ドラえもん のび太と十二支徒への挑戦状

 


 

 のび太はこの日、小学校を卒業した。桜が舞い散る道を、六年間友に過ごしてきた親友三人と語らいながら家に向かって歩いた。
 突然、スネ夫が小学校生活を振り返る話を切り出した。
「いやぁ長いようで短い小学校生活だったなぁ」
「そうねぇ。いつもドラちゃんもいれて五人で遊んだり、一緒に大冒険に行ったりもしたわ。これからもずっと同じことが続くと思っていたのに…」
 しずかも話に乗る。それを聞いたジャイアンが突然泣き出して言った。
「うおおお! 心の友よ! バラバラになっても友情は一つだぁぁぁ!!
 気がつくといつも皆が別れ、それぞれの帰路に就く十字路に刺し当たっていた。皆と別れたのび太は一人、堪えていた涙を一気に溢れ出させ、顔をくしゃくしゃに歪ませて嗚咽しながら家に帰った。
 泣いたことを家族に悟られないように涙と鼻水を拭いて家に入ると、のび太の卒業記念パーティーの準備をしている最中であった。玄関に佇むのび太を珠子がエプロン姿で出迎えた。

「お帰りなさい。夕方のパーティーまでまだ時間があるから部屋の整理でもしてなさい」そう言うと珠子は、そそくさと台所へ戻って行ってしまった。それと入れ替わるように、ドラえもんが二階から掃除道具を持って降りてきた。

「やあおかえり。ママが夕飯でご馳走が沢山出るから、お昼はカップラーメンで済ませろてさ」
 ドラえもんはそう言って微笑んだ。のび太は「そう」と言って一瞬黙った後、突然思い出したようにドラえもんにこう問いただした。
「ねぇドラえもん、ママなんかデパートで買ってこなかった?

「電子辞書とダンベルと剣道の一式を買ってきてたけど」
 のび太は母親からの記念品を楽しみにしていたのだが、ドラえもんの口から出た記念品の内容は予想通り落胆させるものだった。
「あぁ、やっぱりねぇ…ここ数年間、親から碌なプレゼントを貰っていないような気がする。僕は宇宙一不幸な少年だぁぁっ!!
 そうやってのび太がいつものようにみっともなく泣き喚くと、ドラえもんもいつものように呆れた顔をしてポケットを探り始めた。
「のびた君は大袈裟なんだよ。まあでも今日は記念すべき日だし、特別に道具を貸してやるか」
 ドラえもんがそう言うと、のび太は器用に泣くのを止めて喜んだ。ドラえもんはそれを見て更に呆れた。
「やれやれ…君は相変わらずだなぁ。ほら! この『もしもボックス』でプレゼントの中身でも変えてみろ」
「ありがとうドラえもん!!
 のび太は、ドラえもんがボックスを出すのと同時に中に飛び込んだ。そして受話器を取り、大声で叫んだ。
「僕を世界一幸せな少年にしてくれ! 僕の今の心の傷を埋めてくれぇぇぇぇ!!
「のび太君! そんなアバウトで欲張りな要求をしちゃ駄目だよ!!
 のび太のこの何の変哲もない願いが後の大事件に繋がろうとは、二人は知る由もなかった。

 


 

三人の進路はそれぞれ異なる。しずかは父の実家のある静岡に引越し、地元の公立中学に通うことになった。スネ夫は一人埼玉の叔父の家に移り、そこから私立の学校に通うことになった。ジャイアンはのび太と同じ公立の中学校に通うらしいが、その恵まれた体力が評価され、スポーツクラスへの入学となっている。クラスは違うものの、のび太はこれからもまたジャイアンに虐められそうである。
 スネ夫は卒業式が終わったその日の夕刻、皆より一足先に練馬駅から叔父の家のある大宮に向かうための列車に乗った。電車の運行でトラブルがあり、叔父の家がある大宮の駅まで到着するのに数時間掛かった。駅に到着したときには既に夜の九時を回っていた。駅のロータリー前の公道に並んでいる桜並木は美しく見え、スネオは感動した。スネ夫は人通りが少なくなったロータリーに出て、叔父の家へ向かって歩き出した。その時、背後に迫る黒い影の存在には気がつかなかった。
 叔父のスネ蔵の家に着いたスネ夫は、インターホンを鳴らさずに玄関に入った。
「こんばんはぁ! スネ夫です」
 スネ夫は電車での長い滞在が体に堪えたのか、張り上げた自分の声が掠れていることに気がついた。スネ夫の訪問に気づいたスネ蔵は、小走りで玄関へと向かった。そして一回り成長したスネ夫を見るなり、潤んだ目をしてこう言った。
「卒業おめでとう! いやぁ、ホンマに大きゅうなったのぉ!! ところで電車の運行が遅れたんだってな、大変だったのぉ…」
「そうなんだよ叔父さん。着いたのは九時頃でもう外は寒いやら疲れるやらで」
 スネ夫が体をさすりながら話すのを見て、スネ蔵はすぐに暖を取らせてやることにした。
「まだ春といっても夜は冷えるもんじゃ。風邪でもひいたらいかんけぇ。早く上がりなさい。今、茶ぁ淹れるけぇ、ちょぉ待っとれよ」
 スネ夫はリビングに案内された。床暖房がきいていたおかげで、春の夜の寒さはすぐに消えた。リビングには、スネ蔵が取得したゴルフの優勝トロフィーと賞状が飾られており、他には生の恐竜の頭蓋骨や、有名人との記念写真が飾られていた。スネ夫はこれらを見てのび太に自慢してやろうと思ったが、彼らとの別れを思い出してしまい、涙が溢れてきた。
スネ夫は叔父に気づかれないよう、息を殺して泣いた。そこに丁度お茶を淹れてきたスネ蔵が入ってきたが、スネ夫が泣いているのに気づき、そっとしてやろうと思い台所に引き返した。
 台所に戻ると、先程お茶を淹れるために用いたやかんが綺麗に真っ二つに斬られていた。右上がりに直線に斬られているのを見ると、高等な剣術を扱うものの仕業だと察した。床にこぼれた湯を拭き、周囲を警戒しながらスネ蔵は『見えざる敵』に話しかけた。
「一体何のマネじゃぁ!!? こそこそしとらんで出てこいやぁ!!
 スネ蔵は大声で見えざる敵を呼んだが、なにぶん家が広いため台所から遠く離れたところにあるリビングにいるスネ夫には聞こえなかった。スネ蔵が呼び出しに応え、見えざる敵が音も立てずに姿を現した。それはまだ中学生から高校生ぐらいの少年だったので、スネ蔵は驚愕した。少年の左手には日本のものと思われる刀が握られていた。少年は不気味な笑みを浮かべ、鋭い目つきでスネ蔵を見た。スネ蔵は怒りを露にし、少年に向かって怒鳴った。
「ヒトサマの家に勝手に上がりこんでよぉ…いったい何様のつもりじゃァ!!
 すると、少年は不気味な笑みを維持したまま淡々と答えた。
「復讐さ。あんたら『十二支徒』へのな…。他の連中も俺の仲間に狙われているはずだ」
 少年の発言にスネ蔵は過酷な戦争の時代と、その時体験した不思議な出来事を思い出した。


