ドラえもん 十二支徒への挑戦状
※かなりシリアスな小説ですが、突っ込み所満載です。


序章〜それぞれの路〜

 のびたは今日、小学校を卒業した。
桜が舞い散る道を、
六年間友に過ごしてきた親友四人と語らいながら家に向かって歩いた。
スネ夫が話を切り出す。
「いやぁ…長いようで短い小学校生活だったなぁ。」
「そうねぇ。いつもドラちゃんもいれて五人で遊んだり、
 一緒に大冒険に行ったりもしたわ。
 これからもずっと同じことが続くと思っていたのに…。」
しずかも話に乗る。
しずかの話を聞いたジャイアンが突然泣き出して言う。
「うおおお!心の友よ!バラバラになっても友情は一つだぁぁぁ!!」
気がつくといつも皆が別れ、それぞれの帰路に就く十字路に刺し当たっていた。
皆と別れたのびたは涙で顔を歪ませながら家に帰った。
 家に帰ると、珠子がエプロン姿でのびたを出迎えた。
卒業記念パーティーをする準備をしていたのであった。
のびたの帰宅に気づいたドラえもんも、二階から掃除道具を持って降りてきた。
「やあおかえり。まだパーティーの準備が出来てないんだ。
 しばらく出かけててよ。」
ドラえもんは照れ笑いながら言った。
「ねぇドラえもん、ママなんかデパートで買ってこなかった?」
のびたは母親からの記念品を楽しみにしていたのだが、
ドラえもんの口から出た記念品の内容は落胆させるものだった。
「電子辞書とダンベルと剣道の一式を買ってきてたけど。」
「あぁやっぱりねぇ…。
 ここ数年間親からろくなプレゼント貰ってないような気がする…。
 僕は宇宙一不幸な少年だぁぁ!!」
のびたが玄関でみっともなく泣き喚くと、
ドラえもんは呆れた顔でポケットを探り始めた。
「のびた君は大袈裟なんだよ。
 まあ今日は記念すべき日だし特別に道具を貸すよ。」
ドラえもんがこういうと、のびたは泣くのを止めて喜んだ。
ドラえもんはそれを見て更に呆れる。
「やれやれ…君は相変わらずだな・
 ほら!この『もしもボックス』でプレゼントの中身でも替えろ。」
「有難うドラえもん!!」
のびたは、ドラえもんがボックスを出すのと同時に中に飛び込んだ。
受話器をとり、大声で叫んだ。
「僕を世界一幸せな少年にしてくれ!
 僕の今の心の傷を埋めてくれぇぇぇぇ!!」
「のびた君!そんなアバウトで欲張りな要求をしちゃ駄目だよ!!」
今の願いが後の大事件に繋がろうとは、二人は知る由もなかった。
 一方、他の三人も家で記念の祝杯を挙げていた。
三人の進路はそれぞれ大きく異なる。
しずかは父の実家のある静岡に引越し、地元の市立中学に通うことになった。
スネ夫は一人、埼玉の叔父の家に移り、そこから私立の学校に通うことになった。
ジャイアンはのびたと同じ公立の中学校に通うらしい。
これからもまたジャイアンに虐められそうである。
スネ夫はその日の夕刻、練馬駅で大宮に向かうための列車に乗った。
電車の運行でトラブルがあり、叔父の家がある大宮の駅まで到着するのに数時間掛かった。
駅に到着したときには既に空は暗かった。
駅の目の前に並んでいる桜並木は美しく見え、スネオは感動した。
スネ夫は人通りが少なくなったロータリーに出て、
叔父の家へ向かって歩き出した。背後に迫る刺客の存在に気づかずに…。
−『第一話 スネ蔵暗殺』へ続く−
予告
スネオをつけまわす謎の刺客。
その真の目的はスネオの叔父『スネ蔵』にあった。
何故刺客はスネ蔵を狙うのか?
『第一話 スネ蔵暗殺』へ…。


〜第一話 スネ蔵殺害〜

 スネ蔵の家に着いたスネ夫は、インターホンを鳴らさずに玄関に入った。
スネ夫「こんばんはぁ…スネ夫です。」
電車での長い滞在が体に答え、掠れた声を無理やり張り上げた。
スネ夫の訪問に気づいたスネ蔵は、玄関へ小走りで向かった。
スネ夫を見るなり潤んだ目をしてこういった。
スネ蔵「おお!スネ夫君かぁ!いやぁ…大きゅうなったのぉ!!
