序章

2005年7月7日、都内某所・・・

そこでは星を見る会が行われていた。星好きの人や親子連れが星を見ている。
「ほら、あれが夏の大三角形よ。」
その日はとても天気が良いうえ、明かりの少ないところなので、結構星が見える。
ヒューン
流れ星だ。しかも1つだけではなかった。
ヒューン・・・ヒューン
いくつもの流れ星がいろいろな方向に現れたのだ。流星群が見られる日でもないのに・・・。
「なぜこんなにもたくさんの流星が・・・。」
「星を見る会」の主催者は驚いていた。
 
翌日、のび太たちの学校・・・
いつもの4人+出木杉は昨晩の流星群の話をしていた。
「不思議なんだ。突然あんなに大量の流星が、しかもバラバラの方向に現れるなんて・・・。」
出木杉のいうとおり、これは実に不思議な出来事なのだ。
「何でそんなことが起こったんだよ。」
ジャイアンが聞いた。
「さぁ、それは僕も解らないよ。」
出木杉も知らない。
「ねぇ、ドラちゃんなら何か知ってるかもしれないわ。」
しずちゃんが言った。
「そうだね。帰ったら聞いてみるよ。」
 
のび太はここ3日間連続で居残りさせられていたが、今日は大丈夫だった。
「ドラえもーん!」

第1章 時空間通信障害

「え、あの流れ星?そんなの解らないよ。何で僕なら解るのさ?」
ドラえもんが言った。ドラえもんも知らないのだ。
「まぁ、でも記録ぐらいは残ってるだろうから、調べればでて来るんじゃない。」
そう言うとドラえもんは『宇宙完全大百科』を取り出した。
「えーと、“2005年7月7日午後9時27分に発生した流星群”と。」
ピピーッ・・ピー・ピピー・・・ピーピピピーピ・・・
結果がでた。
[NO DATA]
「そんなバカな!?」
ドラえもんは驚いた。何せ宇宙完全大百科にデータが無いというのだから。
「国際情報通信局へ問い合わせてみよう。」
ドラえもんはタイム電話を取り出し、電話をかけた。
ピッピッピッ・・・ガガガ・・・ガーッ・・・ガ・ガガ・・・・ットコカカコカ・・・・・・
かからない。
「時空間通信障害か・・・。」
時空間通信障害。何らかの原因で時空を越えた通信が出来なくなってしまう現象で、「コカカコカ」といった音がするのが特徴だ。大規模な時間犯罪が行われたときに発生することがあるが、極めて稀である。
「え、何?それってもしかしてギガゾンビとかキャッシュみたいなやつがなんかやったってこと?」
のび太が聞く。
「いや。それは解らない。でも昨日の流星群といい、それが記録にないことといい、時空間通信障害といい、何かが起こっていることは確かだ。恐ろしいことかもしれない。普段の大長編より展開が早いけど。」
そうドラえもんが言った。その時、
「のびちゃん、ドラちゃん、おやつよ。」
ママが呼んだ。2人は下へ降りた。今日のおやつはどら焼きだ。ちょうどその時、ワイドショーで昨日の流星に関するニュースをやっていた。
【エー、昨日の、流星に関する最新ニュースです。実は、あれは流星ではないのではないか。ということなんですが・・・。ほんとなんですかねぇ・・・。流星でないとすればいったい何なのでしょうか。・・・・・詳しい情報が入り次第、またお伝えします。】
「流星じゃないなら、いったい何なんだろうね。」
その日の夜は風が強かった。
「のび太君、また遅刻するから、いつまでも起きてないで、寝なきゃダメだよ。」
ドラえもんが言う。
「わかったよ。でも明日は土曜日だから休みだよ。」
のび太は電気を消して布団に入った。