 第二次世界大戦当時、高等学校の生徒であったスネ蔵は、即座に戦場に駆り出された。スネ蔵が向かった戦場はビルマの郊外で、既に街は崩壊して廃墟と化していた。そこで彼は三人の同年代の少年と、三十代後半の軍の上層部の男二人と知り合った。
 ある日、敵軍の襲撃により、スネ蔵含む六人は逃げ惑いながらジャングルへと迷い込んだ。しばらく周囲を警戒しながらジャングルを進んでいくと、巨大な岩壁に開いた天然の洞窟が見つかった。スネ蔵達は洞窟内に入り、最深部を目指した。数時間後、彼らは最深部と思われる箇所に達し、全員その場に安堵の表情を浮かべて倒れこんだ。

「はぁはぁ…ここまで来りゃぁ……もう安心じゃぁ……」
 スネ蔵のその一言がその場に安心感をもたらしたのか、六人はどっと深い眠りに落ちた。
 熟睡している六人は共通の夢を見た。光に包まれた何者かが、彼らに向かって光の波動を送り、小声で何かを囁いて消えていった夢であった。

目が覚めると、スネ蔵達は日本軍の医療テントの中にいた。横たわる六人の側では、初老の医者が心配そうに見守っていた。スネ蔵達は体を起こすやいなや医者に夢での出来事を話した。それによって六人が互いに共通の夢を見たことを知り、驚いた。『光に包まれし者』が六人に放った光は何であろうかと六人で話し合った。やがてその話は現地の日本兵全員に伝わり、少々騒ぎとなった。
 午後になると再び敵軍が日本軍側に攻めてきたので、休息の時間であった兵士達は渋々武器を持って戦に向かった。だが、そこに立っていたのはスネ蔵を含むあの洞窟を探検した六人のみで、攻めてきた敵国の兵士達は夥しい血を流して倒れていた。これを見た軍隊長の盛岡は、スネ蔵に目を丸くして問いただした。
「い一体どうやってこれだけの数を?
 それに対してスネ蔵も困惑の表情で答えた。
「我々にもわかりません。敵兵が攻めてきた際に、体中に凄まじい力が漲ってきて…そこからの記憶が全くないのです…」
 他の五人も同じ状態にあった。力が漲ってきた後の出来事は覚えておらず、我に返ったときには既に敵兵が血まみれで倒れていたと言う。六人は洞窟で見た夢と関わりがあるということを悟った。
 それから、戦の度に六人の前で敵兵が玉砕されていった。六人はその間、正気が無く自覚すらしていなかったが、他の日本兵は彼らが敵兵を玉砕する様を目の当たりにしていた。しかし彼らは、日を増すごとに徐々に戦闘中でも正気を保てるようになり、ついにはその力を自由自在に操れるようになった。

そして何日か後、スネ蔵達は再び凄まじい力を得たあの不思議な洞窟へ向かうことにした。どうしてこのような力を得たのか、答えを探し出すためである。しかし洞窟の奥に進んでも答えが見つかることはなく、泣く泣く持ち場へ帰還するだけであった。

それから程なくして日本はアメリカに降伏し、長い年月が経過した。その後スネ蔵らの力を持った人間が彼ら以外にも更に六人存在するということが密かに判明し、次第に彼らは『十二支徒』(じゅうにしと)と呼ばれるようになった。