    電車の運行が遅れたんだってな、大変だったのぉ…。」
スネ夫「そうなんですよ。着いたのは九時頃でもう寒くて寒くて。」
スネ夫が体をさすりながら話すのを見て、スネ蔵はすぐに暖を取らせてあげようと思った。
スネ蔵「おお、寒かろう!早く上がりなさい。
    今、茶ぁ入れるけぇ、ちょぉ待っとれよ。」
スネ夫はリビングに案内された。床暖房が起動していたので、焼け付くような寒さはすぐに消えた。
リビングには、スネ蔵が会得したゴルフの優勝トロフィーと賞状が飾られており、
他には生の恐竜の頭蓋骨や、有名人との記念写真が飾られていた。
スネ夫は之を見て、のびたに自慢してやろうと思ったが、
彼らとの別れを思い出してしまい、涙が溢れてきた。
スネ夫は叔父に気づかれないよう、息を殺して泣いた。
そこに丁度お茶を淹れてきたスネ蔵が入ってきたが、
スネ夫が泣いているのに気づき、そっとしてやろうと思い台所に引き返した。
台所に戻ると、先程お茶をお茶を淹れるために用いたやかんが綺麗に真っ二つに斬られていた。
右上がりに直線に斬られているのを見ると、高等な剣術を扱うものの仕業だと察した。
床にこぼれた湯を拭き、周囲を警戒しながら『見えざる敵』に話しかけた。
スネ蔵「一体何のマネじゃぁ!!?こそこそしとらんで出てこいやぁ!!」
スネ蔵は大声で見えざる敵を呼んだが、台所から遠く離れたところにリビングがあるため、スネ夫には聞こえなかった。
スネ蔵が呼び出しに答え、見えざる敵が音も立てずに姿を現した。
それはまだ中学生から高校生ぐらいの幼い少年だったので、スネ蔵は驚愕した。
少年の左手には刀が握られていた。
少年は不気味な笑みを浮かべ、鋭い目つきでスネ蔵を見た。
スネ蔵は怒りを露にし、少年に向かって怒鳴った。
スネ蔵「人の家に勝手に上がりこんでよぉ…何様のつもりなんじゃァ!!」
すると少年は不気味な笑みを維持したまま答えた。
少年「復讐さ。あんたら『十二支徒』へのな…。
   他の連中も俺の仲間に狙われているはずだ。」
少年の発言にスネ蔵は過酷な戦争の時代を思い出した。
 第二次世界大戦当時、高等学校の生徒であったスネ蔵は、即座に戦場に駆り出された。
スネ蔵が向かった戦場はビルマの郊外で、既に街は崩壊して廃墟と化していた。
そこで彼は三人の同年代の少年と、三十代後半の軍の上層部の男達と知り合った。
ある日、敵国の軍隊が彼らを襲撃し、彼らは逃げ惑いながらジャングルへと迷い込んだ。
しばらく周囲を警戒しながらジャングルを進んでいくと、巨大な岩壁に開いた天然の洞窟が見つかった。
六人は洞窟内に入り、最深部を目指した。
数時間後、彼らは最深部と思われる箇所に達し、全員その場に安堵の表情を浮かべて倒れこんだ。
スネ蔵「はぁはぁ…ここまで来りゃぁ…もう安心じゃぁ。」
そしてそのまま六人は衰弱により、深い眠りに落ちた。
 熟睡している六人は、共通の夢を見た。
光に包まれた何者かが、彼らに向かって光の波動を送り、
小声で何かを囁いて消えていった夢であった。
目が覚めると、六人は日本軍の医療テントの中にいた。
側では初老の医者が、心配そうに見守っていた。
目が覚めるやいなや、六人は医者に夢の出来事を話した。
それによって彼らも共通の夢を見たことをお互いに知った。
『光に包まれし者』が六人に放った光は何であろうかと六人で話し合った。
やがてその話は現地の日本兵全員に伝わり、少々騒ぎとなった。
 午後になると、突然敵軍が日本側に攻めてきたので、
休息の時間であった兵士達は渋々武器を持って戦に向かった。
だが、そこに立っていたのはスネ蔵を含むあの洞窟を探検した六人のみで、
攻めてきた敵国の兵士達は夥しい血を流して倒れていた。
これを見た軍隊長の盛岡は、スネ蔵に目を丸くして問いただした。
盛岡「い…一体どうやってこれだけの数を?」
之に対してスネ蔵も困惑の表情で答えた。
スネ蔵「我々にもわかりません。
敵兵が攻めてきた際に、力が凄まじい勢いで漲ってきて…そこからの記憶が全く無いのです…。」
他の六人も同じ状態にあった。
力がみなぎってきた後の出来事は覚えておらず、我に返ったときには既に敵兵が血まみれで倒れていたと言う。
六人は洞窟で見た夢と関わりがあるということを悟った。