第2章 襲来

その日、みんなは空き地にいた。
「ねぇ、ニュース見た?あれ、流星じゃないらしいよ。」
スネ夫が言う。
「そうなんだ。何でも、流星とは光り方が違うんだって。」
出木杉が言った。
「へぇ〜。よくそんなことがわかんだな。」
みんなは流星?の話で盛り上がってる。普段ならこういう話はちらっとで終わってしまうのだが。
「ところでさ、のび太。昨日ドラえもんには聞いたのかい?」
スネ夫が聞いた。
「それが、『宇宙完全大百科』で調べても載ってなかったんだ。『宇宙完全大百科』は知ってるでしょ?」
そう、「宇宙完全大百科」は以前、ジャイアンたちが草野球の結果でもめたとき、使ったのだ。草野球の結果も残ってるんだから、ニュースにもなる流星群が載ってないわけない。しかし、載っていなかったのだ。
「載ってないなんて変だなぁ。間違ったんじゃねぇのか?」
ジャイアンが言ったが、
「それはないよ。日付も時刻もニュースで言ってた通りだし。それともう一つ変なのは、どうも昨日から未来と連絡が取れないらしいんだ。時空間何とかって言う現象なんだって。時間犯罪が行われてるときにたまに起こるんだって。」
とのび太が言った。
「おーい!」
ドラえもんがやってきた。なんだか慌てている。
「たぃ・・たぃ・・・たぃへんだ・・・・!・・・はぁはぁ・・・」
「どうしたのさ、ドラえもん。」
のび太が聞いた。
「さっき、のび太君の机が爆発したんだ。」
「えぇぇぇぇーーーーーーーーーーっっ!!」
「どどどどういうこと!?いったい何で!?」
みんな驚いた。
「どうも時空間の乱れが原因らしい。引き出しの中にタイムマシンがあるでしょ。でもあれは正確に言うと、引き出しの中にタイムマシンがあるんじゃなくて、引き出しの中にタイムホールがあって、時空間の中にタイムマシンが止めてあるんだ。つまり時空間の乱れによってタイムホールの存在が不安定になり、次元震を引き起こしたんだ。」
ドラえもんが説明する。
「次元震ってたしか鉄人兵団が地球に攻めてくるまえに、裏山で起こったあれ?」
のび太が聞いた。
「そう。ただ、あのときよりは大分規模が小さいけどね。そうでなけりゃ、家ごと吹っ飛んでた。やっぱり何か起こってるんだよ。そうでなけりゃ、あんなこと起きないもの。」
何かが起こっている。その何かがとんでもないことだとは、そしてそれがもうすぐ起きようとは、誰も考えてはいなかった。
6人(ドラえもん、のび太、しずか、ジャイアン、スネ夫、出木杉)は、のび太の家へ向かった。のび太の机は無惨に吹き飛び、バラバラになっている。そして窓は割れ、畳と壁は焦げている。幸いにも、ママは買い物に出かけていて、いなかった。
「ママが帰ってくる前に直さなきゃ。ドラえもん、タイムフロシキ。」
「いや、それはダメだ。タイムフロシキも一種のタイムマシンだから、時空間が乱れている今は使えない。」
そうドラえもんは言った。ちなみに復元ライトはそれとは違う原理なのだが、あいにく修理に出している。
「しかたがない、何とかごまかそう。」
そう言うとドラえもんは何かを取り出した。
〈立体映写機〉
立体映写機のスイッチを入れた。すると、いつもと変わりない、机も元通りの状態になった(様に見える)。