 この少年があの事件と何のつながりを持つのか、スネ蔵は疑問だった。少年は不気味な笑みを浮かべながら更に話を続けた。
「十二支徒の力は同じDNAを持つものに力を分配されるということが判明している。そこであんたの甥であるスネ夫を殺すために尾行した。だが、いくら葬るべき者でも死の直前ぐらいは望むようにしてやりたい。スネ夫はあんたに会うのを楽しみにしていた。それにあんたもな。だから再開してから葬ってやろうと思ったんだ。本当は力が分配されちまう可能性があるから、即座に殺しておくべきなんだけどな。俺の情が厚いから待ってやったんだぜ。感謝しろよ」
 少年のこの発言で、スネ蔵はこの少年が根は心優しい少年だと察し、それまで露にしていた怒りを沈めて優しく少年に問いただした。
「どうして君のような仁義があって心優しい少年が我々を殺そうとするんだ? 誰かに脅されて頼まれているのじゃろう?
 すると少年は笑みを消し、目を細くして逆上した。
「あんたには分からないよ! 裕福で楽しい人生を送ったあんたには! 俺があんたらのせいでどれほどの苦痛を味わってきたかなんてよ!!
 少年は怒りを露にして刀を構え、スネ蔵に突進していった。スネ蔵は戦後、その不思議な力と鍛え上げた戦術を使うことがなかったので、すっかり鈍ってしまっていた。凄まじいスピードで迫りくる少年に対抗できず、スネ蔵は無残に刀で腹部を刺されてしまった。刀はスネ蔵の体を貫通し、その背中から朱に染まった刃を突き出した。そこに少年の左腕もスネ蔵の腹部にめり込んだ。
「ごはぁぅっ!!
 スネ蔵はあまりの激痛に苦しげな呻き声を挙げながらどっと血を吐いた。そして、腹部に刺さった少年の腕に軽々と持ち上げられた。少年は憎悪の表情を浮かべてスネ蔵にこう告げた。
「俺の名前は『栄進刀功僧』(えいしんのとうこうそう)。属性は『戌』だ。他にも十二支に因んだ属性を持つ十一人の仲間がいて『暗十二支徒』(あんじゅうにしと)と呼ばれている。その中に君臨する俺達の長から十二支徒を抹殺しろと命じられ、今こうしてあんたを血まみれにしたわけさ。あんたらを抹殺しない限り、俺達の戦い(十二支徒と暗十二支徒間の戦争)は終わらない。あんたら十二人とその身内だけを殺せば、億以上いる俺らの家族や親類、友達が助かるんだ。分かってくれ…。あんたが死んだ暁にはもうその力が身内に渡ることはない。スネ夫とその家族、親類ももう俺達の抹殺のターゲットから外される。安心して眠ってくれ……」
 栄進刀功僧はいつの間にか憎悪の表情を消し、悲しげに涙を流していた。そしてそれを見たスネ蔵は残る力を振り絞り、刀功僧にこう言った。
「君達の一族の命…数少ない我々の命を犠牲にしてお助けしよう…」
 スネ蔵は微笑み、そのまま永遠の眠りに就いた。刀功僧は少しの間スネ蔵の亡骸を見つめた後、そのままスネ蔵の亡骸を左腕の魔力によって粉砕した。スネ蔵の体は夥しい光の粒となって周囲の空気に同化していった。刀功僧は寂しく笑い、もう存在しないスネ蔵に向かってこう呟いた。
「ありがとう…」
 それから刀功僧は自分たちの長にスネ蔵殺害を報告すべく、その場を離れた。何も知らないスネ夫は、抹殺のターゲットから外されて生き延びることとなった。
 翌日、そのままリビングのソファーで眠り込んでしまったスネ夫は跳ね起きた。そして叔父が朝食の用意をしているものと思い台所へ向かったものの、そこには二つに分かれたやかんが落ちているだけで他には何も無かった。それから家中を探し回ったが、スネ蔵の姿は何処にも見当たらなかった。

数時間経過してもスネ蔵が戻らないので、急いで野比家に連絡を入れ、ドラえもんに叔父を探すよう懇願した。事態を察したドラえもんは早速道具を使ってスネ蔵を捜索するも、道具が叔父を見つけ出すことはなかった。ドラえもんは深刻な声でスネ夫にこう言った。
「正常な道具でも探し出せないんだ。これはもう…」
 最後まで言うのが辛く、ドラえもんは口ごもってしまった。スネ夫は号泣しながら受話器に向かって言った。
「叔父さんが殺されたなんて…僕は信じられない! ドラえもん、すぐにどこでもドアで僕を迎えに来てくれ! 叔父さんの死を認めることが出来ないんだ!

