で見て言った。
「糞もしないし餌は水と日光だけだからね。空気も綺麗になってママも大喜びでさ。」
そこにタケコプターで出かけていたドラえもんが、
水の入ったバケツをぶら下げながら部屋に入ってきた。
キー坊の為に湧き水を汲んできていたのだ。
「水道水じゃ可愛そうだろう?だから湧き水を汲んできた。」
「ありがとう、ドラえもん。これで分かっただろう、君達。
さて、僕はこれからキー坊と勉強するから、君達も帰って宿題ぐらいしなさい。」
「勉強?勉強嫌いで宿題もやらないのび太が?」
ジャイアンが目を丸くして驚いた。
「私達は邪魔になるから早く帰りましょう。さよなら。」
しずかは嬉しそうに笑って、一足早く帰っていった。
ジャイアンとスネ夫も追うようにして部屋を出て行った。
スネ夫は嫉妬の表情を浮かべ、ぶつぶつと何かを言っていた。
のび太は机に向かい、宿題を始めた。その横でキー坊も本を開いた。
「感心だなぁ。それもこれもキー坊のおかげだよ。」
 その頃、宇宙では大型の戦艦が小惑星群を通過していた。
戦艦内部では樹木のような容姿をした異星人が、騒々しく蠢いていた。
その中の司令官らしき人物が低い声で言った。
「『樹人王』がおっしゃった通りだ。
あの星の連中は我々植物のことを何も考えておらん。
我々の仲間が危ない。あの『地球』という惑星から一刻も早く救出せねば。
一同に告ぐ!只今より地球植物格納計画を実行する!」
部下の異星人達は慌ただしく動き始めた。
 翌日、ドラえもんとのび太はキー坊を連れ、
キー坊の故郷である裏山へ散歩に行った。
先の土木工事が進行し、山の北方は大部分が崩されかけていた。
キー坊が無邪気に遊んでいる中、のび太とドラえもんは不安げに工事の様を見物していた。
のび太は悲しげな目をしながら、崩されていく山を見ていた。
ドラえもんはそんなのび太を横目に、なんとかならないものかと考え込んだ。
しばらくすると、そこに一人の年老いた男が現れた。
彼は二人の横に立ち、同じように工事の様子を見て、こう言った。
「この山もとうとう崩されてしまうな。この街で唯一の山だったのに残念だ。」
それを聞いたのび太は驚いて老人に聞いた。
「や、山が跡形も無くなってしまうんですか!」
「ああ。初めはこの山も大きく、あちこちにあった多くの小山と繋がっておった。
絶滅されたとされる狼も、度々見かけたりして驚きだったよ。
しかし終戦を境に山はどんどん切り開かれ、とうとうこれだけになってしまった。
私達はなんとか国に抗議して山を守り続けてきたが…
それも無視されてしまうようになってしまってな…真に悲しいよ。
どうにかして工事を止められないものだろうか。」
老人は俯き、ため息をついた。
話を聞いたのび太とドラえもんは、短い沈黙の後、
先程まで後ろの茂みで遊んでいたキー坊が居なくなっていることに気づいた。
心配になったのび太が森の中へ駆け出し、キー坊の名を呼んだ。
ドラえもんもタケコプターで上空からキー坊を探した。
だが、夕方になってもキー坊は見つからなかった。
 二人は一度家へ戻り、検索カメラとモニターでキー坊を捜すことにした。
画面に映る裏山の情景を見ていると、
一瞬緑色に光る円盤のようなものが飛んでいるのが見えた。
慌てて拡大して見てみると、それは明らかにUFOであることがわかった。
驚いたのび太が、後ろに両手をついて言った。
「まさかキー坊は宇宙人にさらわれたんじゃ…」
それをドラえもんがモニターを見つめたまま断固否定した。
「そんなわけないよ。第一あのUFOだって玩具かもしれないぞ?
きっとスネ夫がインチキ写真を取ろうとして飛ばしてるんだよ。」
そうは言ったが、内心ドラえもんもこの謎の円盤を疑っていた。
ドラえもんは今まで見たイミテーションの円盤や、
未来で見た地球製の円盤と見比べたが、構造が全く違うことに気づいていた。
未来の新型機の試運転だろうか?