まぁ、これでどのくらいごまかせるか。そう長くはないだろう。何せ机に向かえないのだから。
「良いか。明日、日が昇りきったとき、一気に襲撃だ。地球人は大混乱に陥るだろう。この星の科学力はそれほど進んでいないようだが油断は禁物だ。気をつけるように。」
その日の夜・・・
「何とかごまかせたね。」
のび太が言う。
「まぁね。でもやっぱり早く直さなきゃ。時空間が早く元に戻ると良いんだけど・・・。」
そして二人は眠りに入った。
ズドーン!!
突然の大きな音でのび太は目をさました。ドラえもんもだ。おそらく、今の音で町内の殆どの人が起きただろう。それくらい大きい音だった。
「ななななんだい!今の音は!?」
ズドーン・・ドドドーン!!!
まただ。時刻はまだ4時40分をちょっと過ぎた頃だが、今や町内で寝ている人など何処にもいない。
ズ・・ドカーン!!!!
これまでで一番でかい音だ。悲鳴も聞こえる。どうやらただ事ではないようだ。
「急いで避難しなくっちゃ!のび太君、緊急避難場所は?」
「学校!!」
学校は町内の人でごった返していた。ふとドラえもんが上を見上げるとなんとUFOが砲撃しているではないか。しかも1機だけではない。50機、いや100機はある。それがこの町の近くにいるのだ。距離にして8キロ程度、すぐにでも砲撃されそうだ。
(このままじゃかえって危ないな。何とかしなきゃ。時空間の乱れは直ったか。もし悪化してればこのポケットも使えなくなるはずだから大丈夫かな。・・・そうだ!あれなら時空間とは独立してるから・・・。)
〈壁紙秘密基地〉
〈コピーミラー〉
ドラえもんは壁紙秘密基地をコピーライトで256枚に増やした。
そのあとドラえもんはミニドラを取り出して、増やした基地を貼ってくるように言った。
「みなさん、聞いてください。」
どこからか持ってきた拡声機で町内のみんなに呼びかける。一方その町内の人はUFOの存在に気づき、パニックになっている。
「みなさん、聞いてください!」
ドラえもんはもう一度、さっきより大きい声で言った。
みんなが黙ってドラえもんを見つめる。聞こえるのはUFOがドッカンドッカンやってる音だけだ。
「みなさんもUFOにお気づきでしょう。このままいてはあれに狙い撃ちされるだけです。校舎の至る所に大きな入り口があるのがわかるかと思います。みなさんはあの中に、慌てずに、均等に、避難してください。全部で256あります。」
ドラえもんは慌てずにといったが、皆、我先に、と逃げ込むので、ずいぶん時間がかかった。それでも、奇跡的に、UFOはやってこなかったし、誰も怪我しなかった。
のび太やドラえもんは、しずか、ジャイアン、スネ夫、出木杉と同じとこに入った。
「いったい何なんだい、あのUFOは。」
のび太が言う。
「わからない。どうやらあの攻撃で都心は壊滅状態だって。他にもUFOは世界各地に現れたみたいで、ニューヨークやパリ、ロンドンの他、ソウルやシドニーもやられたみたい。」
「大変な被害じゃない。」
5人が言う。
「そしてもう一つ、言わなくてはならないことがある。未来が変わったんだ。」
未来が変わった。それがどういうことなのか、いまいちピンとこなかった。このことにいち早く気づいたのは、やはり出木杉だった。