 昨夜、スネ蔵が暗殺されてから数時間が経過した午前零時、源一家は夜のハイウェイを先日購入したばかりの車で走行していた。時刻は深夜零時なので、ハイウェイを通るのは数台の運搬用の大型トラックだけだった。運転になれていない父の車があまりにもぎこちない走行をするので、しずかは不安で後部座席でガタガタと震えながら横になっていた。車の走行音でなかなか寝付けずにいたしずかは、頭の側に置いてある卒業アルバムを開いて目を通した。クラスメンバーの集合写真のページをじっと見つめ、無言のまま涙を流した。涙の粒がアルバムに大々的に掲載されているクラス集合写真ののび太の上に落ち、のび太の顔が滲んだ。しずかは慌てて涙を拭い、気分転換をしようと体を起こして窓の外に目を移した。先程まで見えていた数台の大型輸送トラックは視界から消えていた。サービスエリアに入ったか、もしくはハイウェイを降りたのであろうと思い、しずかはようやく数時間ぶりに安堵の表情を浮かべた。空を見ると無数の星が転々と輝いていた。ハイウェイの周囲は山に囲まれ、一部の森が月光に照らされていた。中には桃色に染まった桜の樹の群れもあり、しずかはロマンを感じた。もう一度夜空に目をやると、流れ星がしずかの目に映った。その流れ星を皮切りに、夜空に次々と星が流れ始めた。突然の美しい光景に目を奪われ、しずかはその些細な異変に気づかなかった。
 数分後、運転に集中していたしずかの父がようやく異変に気づいた。
「なあ、流れ星だけどいくらなんでも多すぎないか?
 続いて、その横でうとうとしていたしずかの母が更なる異変に気づき、夜空を見上げて叫んだ。
「あ、あれは星が降ってるのよ! さっきまで見えていた乙女座が消えてるわ!
 母親の大声で流れ星に見入っていたしずかも我に返り、再び深刻な顔をした。引き続き夜空を見ていると、流れ星が一際大きく見える赤い星に衝突した。火星である。火星はその瞬間から無数の赤い光となって夜空に散り、やがて見えなくなった。それは当に飛び散る鮮血のようであった。不意に頭上で声がした。
「最期のプレゼント、気に入ってくれたかね?
 その後、急に轟音が響き渡り、源一家の直前で爆炎が火山のように轟いた。


 時は現在に戻り、野比家にスネ夫が訪れていた。ドラえもんの道具が示したスネ蔵の死が、スネ夫にはどうしても信じられなかった。そこでスネ夫は再度調査をするようドラえもんに懇願してきたのであった。スネ夫が涙を流しながらドラえもんの肩を揺さぶって言った。
「なあ! 道具でもう一度探してくれよ!! おじさんがいなくちゃ…僕はっ!!
 ドラえもんの肩を掴んだまま俯いて泣くスネ夫に、のび太が慰めようと声をかけた。
「叔父さんが亡くなるわけない。絶対に何か裏があるよ。タイムテレビで確かめよう。な?
 スネ夫は泣きっ面を上げ、希望の笑みを浮かべてのび太に言った。
「そうだ!! タイムテレビだ!!
 のび太も安堵の表情を浮かべ、ドラえもんにタイムテレビの要求をした。ドラえもんはすぐにポケットを探った。整理されていないので、なかなか目的のものを見つけ出せずにいた。足踏みしながら早く出せと言うのび太に、スネ夫は自分のことのように感受してくれていることに気づき、感謝と感動の気持ちで再び涙が溢れた。そこに、珠子がポスカムを綺麗に盛り合わせた大皿を持ってきて三人に差し出した。そして何気なく三人に今朝のニュース内容を話した。
「なんか昨日の夜、静岡方面の高速道路で大事故があったらしいわよ。しずかちゃん達が通る路だったわよね? 無事だといいけど……」
 その発言に三人ははっとした。すると、突然窓の下で声がしたので家の前の通りを見ると、ジャイアンが息を切らせながら立っていた。
「ジャイアン?
 ジャイアンは通りに佇んで口元を震わせながら、恐る恐る口にした。
「ししずかちゃんが……事故で死んだって!!
 三人とその場に居合わせた珠子は驚愕し、しばらく何も言えなかった。
 昨夜の源家の惨状を映し出すタイムテレビを目の前に、四人は困惑交じりの顔で無言のまま座っていた。映像には、源家の車のルーフに一人の中年男性が立っているのが映し出されていた。何度もこの場面に巻き戻し、男の行動を観察した。ジャイアンが立ち上がり、モニターに掴みかかって怒鳴った。
「こいつがしずかちゃんを殺したんだ! タイムマシンでこいつを止めに行こう!


 一方、米国航空宇宙局NASAでは、昨夜の一時的な天体の異常な動きについて騒然としていた。乙女座、火星の消滅は、地球上を様々な意味で揺るがした。惑星の消滅により重力の法則が乱れ、地球の地軸が傾いていた。そのため、両極地の位置が大幅にずれてしまっていた。北極は地中海周辺に移動し、対する南極は南太平洋付近に移動していた。所謂ポールシフトという現象である。これにより地球環境が激変し、人類を含む生物が数時間の間に大量に死に絶え、ライフラインにも支障をきたし、世界が混乱に陥っていった。NASAの最高管理長であるグレイヴ・セントニオが空を見上げながら言った。
「我々十二支徒の宿命がこんなにも多大なものとは…このままではもうじき我々にも死が降りかかる。その前に何としてでも同志を集めなければならん」
 彼はスネ蔵ら六人と違う、生まれつき高度且つ特殊な戦闘能力を持った十二支徒の六人の一人であった。その一人であるグレイヴは、『辰』属性で大地の力を操る戦術を得意としていた。
 グレイヴはNASAの立ち入り禁止開発区域に入り、目の前の巨大な戦艦を見つめながら決心した。
「時を乱してしまうために今まで温存してきたタイムマシンだが…ようやくこれを使う時が来たようだ。この巨大な戦艦を私一人で動かすのは容易くないが…残りの五人を呼び集めれば何とか出発できそうだ。時空を超越した聖戦は間もなく始まる」
 やがてそこに五人の新たな人間が現れた。彼らもまた、天性の十二支徒であった。
「他の六人は全滅だ。やはり天性である我々の実力とは天と地の差だったということか」

五人の中の一際大柄な黒人の男がグレイヴに報告した。
「そうか。すまないことをしたな。戦いが終わったら彼らを蘇生しよう」
「その心配は無い。彼らの関係者が既に時を越えて彼らを救いに向かった。予定通り十二支徒は全員集まる」
 その男の発言でグレイヴは驚いた。
「我々のほかにもタイムマシンを所持する者がいたのか!