 それから、戦の度に六人の前で敵兵が玉砕されていった。
六人にはその間正気は無いが、他の日本兵が彼らが敵兵を玉砕する様を目の当たりにしていた。
だが彼らは、日を増すごとに徐々に玉砕でも正気を保てるようになり、ついにはその力を自由自在に操れるようになった。
そして彼らは凄まじい力を得たあの洞窟へ向かうことにした。
どうしてこのような力を得たのか、答えを探し出すためである。
しかしそのまま答えは見つからず、それから日本は降伏し、長い年月が経過した。
この力を持った人間は、彼ら以外にも更に六人存在するということが判明し、
しだいに彼らは『十二支徒』と呼ばれるようになった。
 この少年があの事件と何のつながりを持つのか、スネ蔵は疑問だった。
少年は不気味な笑みを浮かべながら更に話を続けた。
少年「あんたらの力は同じDNAを持つものに力を分配されるということが判明している。
   そこであんたの甥であるスネ夫を殺すために尾行した。
   だがいくら葬るべき者でも、最後に彼らの望むようにしてやりたい。
   彼はあんたに会うのを楽しみにしていた。それにあんたもな。
   だから再開してから葬ってやろうと思ったんだ。
   本当は力が分配されちまう可能性があるから、即座に殺しておくべきなんだけどな。
   俺の人情が厚いから待ってやったんだぜ、感謝しろよ?ははは。」
少年のこの発言で、この少年は根は心優しい少年だと察したスネ蔵は怒りを沈め、
優しく少年に問いただした。
スネ蔵「どうして君のような心優しい少年が我々を殺そうとするんだ?
    誰かに脅されて頼まれているのじゃろう?」
それに対し、少年は笑みを消し、目を更に鋭くさせて答えた。
少年「あんたには分からないよ。裕福で楽しい人生を送ったあんたには!
   俺があんたらのせいでどんな苦労をしてきたかなんてよ!!」
少年は怒りをあらわにして刀を構え、スネ蔵に突進していった。
スネ蔵は少年の凄まじいスピードに対抗できず、そのまま刀で腹部を刺された。
刀はスネ蔵の背中を突き出し、そこに少年の左腕もスネ蔵の腹部にめり込んだ。
スネ蔵「ごはぁぅ!!」
スネ蔵はあまりの激痛に声が出なくなり、腹部に刺さった少年の腕に軽々と持ち上げられた。
少年は憎悪の表情でスネ蔵にこう告げた。
少年「俺の名前は『栄進刀功僧(えいしんのとうこうそう)』だ。
   他にも十一人の仲間が居て『暗十二支徒』と呼ばれている。
   俺達の長から十二支徒を抹殺しろと命じられて今に至るわけだ。
   あんたらを抹殺しない限り、俺達の戦い(十二支徒と暗十二支徒間の戦争)は終わらないんだ。
   あんたら十二人とその身内だけを殺せば、億以上いる俺らの仲間が助かるんだ。
   分かってくれ…。」
栄進刀功僧は涙を流していた。
そしてそれを見たスネ蔵は残る力を振り絞り、栄進刀功僧にこう告げた。
スネ蔵「君達の億以上の仲間の命…数少ない我々の命を犠牲にしてお助けしよう…。」
スネ蔵は微笑み、そのまま永遠の眠りに就いた。
栄進刀功僧はその死を涙を流しながら見届け、スネ蔵をもう片方の腕で粉砕した。
スネ蔵の体は夥しい光の粒となって周囲の空気に同化していった。
栄進刀功僧は、寂しく笑いながらもう存在しないスネ蔵に向かってこう呟いた。
栄進刀功僧「ありがとう…。」
それから少年は、彼らの長にスネ蔵殺害を報告すべく、その場を離れた。
スネ夫は再び彼が訪れるまで生き延びることとなる。
 翌日、そのままリビングのソファーで眠り込んでしまったスネ夫は跳ね起きた。
そして叔父が朝食の用意をしているものと思い、台所へ向かったものの、
そこには二つに分かれたやかんが落ちているだけで他には何も無かった。
それから家中を探し回ったが、スネ蔵の姿は何処にも見当たらなかった。
数時間経過してもスネ蔵が戻らないので、急いで野比家に叔父を探すよう連絡を入れた。
ドラえもんが早速道具を使ってスネ蔵を捜索するも、道具は叔父を探し出すことは無かった。
ドラえもんは深刻な声でスネ夫に言った。
ドラえもん「正常な道具でも探し出せないんだ。これはもう…。」
最後まで言うのが辛く、ドラえもんは口ごもってしまった。
スネ夫は号泣しながら受話器に向かって言った。
スネ夫「叔父さんが殺されたなんて…僕は信じられない!