幻かバーチャルかもしれない。それとも本当に…。
ドラえもんは自らの目でそれを確認するべく、
窓からタケコプターで裏山へと向かった。
のび太もすぐに後を追いかけた。
部屋に残されたモニターには、緑色に光る円盤と、
そこから降りてくる植物の姿をした集団を映し出していた。
 キー坊はリーダー格の異星人と交渉していた。
お互い地球人には聞き取れない、独自の言語で対話に応じた。
日本で育ったはずのキー坊は、どういうわけか理解していた。
「何を言っている!地球人は我々の仲間を滅ぼそうとしているのだぞ!?」
リーダー格の異星人が、キー坊の意見に深い疑念を抱いて強く反論した。
「地球上の植物を、全て格納し保護するのは当然であろう!
何故お前はそれに反対するのだ?」
なんと、彼らは地球上の全ての植物を自らの宇宙船に確保しようとしていたのだ。
ドラえもんとのび太は、『翻訳こんにゃく』を食べて彼らの会話を聞いていた。
一部始終を聞いたのび太は、いたたまれなくなって隠れていた茂みを飛び出した。
樹人達は驚いて振り向いた。
「そんなことはやめろ!異星人なんかに地球を弄られてたまるかぁ!」
のび太は高騰し、樹人達を怒鳴りつけた。
「君達がまいた種だろう?自業自得だと思わんか。」
「そんな!確かに彼らは我々の多くを破滅に導きました!
しかし!全ての地球人がそのような欲に満ちて残酷な人間な訳ではないのです!
百年ほど時間を下さい。その頃には植物も多く繁栄しているはずです。
もし百年経っても今と変わらなかったら…その時は全植物の格納を承諾します!」
反論するキー坊。
「そういうわけにはいかんな。我々の王の命令は絶対だ。
地球上の生物がどうなろうと知ったことではない!全ては地球人の責任なのだ!」
そう言うと樹人達は円盤に乗り込み、植物を凝縮格納させる装置を発動させた。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉっ!」
二人はキー坊と共に円盤に駆け寄ったが、
バリアのようなものが張り巡らされており、強く張り飛ばされてしまった。
「させるか!」
夕空に聞き覚えのある少年の声が響き渡り、樹人の宇宙船を青い光が包み込んだ。
乗っていた樹人は全員気絶し、格納されかけた植物は元の場所へ戻っていった。
ドラえもんとのび太はその少年の声に聞き覚えがあった。
騒動が治まると、二人はキー坊と共に声の主を探した。
奥の茂みに、球体のタイムマシンが停泊していたのが見え、
先程の声と光を放った主が判った。
タイムマシンのハッチが開き、中からのび太に瓜二つの少年が降りてきた。
のび太の子孫、『セワシ』である。
「やあ、おじいちゃん、ドラえもん。こんばんは!」
セワシは大手を振り、陽気に笑いながら二人に挨拶をした。
「セワシ君!来てくれたのか!ドラミも一緒かい?」
「いいや、僕一人。二十二世紀のインベーダーゲームで各時代を回って戦っていたら、
いきなり本物が出てきたんだもん。いやぁ、驚いたな。一体何が起こったんだい?」
二人はセワシに現状を説明した。
セワシは事の重大さに驚愕し、すぐにタイムマシンの無線機でドラミに連絡をした。
連絡を受けたドラミは事態を把握し、駆けつけると言い残して無線を切った。
ドラえもんは、気絶した樹人らを二十二世紀の檻に収容し、
スモールライトで縮小して四次元ポケットの中にしまった。
その後、深夜にドラミを同行させて再びここに来ることに決め、
キー坊を含む四人は足早に野比家に戻った。
深夜、のび太の両親が寝静まった後、
ドラえもん、のび太、ドラミ、セワシの四人は再び裏山の事件現場に集った。
樹人達から全てを聞いていたキー坊から、詳しい話を聞いた。
「彼らを手中に収める『樹人王』は、
自然をこよなく愛し、樹人を生み出した張本人でした。
そして樹人王の『大いなる力』により、宇宙に進出できる科学力を手に入れました。
宇宙進出の目的は、宇宙に点在する自分達と同じ『植物』の保護でした。
その第一目標となったのが地球だったのです。
