ドラウタ


第一話【開幕】


「おい!のび太!しっかりしろ!」
爆音が鳴り響く中、僕を呼んでくれる人がいた。
「まだ終われないんだろ!お前の夢はその程度だったのか!?」
激しく叱咤される。だが、僕にはもう返事をする力すらない・・・。
  

どうして、こうなってしまったんだろう・・・。
平和な日々は?どこに消えた?いつからこんなことに?
僕は空になりかけた心のなかを探した。
何か大切なものを、忘れている気がするから・・・・。


―――その日の朝。


「のび太君!おきて!遅刻するよ!中学生がそんなことでいいの?」
ふと顔を上げる。見慣れた顔がそこにはあった。
「ドラえもん・・・。」
ドラえもん。ちょっとした理由で、僕のところにいる。ドラ焼きが好きらしい。
「ちょっと待ってよ・・・もうすこし寝るから・・・」
また布団に潜り込もうとする僕を、ドラえもんは呼び止める。
「友達が来てるよ。待たせたらだめだよ!」
「友達・・・・・?」
「友達!だから早く急いで!ほら!」
僕に友達なんていたかな?と思いつつ、ドラえもんにいわれるがまま着替え、朝食は食べずに待っているという友達の元へと走っていった。
「遅いぞ。人をどれだけ待たせれば気が済むんだ?」
「あ、大助君か!」
薬屋大助。中学生になってから、僕と仲が良くなった人だ。
社交的で、こんな僕とも仲良く接してくれた。家も近いし、仲良くなるのはさほど難しいことではなかった。
「そ、大助だよ。悪かったな大助で。」
「わ、悪くなんかないって!」
「そーか?どうせ、静香ちゃんでも来てるのかなーって思ってたんだろ?」
「お、思ってないよ!もう、早く学校行こうよ!」
「おー、そうかそうか。友達待たせといて早く行こうって?いいぜ、競争だ!負けたら帰りジュースおごれよ!」
そういって彼は駆け出した。
「ちょ、ちょっと!卑怯だよ!・・・もう!」
のび太も後に続く。
―――平和になったなぁ・・・。
僕は、何かしらそう思った。どうしてそう思ったのかわからない。わからないけど、そう思わずにはいわれなかった。自分の中での平和は、こういったことだったのかもしれない。
友達がいて、家族がいて、ドラえもんがいて・・・・。
皆いる。こんな幸せな日々が、延々と続いてくれればいいと思った。
このとき僕は、こんな日々が消えてしまうなんて思ってもいなかった・・・。


―のび太が去った後、ドラえもん―
「ええ、はい。わかりました。」
電話を切る。
一息ついて、
「ごめんのび太君・・・・。ボクは・・・・。」
ドラえもんはそういい、部屋を去った。
二度と帰ってこれないかもしれないといわんばかりに、1歩1歩ゆっくりと・・・。


キーンコーンカーンコーン。

「はぁ・・・はぁ・・・やったぜ・・・。のび太、約束通り、ジュースおごれよな。」
学校についたころには、大助が勝ち誇ったような笑みで玄関の前に立っていた。
「卑怯じゃないか!いきなり走り出すなんてさ!まあ、ジュースくらいならいいけど・・・」
「よし!決まりだな!楽しみにしてるぜ!」
そういい、彼は校内へと消えていった。
「ちょっと・・・・おいてかないでよ!」
僕も後に続く。
この学校は、蘭欧(らんおう)中学校という、去年できたばかりの中学校だ。
僕と大助君はここでであった。
でも、昔から仲が良かった彼らは・・・・・。
「気にしてちゃだめだ・・・・・。僕はもう、後戻りなんて――」
「ん?どうしたのび。ホームルームに遅れるぞ?」
立ち止まっていた僕を見て心配だったんだろう。担任の樋口先生が話しかけてきた。
「・・・大丈夫です。今行きますから」
「ああ、それならいいけどな・・・。」
僕を一瞥し、樋口先生は教室に入っていった。
僕も教室に入る。皆はもう座ってる。僕もすぐに座り、ホームルームは始まった。
「今日は、午前授業だけで終わりだ。帰ってからは、外に出てはいけないぞ。」
皆の空気が凍る。それはそうだろう、午前授業だけで終わるということは・・・・。
「先生、また“蛇”ですか?」
“蛇”という語句に皆の空気がさらに凍る。
――――蛇。
世間の間ではそう呼ばれ、数年前に突如として現れた謎の存在である。人の魂を奪うものとされているが、本当かどうかはわからない。それらは世間ではうわさの範疇にとどまっているが、目撃証言が多く、その存在はもはや暗黙の了解といっていいほどだ。
とても歪で恐ろしいことから、人からは畏怖の対象として見られている。
僕だってそんな化け物とは関わりたくないし、関わろうともしたくない。
「なあ、のび太?」
ふと声がしたので横を見る。
「どうしたの?大助君。」
「いや、お前、蛇は嫌いか?」
「嫌いも何も、化け物なんでしょ?そんなものと関わりたくなんかないよ。大助君だってそうでしょ?」
「・・・ああ・・・・」
そういったきり、彼は黙り込んでしまった。
 

そのご、午前の授業が終わり、帰ることとなった。
「大助君、一緒に帰ろうよ!」
「いや・・・俺はしなくちゃいけないことあるから、帰っててくれ。大丈夫。ジュースはまた今度おごってもらうからさ。」
「・・・・そう?わかった。じゃーね」
そういい、僕は教室をでて帰路につく、振りをした。
「たまには大助君がなにをしてるかくらい、みてもいいよね・・・。」
ちょっとした好奇心だったのだろう。そのころは、彼ばかり僕のところにきて、彼のところにはいったこともなかったのだ。いきたいといっても「どうせ面白くないからさ」
と笑い飛ばすばかり。どうしてだろうと思う日々があった。
でも今日、これではっきりするだろう。大助君がどんな人なのか、これでよくわかるはずだ。