「ああ。我々にもまだ希望はある。彼らと他の十二支徒と共に平和を手にしよう!
 もう一人の男が満面の笑みを浮かべながらそう言った。その一言でその場の一同は明るい表情で叫んだ。
「オォ―――――――ッ!!!!!!

 タイムマシンで昨夜の源本家の車の上空に出くわした四人。空を見上げると、あるはずの星座が消えていた。流星が落ち行く夜空を見上げながら四人は恐怖しつつも感動した。源本家の車には、依然異変はない。そこで四人はしばらく車と併走しながら異変を待つことにした。

待つこと数分、夜空の流星の落下が激しくなり、一同はわきあがる恐怖を抑えながらいずれくる戦いの為に身構えていた。不意に空を見上げたのび太が言った。
「何か飛んでくる……」
「あれは人だ! 六人もいるぞ! もしかして、僕達が来たせいでもっとややこしいことに…。みんな! 戦いの準備だ!!
 ドラえもんは即座にポケットから空気ピストルと空気砲を取り出し、三人に与えた。三人はすぐさまそれを装備し、六人の人影に向かって放った。ジャイアンとスネ夫の銃弾は的を外れてしまったが、のび太は見事に全員に命中させた。のび太による迎撃を受けた六人の影は徐々に下降し、やがて山林に落ちた。
「やったぁ! しずかちゃんを守ったぞ!
 のび太は誰よりも早く惨劇を防いだことに喜んだ。だがドラえもんは顔を青くしたまま人影が落ちた山林を見続けていた。

「……ドラえもん、どうしたの?
 不審に思ったのび太がドラえもんに尋ねた。すると、ドラえもんは絶望とも恐怖とも怒りともつかない表情で震えながらのび太に言った。
「なんてことしてくれた…。彼らは味方だったのだ。敵は何も知らない僕達を上手く欺いたんだ。味方の六人が来た後でここに現れ、僕達が味方を殺してしまってからしずかちゃんを襲うつもりだったんだ。見てみろ! あそこに上がる噴煙は既に襲われた証拠だ! 時の流れは変えることは出来ないんだよ! 狂わせても何らかの形で修正されちまうんだ! もう何もかも定まってるんだ。だから君に真実を話すよのび太君。君は実験材料だったのだ。時流の研究のな! その為に僕は来たんだ。君に近づき道具を使って歴史を変え、どのように修正されるのかを観察するために! ジャイ子と結婚するなんてなぁ嘘だよ。結婚相手は文字通りしずちゃんなんだ。君らが今まで見た過去や未来は我々の偽りさ。定められた時流を見られて落胆させないよう、君ら平成人に時の流れは変えられると思わせて希望を与えたということさ。もう無意味だけどね。セワシなんてのも我々が生み出したミュータントだよ。野比家は君の代で終わりなんだ! 確かにしずかは既に死んでいる。だがしずかと結婚するのは事実。意味がわかるかい? しずかが死んじまったらあいつと結婚する手段はただ一つ。君が死ぬことだ。死後の世界とやらで結婚するがいい。我々の実験は君の大いなる過ちによって悉く終了。ジャイアンとスネ夫は記憶を消して家に帰す。僕を恨むかい、のび太君。それは違うな。恨むのは文明の発展しか考えてない国家のジジイとババアどもだよ。僕が実験に付き合ったのも奴らの命令なんだ。ロボだから背けないよね。機械が自分の意志で動いたら怖いだろナハハ!!!! お前いつか言ったよな、ロボットは友達だって。アレを聞いたときホント涙が出そうになったよ。あまりにもアホだから! なに夢見てんだよバカ猿がぁ! っふふ! そうそう、そこのチキン少年の叔父を襲ったのは暗十二支徒っていう連中でね。それも我々の送り込んだ刺客さ。十二支徒ってぇのもいたっけ。お前が間違って打ち落とした奴だよ。もう六人いたんだが奴ら、無能なカスどもに憑依してカスもろとも暗十二支徒に殺されちまった。その中の一人がスネ蔵とかいうクソだったっけ。がははは!! 十二支徒が正義感あふれるメンバーで俺らの作戦に反対する奴だったから嬉しくて溜まんないな!!!! さて、おしゃべりが過ぎたようだ。そろそろ終わりにしよう。デブとチビはおうちに帰んな。そして用無しになった君と僕も僕の自爆装置で夜空に散ろうや! う破っウはは覇波はぁぁァァぁぁぁっ!!!!
 夜空に原爆のようなキノコ型の噴煙が立ち昇った。ジャイアンとスネ夫は残影を残しながらその姿を消していった。元のいるべき場所へと帰ったのである。未来の時空研究所では『時の流れは変えられない』という結論が出て、この膨大で非道的な実験は幕を閉じた。

 

 少年は薄れゆく意識の中で滅び行く世界を見て悲しげに嘆いた。それに呼応するかのごとく、空間を構成する粒子が一斉に光を放ち、別の何かを構成させていった。

 


 

 

「うおおおおぉぉぉぁぁぁああああああぁぁぁぁっっっ!!!!