    ドラえもん、すぐにどこでもドアで僕を迎えに来てくれ!
    叔父さんの死を認めることが出来ないんだ!」
−第二話へ続く−


第二話〜流星群を操る男〜

 スネ蔵が暗殺された同時刻、
源一家は、夜のハイウェイを、先日購入したばかりの車で走行していた。
時刻は深夜零時なので、ハイウェイを通るのは数台の走り屋の車と大型トラックだけだった。
走り屋の車があまりにも荒い走行をするので、
しずかは後部座席でガタガタと震えながら横になっていた。
走行音と周囲の騒音で寝付けずにいるしずかは、
頭の側に置いてある卒業アルバムを開いて目を通した。
クラスメンバーの集合写真のページをじっと見つめ、無言のまま涙を流した。
涙粒が集合写真のび太の上に落ち、のび太の顔が滲む。
しずかは慌てて涙をぬぐい、窓の外に目を移した。
先程あれだけ騒々しかった走り屋の車や、大型輸送トラックはもう走っていなかった。
サービスエリアに入ったか、もしくはハイウェイを降りたのであろうと思い、
しずかはようやく数時間ぶりに安堵の表情を浮かべた。
空を見ると無数の星が転々と輝いていた。
周囲は山に囲まれ、一部の森が月光に照らされていた。
中には桃色に染まった桜の樹の群れもあり、源一家はロマンを感じた。
もう一度夜空に目をやると、流れ星がしずかの目に映った。
その流れ星を皮切りに、次々と星が流れ始めた。
突然の美しい光景に目を奪われ、しずかはその些細な異変に気づかなかった。
数分後、運転に集中していたしずかの父がようやく異変に気づいた。
しずか父「なあ、流れ星なんだけどいくらなんでも多すぎないか?」
横でうとうとしていたしずかの母がそれに気づき、夜空を見上げた。
そして更なる異変に気がつき、大声で言った。
しずか母「あ…あれ…星が降ってるのよ!
     さっきまで見えていた乙女座が消えてるわ!」
母親の大声で流れ星に見入っていたしずかも我に返り、再び深刻な顔をした。
引き続き夜空を見ていると、流れ星が一際大きく見える赤い星に衝突した。
火星である。火星はその瞬間から無数の赤い光となって夜空に散り、やがて見えなくなった。
それは当に飛び散る鮮血のようであった。
不意に頭上で声がした。
「最期のプレゼント…気に入ってくれたかね?」
その後急に轟音が響き渡り、夜空に爆炎が火山のように轟いた。
 翌日、野比家にスネ夫が訪れていた。
ドラえもんの道具が示したスネ蔵の死が、スネ夫にはどうしても信じられなかった。
そこでスネ夫は再度調査をするようドラえもんに懇願してきたのであった。
スネ夫が涙を流しながらドラえもんの肩を揺さぶって言った。
スネ夫「なあ!道具でもう一度探してくれよ!!