地球の劣悪な環境下で生きている植物を一刻も早く救出するため、
このような焦った作戦に乗り出したのだそうです。
このままでは地球は滅んでしまう。なんとしてでも彼らを止めましょう!」
「キー坊の言う通りだ。でも戦いはできるだけ避けよう。」
ドラえもんが深刻な表情で言った。
ドラミも相槌を打ちながらこう言い足した。
「そうね。樹人王と交渉しましょう。
これは地球人だけでなくて、地球植物のプライドに関しても大きな問題だと思うの。
樹人王は、地球植物の命を守ることしか考えてないわ。」
セワシも真剣に頷き、自ら乗ってきたタイムマシンを取り出した。
「これは宇宙も移動できるタイムマシンなんだ。
樹人達の航路を逆探知して彼らの星へ行けるよ!」
「樹人王と話し合って地球の緑を守ろう!」
のび太が微笑み、一同と共に地球に誓った。
四人と一匹を乗せた小型宇宙船は、静かに丘から飛び立った。
 「う…ここは……四次元!?」
樹人戦艦の司令官『ケナップ』は、ドラえもんの四次元ポケットの中で目覚めた。
樹人の母なる惑星『リビジアン』から地球の植物をするために、
惑星内でも優秀な部下達を戦艦『リハーブ』に同乗させて地球に向かったが、
地球人が時空間移動能力を持っていることを予測していなかったため、
彼らの計画は未来文明の圧倒的な力によって失敗に終わった。
ケナップは自身の失態を回想し、後悔と自虐の念に駆られた。
それは脇腹の子穴に忍ばせている発火機で、
自らの体を燃やしてしまいたいくらいのものであった。
地球未来人の圧倒的な未来文明の力を前に無残に敗北し、
自らの所在さえもつかめぬこの四次元空間に封じ込められ、
そしてなにより樹人王の願いを叶えられなかったのだから無理もない。
部下たちも後悔と絶望で、気絶とほぼ変わらない状態で立ちすくんでいた。
ケナップは虹色に蠢く天を見つめ、届かずと知りながら異次元にいる樹人王に報告した。
「我が神なる王、申し訳ありません。計画は失敗です。
あなたに頂いた生涯をあなたのために使うことができず、誠に残念至極です。
できることなら、命に代えても我が同胞達と部下をリハーブで送還しとうございました。
ですがそれすらもできない!彼らは私を殺さず、この広大な無常の地で生かしている!
ただ強い想いだけが沸くだけでございます…。」
彼の両目から無念の涙が溢れ、頬を伝っていた。
すると、それに呼応するかのごとく、
ある一天が眩く光り、そこに黒い大きな影が出現した。
「樹人王…。」
ケナップは目を丸くしてその名を口にした。
「地球の植物を回収できなかったようだな。…まあよい。今助けてやろう。」
突如出現した樹人王は、囚われた樹人たちを哀れな目で見つめながら言った。
現れたスクリーンの向こうで、樹人王は何かの機械のボタンを押した。
数秒後、ケナップ達の空間に円形の子穴が開いた。
小穴から、先程映し出された樹人王が現れ、彼らをリビジアンへと誘導した。
「すまなかったな。もう大丈夫だ。」
樹人王は実に申し訳なさそうな顔をして、ケナップらを労わった。
まあ、樹人達を創造した張本人なのだから当然だろうが。
樹人王らは講堂に移り、彼らに感謝の意を込めた演説をした。
「君達は実によくやってくれた。
計画は失敗だったが、彼らのデータを収集して分析することができた。
これだけでも収穫は大きい。本当にありがとう。あとは私に全て任せてくれ。」
樹人王は頭の中でこれからの策を練っていた。
新たな計画の手始めとして、樹人王は宇宙船ターミナルへと向かった。
ケナップ達も謝罪と不安交じりの表情をしながら後を追う。
地球に残ったのび太という少年の友人らを拘束し、交渉しようと考え、
単独で時空移動機能が搭載された、個人用の宇宙船に乗り込んだ。
樹人たちに見守られる中、樹人王の乗る宇宙船はゆっくりと浮上し始めた。
視界には、リビジアン特有の淡い緑色をした空が広がる。
樹人王は、誓いの眼差しで残された樹人達とリビジアンの大地に君臨する大規模な『古墳』に目をやりながら、起爆装置のスイッチを押すかのように瞬間移動装置のボタンを押した。