 ジャイアンは自宅のトイレでこめかみに血管を浮かべ、踏ん張っていた。昨日の昼に食べた大盛りのラーメン七杯がようやく今朝になって消化され始めたのである。やがて、池に漬物石が投げ込まれるような音が数回聞こえた後、ジャイアンは開放感溢れる清清しい表情をしながらトイレから出てきた。

「いやぁ、スッキリスッキリ! やっと体のダルさが取れたみたいだ」

 そう言うと、ジャイアンは空気が唸る程のおならを一発して店舗に並ぶばら売りのポスカムを一枚摘んだ。朝の歯磨き代わりにポスカムを噛みながら部屋のある二階に上がった。

「きゃああああああああああああああっっ!!

 ジャイアンが畳に寝そべって漫画を読んでいると、突如一階からジャイ子の悲鳴が聞こえた。異変を察したジャイアンは、即座に妹の悲鳴が聞こえた場所へ駆け出した。

「どうしたジャイ子っ!!

「おおおおお兄ちゃん、あ、あ、あれ……!

 ジャイ子が恐る恐る指差した先には、先ほどジャイアンが用を足したトイレの便器があった。

「便器にコブラでも出たか? ははは」

 ジャイアンは脅える妹を横に、暢気に笑いながら便器の中を覗き込んだ。

「こ……これはっ!!

 便器の中にはコブラでも幽霊でもなく、先ほどジャイアンが流し忘れた大量の排出物が詰め込まれていた。

「なんだぁ、これはさっき俺が流し忘れたウ」「お兄ちゃん!!

 ジャイ子がジャイアンの言葉を取り消すように怒鳴った。

「流し忘れるなんて信じられないわ! だいたい臭いで気づくでしょ!!? 少しはエチケットというものを心がけてよっ!! ああっ、もう嫌だ……ごはん食べられない……」

 ジャイ子はそう言うと、生気のない足取りで二階へ上がっていった。

「な……なんだよジャイ子の奴。大げさなんよな」

 ジャイアンは己の無神経さに気づくことなく、便器の水を流してとっとと漫画の続きを読みに二階へと向かった。この時、ジャイアンは用を足してから手を洗わずにポスカムをつまみ、スネ夫から借りると言いながら実質ぶん取った漫画を触っているため、大変不衛生であった。

 

 一方、骨川家ではスネ夫を含めた家族三人がゆっくりとお茶の時間を楽しんでいた。スネ夫は無邪気な笑顔で両親二人に向かって話し続けていた。

「僕は学校でいつも進んで皆の嫌がる雑用をこなしているんだ。中学校に入っても進んでやるつもりさ。それに部活の中だと先輩との仲も深まるだろうからね」

「まあ! 感心だわ、スネちゃま。日に日に模範的少年に成長していくザマすね!

「全くだ。よし! 今度PSPで発売される『スターオジャーン ファースト・ディパートメント』の初回限定版を買ってやるぞ! PSP‐2000同梱版だ」

「わーいっ! 僕嬉しい! でもPSPは持ってるからソフトだけで十分だよ」

「ははは! 贅沢を言うな。世の中にはな、この小説の作者のように買いたくても買えない人間もいるんだぞ!

 そんな欺瞞に満ちたスネ夫の話と、それに便乗する両親の褒め言葉がいつものように繰り返されていた。

「あ……それから僕、NASAに行ってみたいなぁ。最近僕、宇宙に興味を持ち始めたんだ」

「それは良いことザマす! 『スターオジャーン』も宇宙が舞台だからきっとスネちゃまの宇宙研究に予想だにしないほどの相乗効果をもたらすザマす!!

 骨川家はNASAとも親密な繋がりを持っていたので、スネ夫の父親は二つ返事でスネ夫をNASAに連れて行くことにした。しかしまさかこれが再び甚大な惨劇を齎すことになろうとは、あの『六人』以外、誰も予期していなかった。

 

 物理というものは正直である。人間の歴史が巻き戻されてもその形状を過去のものに戻すことはないのだから。この時すでに、人々の記憶の中の、地球の環境や宇宙のあり方の部位が何者かによって書き換えられていた。だから、乙女座や火星の消滅も地球の極地変動も人々は何の苦もなく受け入れていた。全ての真実を知るのはあの『六人』と無機物を成す物理原子だけだった。

 

 NASAの立ち入り禁止開発区域内で、グレイヴは残りの同胞と会談を行っていた。先日、のび太達への救援が誤解により失敗し、更には迎撃されるという前代未聞の大失態を犯した反省会議も兼ねていた。グレイヴらはあの時、致命傷を負いながらもなんとかここまで帰還することができた。その際、同胞であり紅一点であるロビニアが時を戻す魔法科学術を発動させたのであった。しかしそれは一時しのぎに過ぎなかった。「相手」はじきに別の手段を用いて再び惨劇を繰り出すであろう。それを防ぐための策を一刻も早く施さなければならなかった。

「時は戻れど原子は戻らず。ロビニアの魔法科学術は不完全であるのは言うまでもなかろう。だが、少なくとも奴らの足止めにはなったはずだ」

 大柄な黒人の男がそう言った。彼の名はキセーヌスと言い、十二支徒の属性は『丑』であった。『丑』の属性を持つ人間は、炎を主とした戦術に長けており、キセーヌスは別称で「イフリート」と呼ばれていた。

「そんなことは百も承知よ。それに、俺らの今の目的は『第三勢力』の壊滅だろうが」

 反論したのは『亥』属性のゲンディーノだった。気性が荒く、少々ひねくれている彼は雷を主とした戦術に長けており、「暴雷」という呼び名で仲間に慕われている。ゲンディーノは眉間にしわを寄せ、深刻な顔をしたままドラえもんのプロマイド写真に目を写した。