「つまり・・・、ドラえもん君が消えてしまうってこと?」
ドラえもんがうなずいた。
「なんだって!!」
みんな驚いた。特にのび太のショックは大きいようだ。
「どういうことなんだよ、ドラえもん!」
のび太が迫る。ドラえもんは話した。
「言っただろう、未来が変わったって。つまり、僕が産まれる未来が消えたんだ。僕はいずれ消える。計算ではあと611043.4937秒後だ。7日ちょっとさ。
「7日ちょっと・・・そんな・・・ドラえもん!!!」
暗い空気に包まれる。
「何とかならないのかしら。」
しずちゃんが言う。
「あのUFOをやっつけて、時空間の乱れも直せれば、何とかなるかもしれない。でも・・・。」
ジャイアンは話を最後まで聞かずに、出ていってしまった。そして、無謀にも、素手で、UFOに向かったのだ。だが、相手は宙に浮かぶ鉄の塊、生身の人間であるジャイアンの攻撃が効くわけない・・・というか飛んでるのだから攻撃できない。ジャイアンがそのことに気づいたときはすでに遅かった。ジャイアンは都市を襲った光線とは別の光線を受け、消えた。
「そんな・・・・・・。」
「ジャイアーン!!」
「たけしさーん!!」
「たけしくーん!!」
返事はない・・・。ジャイアンは・・・あの光線を受け、消滅してしまったのだ。まさか・・・ジャイアンが・・・・・・・。
「そんな・・・ジャイアンが消えちゃうなんて・・・。」
のび太たちは呆然と立ちつくしていた。ふだんは乱暴で、何事も自分中心で考えるいやなガキ大将。人間が発するものとは思えない酷い歌のくせにリサイタルを開き、その度にみんなが迷惑している。あの歌声を素晴らしいと言ったのはドラえもんの長い歴史の中でもたった一人だけだろう。みんな一度は、あんなやついなければいいと思ったことがある。そんなジャイアンも、本当は妹思いの優しいやつ。情にも厚く、友のためなら命を惜しまない。ジャイアンも良いところはいろいろある。そんなジャイアンが消えてしまったのだ。
「そんな・・・、まさか・・・、たけしくんが・・・・・・。」
普段は冷静な出木杉でさえ、このことには困惑している。
「死んでしまうなんて・・・。」
「まだ死んだと決まった訳じゃない!!ジャイアンが・・・そんなことで・・・死ぬわけが無いじゃないか。あのジャイアンだよ!!」
スネ夫の言葉にみんなははっとした。
「そうだ!!ジャイアンは生きてる!!」
のび太が言った。と、その時ドラえもんが切り出す。
「確かめてみるか。・・・・いやでも・・・・・もし・・・・・・。」
「ドラえもん、道具を出すなら出してよ!!」
みんなの気迫に圧倒され、ドラえもんは、まるとばつをかたどったものを取り出した。
〈○×占い〉
「前に使ったことあるよね。この占いの的中率は100%。」
「でも・・・もし・・・。」
スネ夫が何か言いたそうだ。それをしずちゃんが遮る。
「何言ってるの。たけしさんが死ぬはず無いって言ったのはあなたじゃない。」
ドラえもんは○×占いを使った。
「たったいま、この宇宙に、異次元空間も含めて、ジャイアンこと、剛田たけしは生きているか。」
一瞬の沈黙。それがみんなにはとても長い時間に感じられた。そして○×占いが結果を出す。