 一方、地球を飛び立ったのび太達は、友人達に危機が訪れているのも知らず、
ささやかな宇宙航行を楽しんでいた。
セワシは二十二世紀の逃亡者『緑川葉助』についてドラえもんとのび太に説明していた。
「緑川博士は日本でも代表的な研究者だったんだ。
でもどういうわけか反乱を起こして逃亡してしまったんだ。
逃亡した先は…驚かないでよ……この時代なんだ。」
「えぇっ?怖いなぁ…。」
のび太はぶるっと身を震わせて言った。
「あはは、大丈夫だよ。この時代の宇宙のどこかに逃亡だから。
襲われる確率なんてほとんど無いよ。
ちなみにキー坊、君を生み出した『植物自動化液』を発明したのも緑川博士なんだ。」
「そんな…信じられません。どうしてそのような方が…。」
キー坊は悲しみの表情で俯いてしまった。
「おい!キー坊を悲しませるな!」
のび太が怒ってセワシを怒鳴りつける。
祖父の威厳が感じられたのか、セワシは体を小さくして
「ごめん…おじいちゃん…。」
と呟き誤った。
「うわっ!樹人達がいなくなってる!」
一瞬の静寂の後に、ドラえもんは突如叫んだ。
この僅かな時間内で、樹人が脱走していたことに気がつかなかったのである。
ドラえもんは自分の不注意を酷く後悔した。
「と…とにかくリビジアンに急ぎましょう!」
 瞬間移動装置を発動させた樹人王は、裏山の千年杉の上で船を停泊させた。
ナビゲーションシステムを起動させると、いつの間にインプットしたのか、
この時代の練馬のマップが十九インチの画面に表示された。
源家、骨川家、剛田家の所在アイコンを見つけ、画面に直接指を触れて詳細情報を開いた。
実写モードのアイコンをクリックすると、三人の就寝中の子供がそれぞれ映し出された。
「よし…。」
樹人王は三人の子供に向けて、転送銃を放った。
光線が三人に命中し、樹人王が瞬きを終えると画面から消えていた。
「これで地球の植物は救われる。」
そっと一息ついた後、樹人王は再び瞬間移動装置を起動して『我が星』へと帰還した。
 セワシの船の高速移動装置を起動させ、四人と一匹はリビジアンに到達していた。
大気圏に突入し、ゆっくりと下降していく。
滑らかな緑色の空と濃いビリジアンの海と大地が彼らを出迎えた。
地上に近づくに連れ、こちらを鋭い目で睨む樹人達の顔も見えてきた。
着陸の許可を得ようと、キー坊はルーフを開けて彼らに向かってこう言った。
「我々はあなた方に敵意は抱いておりません。
地球の植物を保護するため、樹人王に交渉に参りました。
どうか樹人王に会わせて下さい。お願いします。」
キー坊の懇願に対し、樹人代表としてケナップが前に出た。
「信用できない。現に我々を攻撃し、四次元空間に監禁したではないか!」
その発言に、周囲の樹人達にも疑念が浮かぶ。
「ママ、ケナップ様の言っていることは本当なの?」
「安易に信用するわけには行かないな。」
「この植物殺しめ!」
「こちらから打ち落としてくれる!」
反感を持った一部の軍所属の樹人が、仲間に攻撃命令を下した。
直後に、四方八方からレーザーがセワシの船目掛けて飛んできた。
「うわぁっ!ドラえもん、ドラミちゃん、何とかできないの?」
「こっちも船のレーザー銃を使って応戦するんだ!」
「銃なんか使ったら、逆に信用してもらえないだろ!」
セワシはそう言ってドラえもんに飛び掛った。先程までの恐怖心は微塵も無く消えていた。
「知らん!」
ドラえもんも反抗する。
「やめて!冷静になって!」
喧嘩を始めたドラえもんとセワシの間にドラミが割り込んだ。
「……」
「……」
船内に一瞬静寂が走り、レーザーと爆撃の音が異様に目立つ。
「ここはのび太さんの綾取りでご機嫌を取りましょう。」
今度は白けた空気が漂った。
「全くドラミちゃんも慌てちゃって。どうかしてるよ、その考え方。」
のび太は両手を方の横で広げて呆れた。
「のび太さんはよく平気でいられるわね!」
「僕も最初は君達以上に脅えていた。でもキー坊を見てよ!」
キー坊はルーフから必死に弁解している。
「キー坊は応戦しようとなんか少しも思わずに一生懸命頼んでるんだ!