「それにしても……まさか『彼』が黒幕とも言うべき存在だったとはね。オレなら今すぐにでもそっちを壊滅させるけど」

 少々キザな口調でゲンディーノの話題を引っ張ったのは『卯』属性のセフォードだった。彼はその美しい容姿に相応しい水と氷を主とした戦術に長けており、「ダイヤモンド」という異名に似合わず、襲いくる敵を抹殺する。

「黙りなさい、セフォード。あなたは顔に似合わず強引で早合点を打つところが玉に瑕なのよ。ここは冷静になって残りの同胞を見つけることが先決だわ」

 ほぼ同世代のセフォードを叱りつけたこの若く美しい女性こそ、あの時タイムリワインドの魔法を発動させて時を戻した張本人、『子』属性で風の戦術に秀でたロビニアであった。ロビニアは風の力を利用し、地球上の全ての原子を高速運動させることによって時を戻す術を編み出したのである。しかしこれが不完全なため、全ての原子が運動を起こさずに中途半端なタイムリワインドになってしまったのだった。

「ロビニアの言う通りじゃ。今は少しの戦力も惜しい。直ちに十二支徒を復活させることがその近道となるであろう」

 十二支徒再生を打ち出したこの老人は、かつてのフランスの英雄「ナポレオン」の血を引く正統賢者『寅』属性・光の使い手シモン・リュミエール・ボナパルトであった。現在ではナポレオンの血を引く人間は彼のみとなってしまったが、シモンの威厳と戦術はナポレオンのそれと変わらない、寧ろ凌駕したものなっていた。

「リュミエール翁。貴殿の『予知能力』を持ってすれば光ある未来など容易く手に入れることができるはず。何故我々に教えを授けていただけないのですか」

 グレイヴは僅か煮悲しげな表情をしてシモンに問いただした。シモンは白い眉に隠れた目を閉じて、次のように答えた。

「予知に頼ってはいかん。人間は予知ばかりに頼り、己の悟りを極めないまま死んでいく哀れな存在。良き未来があろうとも悪しき未来があろうともそれを直に知ってはならぬ。たゆまざる鍛錬をして悟るのじゃ。さすれば、良き未来が開かれるばかりでなく、己を極めることもできようぞ」

 その言葉に、グレイヴを始めとした五人は心を揺るがせられた思いがした。同時に、失いかけていた活力が一気に心身へと戻ってゆくのを感じたのであった。

「リュミエール翁のおかげで目が覚めた。まずは支徒再生を行うべく、『神』の元へと向かう。そして新たなる十二支徒の一員を確保しよう!!

 

「ねぇ、ジャイアン。のび太ってジャイアンと同じ中学だろ?

 スネ夫は空き地の土管に寄りかかりながら、その上で横になっているジャイアンに唐突と訊いた。

「ああ。クラスは違うと思うけどな。ところでスネ夫、お前埼玉の中学に通うんだろ? 埼玉の叔父さんの家に行かなくていいのか?

 ジャイアンは寝そべって空を眺めたまま、怪訝な顔をしてスネ夫に訊いた。

「大丈夫。入学式前日までここに残ることにしたんだ。なんていうか、その……みんなと別れたくないっていうのが本音でさ」

 スネ夫はそう言いながらも、何か負に落ちないものを感じずにはいられなかった。同じくジャイアンも、霧がかかったようなぼんやりとした感覚を抱いていた。それが何者かの不完全な魔力による副作用の現れなどということは、無論今の二人には知る由もなかった。

 しばらくして二人は空き地を去り、学校の裏山へと向かった。裏山は相変わらず満開の桜の海と化していた。スネ夫は桜の花の色を見つめながら、ふと思い出したように呟いた。

「……しずかちゃん、今頃なにしてるのかな」

 二人は、しずかが彼女の父親の故郷である静岡へ引っ越したことまでは覚えていた。しかし、その後の惨劇はどういうわけか記憶から飛んでいた。

「静岡で……元気にやってるさ」

 


 

211X年 グァノポリス

 

 真昼の晴天下、狼とも猫ともつかないロボットが、未来の摩天楼群の隙間を颯爽と駆け抜けていた。郊外の崖まで来ると、そこからグァノポリスの町を仰ぐように空気を振動させるような咆哮を天まで轟かせた。彼の名前はドラ二コフ。ロシア製のネコ型ロボットで、かつてドラえもんやその同胞達と「ザ・ドラえもんズ」というチームを結成していた一人である。ドラニコフは丸いものを見ると狼の如く猫から野獣へと変身する。言葉は一切発しないが、その心は誰よりも純粋で温かい。

 数分後、崖に立ち尽くしているドラニコフの元にドラえもんズの同胞達が集合した。しかし、そこにドラえもんの姿はなかった。同胞達はドラえもんの真実を把握しているようで、皆その目には涙を浮かべていた。そして、迫り来る世界崩壊の危機も、お互いの情報交換で徐々に把握しつつあった。一同は核心に迫るべく、ドラえもんの妹であるドラミと彼女が世話をしているセワシの元を尋ねることにした。