第3章 旅立ち

ピンポーン♪
その音とともに、○×占いの○の方が宙に浮かぶ。ジャイアンは生きているのだ。みんなの顔に、笑顔が灯る。
「ジャイアンは・・・・、生きている!!!」
「今すぐに助けに行こう!」
のび太が張り切る。
「待って。手がかりもないのに、どうやって助けにいくのさ。」
ドラえもんが言うことももっともだ。手がかりがない。助けに宇宙へ行くのであれば、宇宙救命ボートが使える。しかしながらそれには手がかりが必要なのだ。
本当は都心といった被害の大きなところのほうが手がかりがある可能性は大きいのだが、危険すぎる。どこでもドアだって使えない。とりあえず、ジャイアンが消えた辺りを調べることにした。
しばらくの間、手がかりと呼べるものは何一つ見つからなかった。やはり危険を冒して都心に行くべきか。そう考えているとき、出木杉が何かを見つけた。
それは異様なほどに黒い石だった。本当に黒い。まるで光を全て吸収してしまうような石だ。つるつるしているが光沢はない。しかし、これは手がかりだ。ドラえもんは、遂に「あれ」を取り出した。
〈宇宙救命ボート〉
みんなはすぐさま乗り込んだ。ドラえもんは、出木杉が見つけたあの石を、探知ユニットへ入れ、発進ボタンを押した。救命ボートはすぐに宇宙へと出た。幸いにも、あの恐ろしいUFOは去ったあとだ。のび太は言った。
「ねぇ、このボートって戦えるの?」
ドラえもんは首を横に振った。
「無理。アニマル惑星の時にも言ったでしょ。これは戦闘用じゃないんだ。あくまでも『救命』だからね。攻撃を受けたらひとたまりもないよ。」
「そんな・・・。ママーー!」
出た、スネ夫の口癖「ママ」が。スネ夫は怖くなったとき、これを言う。臆病なのだ。普段はのび太の方がもっと臆病なのだが、大長編になると、人が変わったようにに勇敢になる。そのため、スネ夫の臆病なところが目立つのだ。
「スネ夫、しょうがないよ。もう乗っちゃったんだから。それに、ジャイアンを助けるためなんだ。」
本当にのび太は人が変わったように勇敢になった。出木杉がドラえもんに聞く。
「ねぇ、目的地まで、あとどれくらいかかるの?」
ドラえもんは答えた。
「そうだね・・・。船内時間で言うと、あと・・・、13時間後くらいじゃないかな。地球時間で言ったら、・・・うーん・・・32時間かな。本来なら時差自動修正機能がはたらいてズレは出ないんだけど、今回は乱れのせいでそれが使えないんだ。僕が消えてしまうまでの時間は、地球時間で、だから、目的地についたら・・・あと・・・、6日弱で、ジャイアンを助けて、乱れの原因を見つけ、正し、未来を直さなくてはならない。もし、未来を直すのが地球でなきゃ無理だとすると、さらに地球まで帰る時間も計算に入れないといけない。つまり、実際は4日半で全て終わらせなくてはならない。」
4日半。たったそれだけの期間にいろいろ済ませなくてはならないのだ。無理難題である。というか不可能だ。
「無理だ!そんだけの時間で、できっこない!」
のび太が叫んだ。そのあとに出木杉が言った。
「のび太君、君たちはこれまでいろいろ、無理だということをこなしてきたそうじゃないか。僕はそんな目にあったこと無いけど、君はある。のび太君、希望を持って、君は僕なんかより、いろいろな冒険をしているんだ。そんな君が、弱音を吐いてどうするんだい?そしたら冒険したことのない僕なんかとっくに泣き崩れてるよ。」
確かに、のび太はこれまでいろいろな敵と戦ってきた。未来の恐竜ハンター、遙か宇宙彼方の殺し屋、海底の自動報復システム、魔王、独裁者、鉄人兵団、時間犯罪者、数えればきりがない。そう、のび太は出木杉よりも多くの戦いを経験している。そんなのび太が出木杉よりも先に弱音を吐くとは。のび太は自分が情けなかった。
ビッビーーッビーーーー
突然大きな音がした。
「たったたたた大変だー!!」
ドラえもんは、そのただでさえ青い顔を、より一層青くして叫んだ。
「敵が攻めてきた!!」
「なんだって!?」
みんなは驚愕した。しかし、それはまぁ、ある程度は予測できたことだ。地球からワープ、それも不安定なワープを繰り返して、船内時刻ですでに10時間が経過し、もう地球より目的地の方が近いのだ。敵の本拠地に行くのだから、敵がいつ攻めてきてもおかしくない。ドラえもんはまず、あるものを取り出した。
〈テキオー灯〉
ドラえもんは、4人(のび太、しずか、スネ夫、出木杉)にテキオー灯の光を浴びせた。これで、宇宙空間も大丈夫だ。続いて、ドラえもんは武器を出す。・・・・・?
「そんな強力な武器を持ってるわけないだろ!」
ドラえもんは叫んだ。
「突然のことなんだ。こんな相手に空気砲やショックガンが効くわけもない。そんな強力な武器なんか用意してない。」
「とにかく逃げろー!!!!」
救命ボートの隠しボタンを押すと、ボートは急激にその速度を増した。刹那、さっきまでボートがいたところが砲撃された。間一髪。ボタンを押していなければ、ここで物語は終わっていただろう。
「目的地にも、僕らの味方になってくれる人たちがいるかもしれない。」
そう、もしこのUFO群が独裁者か誰かによるものだとすれば、それに反抗しているものもいるはずだ。もっとも、そうだという確証はない。それどころか、その星の者全員が同じ様な奴らだとも考えられる。いや、その可能性が高いだろう。とにかく、ここにいつまでいるのもしょうがない。一か八か、降りてみることだ。到着までの2時間、何とかUFOを逃れ、目的の星へ到着した。