いいかい?ここで皆が一緒にならないと船は墜落してしまうよ!
ましてや植物すら助けられない!
本当に地球を救いたいんなら団結しないと駄目なんだ!」
「のび太さんの言う通りです。」
キー坊がサポートに入る。
「仲間というものは多ければ良いというものではないのです。
多くても団結しないと意味がありません。
僕も地球と仲間達を救いたい!
…だから、冷静になって一緒に船を動かしましょう!」
のび太とキー坊の発言に、三人は本心を取り戻した。
「ごめん。君達の言うとおりだ。」
「おじいちゃんやキー坊を見習うよ。」
「皆で船を動かしましょう!」
これを見てのび太とキー坊は喜び、手を取り合った。
「キー坊は大変だけど彼らに説得を続けてくれ。」
「勿論です!絶対に理解してくれると信じています。」
そう言って、キー坊は再びルーフから身を乗り出した。
のび太は再度一同に指示を出す。
「セワシ君とドラミちゃんは左右の窓からレーザーの流れを教えてくれ!」
「分かったわ!」
「任せてよ、おじいちゃん!」
二人はそれぞれ左右の窓の前にスタンバイした。
のび太は最後にドラえもんに指示を出そうとしたが、
指示を出す前にドラえもんが先を読んでこう言った。
「のび太君は船を操縦して僕は…君を全力でサポートしよう!
…操縦は君に任せるよ。僕はサポートだ。」
「いや、船は君が…。」
「僕はさっきののび太君の言葉に心を動かされたよ。
その時に僕本来の役目も思い出したんだ。
だから操縦はのび太君がやるんだ。僕達は信じているから。」
ドラえもんは深い信頼の眼差しでのび太に言った。
他の二人と一匹も、信頼と親しみの笑みを浮かべてのび太を見て頷いた。
「うん…ドラえもん…皆…ありがとう。僕…やるよ!」
のび太は操縦桿を握り、決心した表情で自らの役割についた。
 火山達はこの時代の宇宙を高速で飛んでいた。
この誰もが、緑川を絶対に捕らえて真実を知りたがっていたからだ。
緑川は国家周辺だけでなく、国民からも慕われており、自らも彼らを慕っていた。
どう転んでも反乱を起こすとは思えず、裏で何者かが動いていると推理していた。
火山はそうであって欲しいと願いながらコーヒーカップに口をつけた。
するとその時、船内のセンサーが反応して感知音が響き渡った。
「警部!地球人探知機が地球人を感知した模様です!
この近辺に何名か集団でいるようです!」
「うむ、そうか。やはり博士だけではないようだな。」
火山はコーヒーカップをテーブルに置き、中央司令室へと向かった。
幾つもの大画面が周囲の光景を映し出す司令室は、騒然としていた。
火山が入るやいなや、数人の隊員が彼の元へ駆け寄った。
「警部!この近辺にいるとみられる地球人は…この時代の人間です!」
「な…!」
その言葉に、火山は一瞬耳を疑った。
「この時代の人間がこんな遠い宇宙に進出できるとは思えん…。」
「まさか博士達はこの時代の人間を人質にしているのでは…!」
「可能性は十分にある。一刻も早く救出しなければ次元が分裂してしまう恐れがあるぞ!」
火山は操縦室に向かい、操縦士に感知器の示す方向へ向かえと指示を出した。
 そこは薄暗い牢獄だった。
しずか、スネ夫、ジャイアンは、静かに目を覚ました。
三人とも捕らえられた時のパジャマ姿のままだった。
目を覚ますやいなや、いきなり友人達のパジャマ姿が目に入ったので、
一同は寝ぼけているのかと思った。
だが意識がはっきりとしてくると、過酷な現状だということがすぐに分かった。
最初にパニックを起こしたのはスネ夫だった。
「うわぁぁぁぁ!どうして捕まったんだ!パパやママはどこなの?」
「黙れ!」
ジャイアンがパニック状態のススネ夫に、一発げんこつをお見舞いした。
「ご…ごめん。やっぱり今回ものび太とドラえもんが関わっているのかな?」
「多分な。あいつらバカだからよ。」
「よしなさいよ。のび太さん達が絡んでるとは限らないでしょう?」