    おじさんがいなくちゃ…僕はっ!!」
ドラえもんの肩を掴んだまま俯いて泣くスネ夫に、
のびたが慰めようと声をかけた。
のび太「叔父さんが亡くなるわけない。絶対に何か裏があるよ。
    タイムテレビで確かめよう。な?」
スネ夫は泣きっ面を上げてのび太に言った。
スネ夫「そうだ…タイムテレビだよ。それだ。」
のび太は安堵の表情を浮かべ、ドラえもんにタイムテレビの要求をした。
ドラえもんはすぐにポケットを探った。
整理されていないので、なかなか目的のものを見つけ出せずにいた。
足踏みしながら早く出せと言うのび太に、
スネ夫は自分のことのように感受してくれていることに気づき、感謝と感動の気持ちで再び涙が溢れた。
そこに、珠子がポスカムを綺麗に盛り合わせた大皿を持ってきて三人に差し出した。
そして何気なく三人に今朝のニュース内容を話した。
珠子「なんか昨日の夜、静岡方面の高速道路で大事故があったらしいわよ。
   源さん達が通る路よね?無事だといいけど・・・。」
その発言に四人ははっとして青面した。
すると突然窓の下で声がした。
窓を開け家の前の通りを見ると、たけしが息を切らせながら立っていた。
のび太「どうしたの、ジャイアン。」
たけしは口元を震わせながら恐る恐る口にした。
たけし「し…しずかちゃんが……事故で死んだって!!」
三人とその場に居合わせた珠子は驚愕し、しばらく何も言えなかった。
 昨夜の源家の惨状を映し出すタイムテレビを目の前に、
四人は困惑交じりの顔で無言のまま座っていた。
映像には、源家の車のルーフに一人の中年男性が立っているのが映し出されていた。
何度もこの場面に巻き戻し、男の行動を観察した。
たけしが立ち上がり、モニターに掴みかかって怒鳴った。
たけし「こいつがしずかちゃんを殺したんだ!」
のび太「ジャイアン!!落ち着いて!!
    タイムマシンでそいつを止めに行こう!」
 一方、米国航空宇宙局NASAでは、昨夜の一時的な天体の異常な動きについて騒然としていた。
乙女座、火星の消滅は、地球上を様々な意味で揺るがした。
惑星の消滅により重力の法則が乱れ、一部地域では無重力状態となっていた。
またある地域では、強い重力であらゆる物が地上にめり込んだ。
ヘリウムの入った風船でさえも、地上に隕石のごとく落下した。
これによりその地域に住まう人類を含む生物は死に絶え、
それがライフラインにも支障をきたし、世界が混乱に陥っていった。
NASAの最高管理長『グレイヴ・セントニオ』が空を見上げながら言った。
グレイヴ「我々十二支徒の宿命がこんなにも多大なものとは…
     もうじき私にも死が降りかかる。
     その前に何としてでも同志を集めなければ。」
彼はスネ蔵ら六人と違う、生まれつき戦闘能力を持った十二支徒の六人の一人であった。
グレイヴはNASAの立ち入り禁止開発区域に入り、
目の前の巨大な戦艦に目をやって決心した。
グレイヴ「時を乱してしまうために今まで温存してきたタイムマシンだが…
     ようやくこれを使う時が来たようだ。
     この巨大な戦艦を私一人で動かすのは容易くないが…
     残りの五人を呼び集めれば何とか出発できそうだ。
     時空を超越した聖戦は間もなく始まる。」
そこに五人の新たな人間が入ってきた。
彼らもまた、天性の十二支徒であった。
五人の中に一人が言った。
「他の六人は全滅だ。やはり天性の実力とは天と地の差だった。」
グレイヴ「そうか。すまないことをしたな。
     戦が終わったら蘇生して差し上げよう。」
「その心配は無いよ。彼らの子孫が既に時を越えて彼らを救いに向かった。
 予定通り十二支徒は全員集まるよ。」
一人の発言でグレイヴは驚いていった。
グレイヴ「我々のほかにもタイムマシンを所持する者がいたのか!」
男が満面の笑みを浮かべながらそれに答えた。
「ああ…我々にもまだ手段はある。
 彼らと他の十二支徒と共に平和を手にしよう!」
その一言でその場の一同は明るい表情で叫んだ。
「オォォォォォ!!!!!!!」
−第三話へ続く−


消滅話〜無力と破滅〜

 タイムマシンで昨日の源本家の車の上空に出くわした四人。
空を見上げると、あるはずの星座が消えていた。
流星が落ち行く夜空を見上げながら四人は恐怖しつつも感動した。
源本家の車には、依然異変は無い。
そこで四人はしばらく車と併走しながら異変を待つことにした。
待つこと数分、夜空の流星の落下が激しくなり、
一同はわきあがる恐怖を抑えながらいずれくる戦いの為に身構えていた。