第4章 タノア星

穏やかな着陸ではなかった。着陸というよりも墜落といった方が近い。救命ボートは、目的の星についた。
救命ボートは衝撃で、おそらく壊れてしまっただろう。もう後には引けない。残り4日、急がなくては。
『墜落』から30分経ったが、のび太たちが出てくる様子はなかった。気絶しているのだろう。そんな時間の余裕など無いのだが……。
そして40分が経過した頃、ようやく気がついたのか、ドラえもんたちは救命ボートから出てきた。
「みんな、大丈夫?」
ドラえもんが言った。
のび太達は傷だらけで、とても大丈夫には見えなかったが、それでも、「大丈夫」と答えた。
本来、このような星に、生身で、何の調査も無しにいきなり外へ出るのは危険極まりないことだが、救命ボートによる警告はなかったし、テキオー灯の光も浴びていたので、問題はない。それに、どうもこの星の大気の成分は、地球と全く同じのようだ。
「みんな、気をつけて。近くに敵がいるかもしれない」
そう言うとドラえもんは、毎度おなじみの武器を取りだした。
〈空気砲〉
〈ショックガン〉
〈ひらりマント〉
〈アタールガン〉
ドラえもんは空気砲、しずちゃんはひらりマント、のび太と出木杉はショックガンを、そしてスネ夫はアタールガンを、それぞれ持った。
しかし、その時すでに、5人の背後には、何者かがいた。
みんなは気づいた。そこには、地球人とほぼ同じ体型だが、腕が4本もあり、頭が地球人の1.5倍くらい大きい、この星の「ヒト」がいた。
みんなは叫び声をあげようとした。……ところが、
なんと、あっちが先に叫び声をあげたではないか。そして、この星の「ヒト」は倒れた。気絶したようだ。
「気絶したみたい」
ドラえもんが言う。
「ねぇ、どうする?」
「気絶したってことは、敵じゃないんだよ。放ってはおけない。手当しなくちゃ」
と、のび太が言ったが、
「わかんないよ。もし、気絶したふりをしているんだとしたら?敵じゃないだなんてどうして言えるのさ。もし手当しようとして、やられちゃったらバカみたいじゃない」
人一倍疑り深いスネ夫が反論した。
確かにスネ夫の言うことももっともだ。気絶したふりをしているのかもしれない。そうでないとしても、敵ではないという確証はない。しかし、敵だという確証もない。
「骨川君の言うことももっともだけど、今は何か情報がほしいんだ。もし、敵だとしても、頭を多少なり打ったみたいだし、そこらへんが地球人と同じかどうかはわからないけど、しばらくは攻撃できないんじゃないかな。もしかしたら何か聞き出せるかもしれないし、僕らの味方になってくれるヒトだったら、もっといろいろなことがわかるかも」
出木杉が言うので、みんなは手当をすることにした。といっても、何せ地球人ではないので、いったいどこが悪いのかさっぱりだ。結局手当なんか出来ないので、とりあえず、この人が目覚めたときのために、みんなは『ホンヤクコンニャク』を食べた。
しばらくすると、ヒトは目を覚ました。みんなに緊張がはしる。ヒトは再び叫んだ。まぁ、あっちから見れば、頭が小さく、腕が2本しかない人がいるのだから当然だろう。そのヒトは落ち着きを取り戻した。
「い、いったい何なの、あなた達は」
どうやら敵ではないようだ。そこで、出木杉がこれまでのことを話した。
「そうだったの。わかった。協力するわ」
話し方から、女性だとわかった。
「ここで話すのもあれだから、家にいらっしゃい」
さすがは出木杉。さっきまであんなに叫んでいたヒトは、今や気軽に話しかけてくれている。出来杉の説得がよっぽど上手かったのだろう。
この星の家はドーム型のようだ。何で出来ているのだろうか。不思議な壁だ。
「まだ名前を言ってなかったわね。私は『コミアン』、よろしく。そして彼が、私の恋人の『フィルアス』よ」
「フィルアス」は、まだ信じられないという顔をしている。やはり、見た目の違いからだろう。腕が2本しかない知的生命体と出会うのは初めてらしい。
のび太達も、それぞれの自己紹介をした。コミアンは、5人それぞれと握手をした。この星にも、『握手』の習慣があるのだ。フィルアスは、コミアンの耳元で、
「大丈夫か、あいつらはたぶん、『ディルヴィアス』が狙っている、『地球』とかいう星のヒトだろう。そんなやつをかくまったりしたら、俺達が危ない」
「あの人達のことは話したでしょ。友人がさらわれたって。たぶん、『ディルヴィアス』の仕業よ。あの人達の星を攻撃したのもね。私たちだって『ディルヴィアス』には反対してるんだから、元々命を狙われてるのよ。わかってるでしょ。それにこれは『ディルヴィアス』を倒すチャンスかもしれないの」
そしてコミアンはドラえもん達に、この星のことを話した。