しずかがのび太の味方をする。
「でもここはどこなんだろう?牢獄のわりにはなんか空気も美味しい気が…。」
「当然だ。ここは植物の惑星『リビジアン』だからな。」
不意に声の下方向へ振り向く三人。
「植物の惑星なの?」
スネ夫が問いかける方向には、逆光で黒く見える何者かの姿があった。
「お前が俺たちを浚ったんだな!許せねぇ!」
ジャイアンは黒い影に飛び掛かろうとしたが、
その強大な力によって容易く壁に弾き飛ばされてしまった。
「たけしさん!」
しずかが倒れたジャイアンの元へ寄る。
その光景を見ながら、黒い影は淡々と話し始めた。
「そこのツンツン頭君の言うとおりのび太君が絡んでいるのだよ。
彼らは今この星に来ている。
無論、君達が捕らえられていることを知らずに、だ。
我々の計画は地球上の植物全てを格納し、この星で保護することだ。
それを彼らは阻止しようとしているんだ。
なぜなら地球上の植物が無くなったら、君達人間は死んでしまうからね。
しかし彼らも植物達に悪影響を与えてきた。…自業自得だと思わないか?
どうせ植物を保護しなくてもやがて自然は崩壊していくだろう。
そうなる前に、せめて何も悪くない植物達を保護することは正しいことだ。
君達を捕らえたのは地球の植物達と交換するためなのだよ。」
黒い影が一息つくと、話を理解したしずかが懇願した。
「どうか待ってください!時間はいっぱいあります。
人間の中にも植物を愛する人は沢山います。
その人たちがきっと植物を救ってくれます!」
「地球の人間は信用できないな。」
だが、黒い影は、しずかの言葉を聞き流し、冷酷な表情で言う。
「お前誰なんだよ!ぅぅっっく!」
スネ夫が半べそをかきながら、黒い影に指を指して叫んだ。
黒い影は牢獄から出て行く足を止め、一瞬きびすを返してこう言った。
「我が名は『グリーネ』。この星の統率者だ。」
 のび太はレーザーの回避に奮闘していた。
いくらシューティングゲームで高得点を出しているとはいえ、
実践はゲームのように上手くいかないものだった。
これまでに何度かレーザーに当たってしまい、船体の一部が煙を上げていた。
これ以上攻撃しても反撃しないと分かった樹人側は、ようやく着陸の許可を出した。
「よかった…。きっと信じてくれると思っていました。のび太さん、着陸してください。」
キー坊は安堵の表情を浮かべ、のび太に着陸を促した。
着陸して船を下りると、裏山で捕らえたはずの樹人の司令官が出迎えた。
司令官は硬い表情のまま自己紹介をした。
「私は先程のあなた方に捕らえられた戦艦『リハーブ』の司令官を務めているケナップだ。
君達の誠意を認め、樹人王へ合うことを許可しよう。
だが、我々はまだ君達を許したわけではない。」
「わかっています。悪いのは僕達人間ですから。」
ドラえもんは目を伏せて言った。
大講堂へ案内され、四人と一匹は椅子に腰掛けて樹人王を待った。
数分後、樹人王が大行動に参上した。容姿は樹人と同じであった。
樹人王は中央の玉座へ腰をかけ、即座にキー坊に向かって問いかけた。
「君は我々と同じ種族のようだな。
地球人の我々に対する扱いは知っておろうに、何故彼らの味方をするのだ?」
キー坊は動揺せずに、次のように答えた。
「彼らは既に過ちに気づき、反省の意思を示し始めています。
しかし、あまりにも大きいことであるために、
植物の保護に時間がかかっているだけなのです。
どうかご理解の下、地球植物の返還をお願いします。
『一つの時の流れの地球』を犠牲にしようとするあなたは間違っている!」
キー坊は持ち前の考察力で、樹人王の計画を見抜いて最後の台詞に訴えの念を込めた。
二、三秒の沈黙の後、樹人王は立ち上がり、身に着けていたローブを脱いだ。
ローブに包まれていたのは、年頃の美しい少女であった。
少女は全てを語った。
自分の祖父が緑川であり、既に没してしまったこと。