不意に空を見上げたのび太が言った。
のび太「何か飛んでくるよ?敵かな?」
ドラえもん「鳥じゃないの?大体、テレビには一人しか映ってなかったし。」
ジャイアン「いや…ありゃ人だ!しかも六人もいやがる!」
スネ夫「もしかして、僕達が来たせいでもっとややこしいことに…」
ドラえもんは即座にポケットから空気ピストルと空気砲を取り出し、三人に与えた。
三人はすぐさまそれを装備し、六人の人影に向かって放った。
銃弾はのび太が見事に全員に命中させ、六人の影は徐々に下降し、やがて山林に落ちた。
のびた「やったぁ!しずかちゃんを守ったぞ!」
のびたは誰よりも早く惨劇を防いだことに喜んだ。
だがドラえもんは顔を青くしたまま人影が落ちた山林を見続けていた。
不審に思ったのびたがドラえもんに尋ねた。
するとドラえもんは絶望と恐怖と怒りで震えながらのびたに言った。
ドラえもん「なんてことしてくれた…。彼らは味方だったのだ。
      敵は何も知らない僕達を上手く欺いたんだ。
      味方の六人が来た後でここに現れ、
      僕達が味方を殺してしまってからしずかちゃんを襲うつもりだったんだ。
      見てみろ!あそこに上がる噴煙は既に襲われた証拠だ!
      時の流れは変えることは出来ないんだよ!
      狂わせても何らかの形で修正されちまうんだ!
      もう何もかも定まってるんだ。
      だから君に真実を話すよのび太君。
      君は実験材料だったのだ。時流の研究のな!
      その為に僕は来たんだ。君に近づき道具を使って歴史を変え、どのように修正されるのかを観察するために!
      ジャイ子と結婚するなんてなぁ嘘だよ。
      結婚相手は文字通りしずちゃんなんだ。
      君らが今まで見た過去や未来は我々の偽りさ。
      定められた時流を見られて落胆させないよう、
      君ら平成人に時の流れは変えられると思わせて希望を与えたということさ。
      もう無意味だけどね。
      セワシなんてのも我々が生み出したミュータントだよ。
      野比家は君の代で終わりなんだ!
      だがしずかと結婚するのは事実。意味がわかるかい?
      しずかが死んじまったらあいつと結婚する手段はただ一つ。
      君が死ぬことだ。死後の世界とやらで結婚するがいい。
      実験は君の間違いによって悉く終了。
      ジャイアンとスネ夫は記憶を消して家に帰す。
      僕を恨むかい、のび太君。
      それは違うな。恨むのは文明の発展しか考えてない国家のじじいと婆どもだよ。
      僕が実験に付き合ったのも奴らの命令なんだ。ロボだから背けないよね。
      機械が自分の意志で動いたら怖いだろナハハ!!!!
      いつか言ったよな、ロボットは友達だって。
      アレを聞いたときホント涙が出そうになったよ。あまりにもアホだから!
      なに夢見てんだよバカ猿がぁ!…っふふ!
      そうそう、そこのチキン少年の叔父を襲ったのは暗十二支徒っていう連中でね。
      それも我々の送り込んだ刺客さ。
      十二支徒ってぇのもいたっけ。お前が間違って打ち落とした奴だよ。
      もう六人いたんだが奴ら、無能なカスどもに憑依してカスもろとも暗十二支徒に殺されちまった。
      その中の一人がスネ蔵とかいうクソだったけ。がははは!!
      十二支徒が正義感あふれるメンバーで俺らの作戦に反対する奴だったから嬉しくて溜まんないな!!!!
      さて…おしゃべりが過ぎたようだ。
      そろそろ終わりにしよう。デブとガリはおうちに帰んな。
      そして用無しになった君と僕も僕の自爆装置で夜空に散ろうや!
      う破っウはは覇波はぁぁァァぁぁぁっ!!!!」

 夜空に原爆のようなキノコ型の噴煙が立ち昇った。
たけしとスネ夫は残影を残しながら消滅した。
元の場所へと帰ったのである。
未来の時空研究所では『時の流れは変えられない』という結論が出て、この膨大で非道的な実験は幕を閉じた。
彼らの人道に反する行為をとめる者は、十二支徒の消滅で完全にいなくなった。
以後、地球がどうなったのか知る者は居ない。
−完−


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