「この星は、タノア星というんだけど、300年くらい前から、『ディルヴィアス王家』が治めているの。今の王は『ディルヴィアス9世』で、国民の願いを叶えてくれる、国民想いの良い王だったの。ところが、半年くらい前から、突然人が変わったように、自分勝手な政治を行うようになったの。理由はわからないけどね。自らに反対するものは次々と死刑にしていった。それまでは反対の意見もよく聞いて、より良い政治を行おうとした君主の鑑とも言えるような人がよ。そこで、私たちは『ディルヴィアス9世』の今の政治に反対する活動を行っているの。死刑にされることを覚悟でね。昔のような国王に戻ってほしい、と。でも効果はないわ、いまのところね。私たちは危うく、殺されるとこだった。そして2週間前に、彼は『王国議会』で、『国土拡大法』を可決させた。賛成189、反対0でね。当然、議会は王のいうがまま。この法律は国土拡大のために他の星を侵略しようというもので、これを根拠に、あなた達の星、『地球』を攻撃したわけ。地球だけじゃないわ。地球を含めて、ヒトが住む星を同時に5つ、攻撃したの。あなた達の友人は、生きた地球人の研究材料として連れ去られたんでしょうね。他にも、死体や何やらを運ぶのが見えたわ」
コミアンの長い話を、みんなは一言も聞き逃さずに聞いた。
話によると、どうも敵の大将はこの星の国王らしい。
「そんな、国王が相手だなんて、勝てっこない!」
スネ夫が騒いだ。
「何言ってるの、スネ夫さん。ピリカ星でも、独裁者をやっつけたじゃない」
しずちゃんが言った。
それでもスネ夫は「あのときは相手が豆粒のように小さかった。今回は違う」というのだ。確かにあのときは相手が小さかった。しかし、自分たちだって最後の頃までは小さくなっていたではないか。確かに、最後、元の大きさに戻ってから、一気に形勢が逆転し、それによって独裁者を倒したが、小さいときだって何百何千の数で攻めてきた無人戦闘艇を見事やっつけたのだ。それならば今回だって勝ち目がないわけではない。
スネ夫もようやく覚悟を決めた。
「わかったよ。ジャイアンを助けるためだ。あいつは普段、僕のものを取り上げて返してくんないしさ、珍しく返してくれたと思ったら、壊されてたりさ、この世のものとは思えない酷い歌を無理矢理聴かせるしさ、でも、あいつは本当は……本当は……情に厚い、良いやつなんだ」
「さっきジャイアンが『生きた地球人の研究材料』にされたって言ってましたが、ジャイアンは殺されてしまうのですか!?」
ドラえもんが聞いた。
「それはわからない。俺はディルヴィアスではないから。ただ、その『ジャイアン』という君の友人の言動が生死を分けることになるのではないかと思う。全ては『ディルヴィアス』の気分次第ってわけさ。どちらにせよ、長く生きていられるとは思わない、早めに助けた方がいいだろう」
とにかくもう時間がない。急いで出発しなくては。しかし、みんなは地球を出たときから一睡もしておらず(到着時の気絶をのぞけば)、体力は限界に来ている。このまま行けば、あっさりとやられてしまうだろう。今や1秒でも惜しいとこだが、そのためにやられてしまっては意味がない。
ということで、5人は一旦休息をとることにした。寝る場所はコミアンとフィルアスが用意してくれた。
「寝る場所まで用意してくださって、そのうえ、ジャイアンの救出にも協力して下さるだなんて、ありがとうございます」
ドラえもんがコミアンとフィルアスに言った。
「お礼だなんて別にいいんだ。こっちだって君たちには期待している。友人を救出するためにこの星まで来たわけだからね。何か秘策があるんだろう?」
フィルアスの問いにドラえもんは困った。秘策など何もないからだ。ドラえもんはとりあえず、「ええ、そうですねぇ」といっておいた。
「ねぇ、ドラえもん、ディル何とかって強いのかな」
のび太が聞いた。
「ディルヴィアスだよ、のび太君。ディルヴィアスがどのくらい強いかはわからないよ。でもたぶん、かなり強いんじゃないかな」
タイムリミットまであと3日……
【あとがき】
まだまだ続きます。12、3章くらいまで書くつもりです。大変ですががんばります。第5章のタイトルは『再会』です。
ただ、あまり期待はしないで下さい。
ちなみに、コミアンのフルネームは『ラルフィア・フェイ・コミアン』で、フィルアスは『アレーフォン・ディ・チェイカ・フィルアス』です。一番始めが名字、一番最後が名前、その他のは生まれ故郷や、両親の名前です。そしてディルヴィアス9世の旧名は『シアウス・ココイ・ユ・タノア・ディル・ドゥセイアス』。後々の物語にこの名が出てくるかもしれません。
それではまた─────