彼が『植物自動化液』の発明者で、
二十二世紀の一部の植物を自動化させ、二十世紀の宇宙に『リビジアン』を築いたこと。
死病を患い、彼の孫である少女に自分の理想と願いを託したこと。
誰かが時空を越えて干渉した時間が分裂してしまうということ。
そして分裂した「この時の流れの地球」を犠牲にしようとしたこと。
『リビジアン』を植物園にし、自身の未来に育てた植物を提供すること。
祖父の願いを叶えるために命を掛けているということ。
キー坊の一言で目覚めた彼女は、全てを語ってタイムパトロールへの出頭を決意した。
「あの古墳に緑川氏が眠っているんですね?」
ドラえもんが彼女に聞いた。
「そうです。これからそこへ向かいましょう。お別れが言いたいのです。」
開放されたしずか、スネ夫、ジャイアント共に、一同は緑川が眠る古墳へ足を運んだ。
少女は供え物のスペースに造花を供えた。
そして、涙を流しながら頭を垂れながら物言わぬ者に謝罪と別れを告げた。
「おじいさん、私達は地球人達が行ってきた過ち以上の過ちを犯していました。
私達は地球を滅亡に導こうとしていたのです。
私達は植物の損失だけを恐れ、それ以外の損失を見ていなかったのです。
しかしおじいさんの想いは死ぬまで一生忘れません。
刑務所に入っても植物の大切さを伝え続けていきます。
あなたがお築きになられたこの世界は樹人に明け渡します。
それでは、さようなら、おじいさん。」
少女は立ち上がり、ドラえもんに地球の植物を凝縮収納したカプセルを手渡した。
そこにスネ夫が唐突にタイミング悪く少女に質問した。
「お姉さんの名前は?樹人王でもグリーネでもないでしょ?」
少女は空を見上げたまま微笑してこう答えた。
「緑川 花美よ。何でそんな事聞くの?」
しずかがその問い返しに同じく笑みをこぼして答えた。
「自分の名前を捨てようとしてまで、植物を守ることは私にはできないわ。」
「やり方が間違ってても花美さんはすげぇよ!」
ジャイアンが付け足して言った。
ドラミは後のことが気になり、花美に聞いた。
「この星や樹人達はどうするの?」
花美は一歩遠くで自分を見守るケナップに向かって言った。
「リビジアンはあなた方に明け渡します。統治のほうはあなたにお任せします。
私が見る限り、キー坊は素晴らしい『人材』だと思いますよ?」
ケナップはキー坊と目を合わせて頷き、誓いの目で花美に言った。
「私にお任せ下さい!
あなたは暫く自分のことだけをお考えになってください。でも…」
「でも?」
「出所したら、時々お立ち寄りになっていただけませんか?」
花美は満面の笑みを浮かべて言った。
「ありがとう。出所したら一番に寄らせていただきますよ。」
上空に、無数の点が見え始めていた。
タイムパトロールが緑色の夕日と共に訪れたのである。
 数週間後、のび太は自宅でそわそわしていた。
あの日樹人大臣となったキー坊と別れ、その後が気になって仕方ないのである。
ドラえもんが慌てて窓から入ってきて、ポケットから五人乗りの宇宙船を出した。
「待たせたね。じゃあしずかちゃん達を呼びにいこうか。」
「ドラミちゃん達は?」
「来るよ。花美さんと火山警部も一緒にね。」
「え?花美さん仮釈放になったの?」
「いや、彼女は操られていたということになって無罪の正式釈放になったよ。
火山さんのお情けでね。」
「よかったね。実は僕もあのままじゃ後味が悪いって思っていたんだ。」
「でも本当によかったよ。キー坊は大臣になったし。」
「キー坊と別れるのは悲しかったけど、
こうして会いに行けるからもう寂しくないよ。
キー坊がいたから僕は前に進めたんだ。」
五人は裏山の頂上に集合し、小さな宇宙船に乗ってリビジアンへと飛び立った。
―完― (原作:さらばキー坊)


 


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