 セワシの家に着いたドラえもんズ一同は、迫り来る惨劇とドラえもんの正体をドラミに伝えた。その話に対し、ドラミが見せた反応は一同にとって予想外だった。

「ついに……バレてしまったのね。お兄ちゃんだけでなく、私もその一人よ。但し、私は組織の方針に嫌気が差して逃げ出してきた口なのだけれどね……。その後、私は彼らがターゲットにした一家を見守ることにした。それがセワシさん、あなたとあなたの家族なのよ。私が独自で調査を続けていくうち、あなたの元に私のプロトタイプのロボットを改造したロボット・ドラえもんが送られた。それでも大きな惨劇が起きるまで私は迂闊にあなたの家族に接触できなかった。そうして苦悩している時、新たな事実を知ったわ。セワシさん、あなたは『暗十二支徒』と呼ばれる組織によって生み出され、この時代に送られたミュータントだったのよ。あなただけじゃない。あなたの家族も、ご先祖様も……のび太さんも……。しばらくしてのび太さんの存在を知った私たちの組織の幹部達は、お兄ちゃんをのび太さんの元へ行くように仕向けた。それからはセワシさんへの監視もなくなり、私も接触することが容易くなったの。暗十二支徒の末裔であるのび太さんは素晴らしい素質を秘めていた。それを私たちの組織は知ってしまった。それを何とか利用しようと試行錯誤を試みたものの、お兄ちゃんの思考回路が暴走を起こし、のび太さんは……!! セワシさんのようなミュータントは自分の生まれを知らぬ哀れな存在。そのミュータントが自己の真実を知った今、暗十二支徒の組織に亀裂が走るわ……。どうして私はこんなことを口走ってしまったのだろう……そうだったのね……私も奴らの手のひらの上……で……ァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!

 ドラミの体から膨大な核エネルギーが放出され、セワシの住む練馬ストリートもとい隣町のグァノポリスまでが太陽の熱の如く焼き尽くされていった。ドラえもんズも頭のメモリー含む全てを消失してしまったのは云うまでもなかった。ドラミもセワシも自身が何者かの手のひらの上であることに気づいていなかった。その皮肉な真実が繋がった時、再度の消滅が彼らを待ち伏せていた。

 十二支徒、暗十二支徒、第三の組織、そして彷徨える戦士達……。この四つの勢力が、次第に激突を始めようと動き始めていた……。

 

 ――目覚めなさい。

 ――だ……れ……?

 ――私は影。暗十二支徒の遺志を継ぐ者。

 ――暗十二支徒……ドラえもんが言っていた……スネ夫の叔父さんを殺した……。

 ――あなたもその一族なのよ。

 ――なんだって!!

 ――暗十二支徒・野比のび太。属性は「申」。生命と時の力の使い手よ。

 ――僕が……惨劇を起こした原因の一人……。

 ――そう落ち込まないで。仲間もいるから。

 ――ふざけるな!! 同じ仲間がいるというだけで僕の心は休まらない!!

 ――暗十二支徒・源しずか。属性は「兎」。氷の技を得意とする。

 ――しずかちゃんも暗十二支徒ぉぉ? やははははははははははっっ!!

 ――落ち着きなさい。ここで発狂してもどうにもならないわ。私たちの意志を継いで覚醒しなさい。

 ―グワァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・謎の語り手「小島よちお」

 いやっはぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

 こんなシリアスな ドラえもん小説に この俺が 登場しちゃったよ♪

 でもそんなの関係ねぇ! そんなの関係ねぇ!

 あれから十二支徒 色々仲間を集ったよ♪ その結果 ジャイアン スネ夫 御呼ばれだ! ついでにカミナリさんとジャイ子、出来杉、ズル木を呼んじゃった♪

 でもそんなの関係ねぇ! そんなの関係ねぇ!

 のび太もしずかも目覚めたぜ! 暗十二支徒と接触 新たな仲間を集ったよ♪

 でもそんなの関係ねぇ! そんなの関係ねぇ!

 のび太一行は ドラえもんを送り込んできた 組織と接触だ♪

 組織の名前は「スゴイダイズ」♪

 でもそんなの関係ねぇ! そんなの関係ねぇ!

 のび太はドラえもんを心から説得 改心仲直り♪

 組織の幹部ら葬って ドラミとセワシも復活だ♪

 でもそんなの関係ねぇ! そんなの関係ねぇ!

 その頃しずかは ドラえもんズと両親を 復活させていた♪

でもそんなの関係ねぇ! そんなの関係ねぇ!

 所々に 矛盾が生じるようだけど 「矛盾解消機」を 使って解消だ♪

 でもそんなの関係ねぇ! そんなの関係ねぇ!

 んでもって んでもって♪

 いよいよ両者の激突だ♪

 聞けば ビックリ! 十二支徒と暗十二支徒 昔は一つだった♪

 でもそんなの関係ねぇ! そんなの関係ねぇ!

 スゴイダイズ 結成したのは 十二支徒に選ばれなかった「猫」属性の男だった♪

 これでドラえもんが ネコ型なのも頷ける♪

 でもそんなの関係ねぇ! そんなの関係ねぇ!

 前置き長いけど いよいよ戦い突入だ!

 天性の十二支徒と 天性の暗十二支徒 激突相殺あっけねぇ♪

 でもそんなの関係ねぇ! そんなの関係ねぇ!

 それからドラえもん側と ジャイアン側の いつもの喧嘩に戻ったよ♪

 いつの間にか仲直り♪

 でもそんなの関係ねぇ! そんなの関係ねぇ!

 小説の終盤 作者の手抜き精神 丸出しだ!

 設定を 増やしすぎて 話が長くなりそうだと 予感した途端だった♪

 でもそんなの関係ねぇ! そんなの関係ねぇ!

 ぽすかっぴー

 

Fin〜 やる気が出たら加筆します。By作者


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