第5章 再会

しずちゃんはコミアンに聞いた。
「お風呂、ありますか?」
「オフロって何?」
どうもこの星にお風呂は存在しないようだ。しずちゃんは今度はシャワーはあるか、と聞いた。
「えぇ、あるわよ」
この星の人たちはシャワーで済ませてるらしい。
しずちゃんはシャワーを浴びたあと、ベッドで眠った。
次の日……
みんなは目を覚ました。そして早速、ジャイアン救出の準備に取りかかった。
と、その時、ドアをノックする音が聞こえた。
「我、自由を求めるものなり」
合い言葉のようだ。フィルアスはドアを開けた。
「フィルアス、新たな情報を手に入れた。……ん、そこにいるのは?」
男が入ってきた。フィルアス達の仲間らしい。その男はドラえもん達に気づいた。
フィルアスがドラえもん達の説明をする。そのあと、彼はドラえもん達に説明した。
「彼は、我々の仲間で、主に情報収集を担当する、『ヴァラフォヌス』だ。そうそう、ヴァラフォヌス、さっき『新たな情報』を手に入れたと、言ったよな」
ヴァラフォヌスは話し始めた。
「まぁな。それが何か役に立つかはわからないが。その情報というのが、『ディルヴィアスが、侵略した星のヒトを、仲間に引き入れた』というものなんだ。『引き入れた』と言っても、実際は『洗脳』したらしいんだがな」
この情報にのび太達は唖然とした。その『侵略した星のヒト』がジャイアンだと考えたのだ。
「ジャイアンが洗脳されただなんて……。どうすんだよいったい……」
スネ夫がへなへなと座り込んだ。
「落ち着いて、スネ夫さん。まだ武さんだと決まった訳じゃないわ」
しずちゃんの言うとおり、それがジャイアンだと、決まったわけではない。しかし、現段階ではそれがジャイアンだという可能性が極めて高い。
「そうそう、もう一つ、ディルヴィアスが侵略した星、のび太君達の星ではなくて、別の星から、この星にディルヴィアスを倒そうとやってきたものがいる。今ちょうど、私と一緒にいる。
その人?を見て、出木杉とコミアン、フィルアス以外のみんなが驚いた。
そこに立っていたのは西洋人のような外見をしたメカトピアのロボット、リルルだった。
しばらくの沈黙。それを破ったのはのび太だった。
「リ……リルル!?」
リルル…… かつて地球人を奴隷としてはたらかせるために、メカトピアというロボットだけの星から送り込まれた地球人型のロボットだ。始めは地球人を奴隷とするために行動するが、奴隷狩りが悪いことだと悟り、メカトピア、そして地球の未来を変えるため、自らの存在が消えてしまうのを覚悟で、メカトピアのロボットの祖先、アムとイムの頭脳の改造をし、そして消えてしまった。そのリルルが今、この星にいる。不思議なことだ。
「のび太君……。他のみんなも……」
そしてのび太はリルルに自分たちのことを話した。
「そうだったの……。私も同じよ。あのあと、メカトピアは平和を愛する、素晴らしい星になったわ。私は、前の記憶を持ったまま、作られたの……。不思議よね……。一度もあったことがないはずの人を知っているんだもの。でも、会ったことがあるのよね。皮肉なことにかつて侵略する側だったメカトピアは今度は侵略される側になったの。あなた達の地球を侵略したのと同じ、『ディルヴィアス』にね。生まれ変わった鉄人兵団はメカトピアを守るために必死で戦ったわ。でも、勝てなかった。生き残った私は、気づかれないようにUFOを追いかけて、この星まで来たの」
メカトピアも侵略されていたことにみんなは驚いた。しかし、みんながもっとも驚いたのはあの鉄人兵団が勝てなかったということである。
この場にいる地球人で唯一、出木杉だけが話についていってない。とても珍しいことである。
「仲間の敵を討ちたいの。私も連れてって」
リルルの頼みをみんなは受け入れた。仲間は多い方がいい。みんなの準備が整ったので、出発することにした。
「フィルアスさん、ディルヴィアスはどこにいるんですか」
出木杉が聞いた。
「ディルヴィアスはこの星の王都、タノアシスの王宮にいる。タノアシスはここから西北西に80kmほどいったところだ」
80km……けっこうな距離だ。
「何か乗り物はあるんですか」
スネ夫が聞いた。
「トラックがある。それで行こう。但し、10km手前までだ。それよりいくのは危ない」
みんなはトラックがある場所へ向かった。トラックといっても、地球のものとは大分形が違う。筒のような形だ。みんなはそれに乗り込み……といっても、このトラックは2人乗りなので、フィルアスとコミアン以外のみんなは荷台に乗った。
王都タノアシス ディルヴィアス宮殿……
「予定通りだな」
男はそう言うと何かを取り出した。
「521198番、お前の仲間がこちらに向かっている。相手をしてやれ」
そして男は消えた。
【あとがき】
第5章、どうでしたか。タイトルの『再会』はジャイアンのことだと思った人、残念。
ジャイアンは次章に出てきます。第6章のタイトルは『昨日の友は……』です。もう予想はついたでしょう。
ちなみに、今回新たに加わったヴァラフォヌスのフルネームは『ケーリティ・ロール・ケラルモルト・ヴァラフォヌス』です。
それではまた─────

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