これが、悪夢の幕開けになるとも知らずに・・・・。


数十分後、大助君は出てきた。僕は気づかれないように後をついて行く。
「はぁ・・・・また00かよ・・・・・・・」
大助君がまた何かつぶやいた。あの様子だと、すこしおこってるみたいだ。
「・・・・ここらへんが目撃情報があったところか・・・。」
「ぇ・・・・・」
眼前の光景をみて、僕は息をのんだ。
そこは元は公園だったのだろう。折れ曲がった滑り台、胴体と千切れているブランコ、上半身が吹き飛んでいる銅像、そして地面にはところどころ大きな穴が・・・。
「・・・・・これは確かにひどいな、2強ってところか・・・」
大助君が何を言っているのか分からない。僕は何も考えることができなかった。
こんな光景を見てどうして大助君は平然としてられるのだろう?
立ち尽くしていると、おくから誰かやってきた。
「・・・・・・・・」
「おい、こんなことをしたのはお前か?」
「うん、そうだよ。君たちをよぶ餌としてね・・・。」
「君たちだと?どういうことだ!」
「後ろを見てみるといいよ」
「・・・・!」
大助君が僕を見つめてきた。振り返ったら仲のいい友達がいたのだろう。無理もない。
でも僕は、それよりも驚くことがあった。大助君の奥にいる人が・・・。
「・・・ドラえもん・・・・」
そう、ドラえもんだったのだ。
どうしてここに?こんなことをドラえもんがやった?餌?どういうことだろう・・・。
「おい、そこの青タヌキ!のび太をこの戦いに巻き込むつもりか!?」
「青タヌキって失礼じゃないかな?ボクにはちゃんと名前だってあるんだしさ」
「敵を名前で呼ぶ必要なんてあるか?」
「確かに、ないね。あと残念だ。ボクは君になんて用はない。のび太君に用があるんだから。そこをどいてよ」
僕に用がある?どういうことだろう?家でいってくれればよかったのに。
「どかねえよ、友達を俺達と一緒にはさせない・・・・こい!」
大助君が叫んだ。その途端、大助君の体に蛇のような光が突き刺さり、それが全身を駆け巡り、大助君は黄金の輝きに包まれた。
「なん・・・・なんだ・・・・これは・・・・」
「へえ、蛇と一体化できるタイプか。面白いかもね。でも、ボクも強いよ?」
一方ドラえもんの周りが、急に暗くなった。ドラえもんの全身から闇に似たものが吹き出てくる。
「は、特殊ごときが、同体に勝てると思ってるのか?」
僕は誰が何を言ってるのかよくわからなかった。言葉の意味も分からなかったし、分かろうともしなかった。でも、僕は、そう。
見とれていたのだ。2人に。光と闇。照らすものと隠すもの。その綺麗な姿に・・・。
「行くぜ青ダヌキ!あとでないて許しを請おうったってそうはいかねぇぞ!」
「それはボクのセリフだよ!」
かくして、二人の激闘が始まった。


「うおおおおおおおお!」
「うあああああああ!」
光と闇が激突する。
光の方は指先から光弾を飛ばしている。闇はそれを包み込み、黒化させて弾き返す。
「うおおおお!」
いきなり大助君が跳躍した。人間のものとは思えない速度であっという間にドラえもんの真上にとび、そこから地面に向かって拳を叩きつける。目ではおえない早さだが、
「あまいよ!ボクの戦闘経験をなめてもらっちゃ困るからね!」
ドラえもんもすごい速度でその攻撃を避けた。
「ちっ・・・・」
「さあ、早くのび太君と話させてもらえないかな?」
「断る!」
「・・・・・ぁ・・・・・・・・あぁ・・・」
僕の周囲はもう焼け野原だし、僕のまわりも穴だらけだった。
でも、構わない。この姿をもうすこしでも目に焼き付けておきたい。
そして、僕は願った。
「・・・・この2人みたいに・・・戦ってみたいな・・・・。」
するとその瞬間。視界がブレた。
「ちっ、“蛇”が降臨してしまう!」
「よし、これでボクの使命は終わりだね・・。」
「おい、待て青ダヌキ!俺との決着は―――――」
「君との決着の前に、のび太君を助けてあげなくていいの?暴走して、堕落人になっても知らないよ?」
「ちっ・・・・」
「それと最後に、ボクと決着をつけたいなら、あの山に来てよって。のび太君ならわかるだろうから。そこに彼らもいる。ってね。じゃ」
そういい残し、青ダヌ・・・ドラえもんは去っていった。
「あっ・・・・そうだのび太!」
誰かが駆け寄ってきた。
「おい!のび太!お前いったい何を願った!何を願ったんだ!」
急速に意識が失われていく、僕はもう、だめなんだろうか?
「この光は・・。ちっ、同体型か、俺と同じ癖のある夢を願ったんだろ!おい!しっかりしろ!」
大助君が何を言ってるのか理解できない。頭が働いていないのか、理解の範疇を超えているのか。彼が必死になって、どうして僕に語りかけてくるんだろう。眠気がしてきた。休ませてくれてもいいじゃないか・・・。
「ちっ・・・このままじゃ堕落人に・・・・」
すると遠くから、巨大な砲撃音のような音がした。
「執行者、No,2スネオ。ドラえもんの意向が変わった。暴走もせず、このまま勝手に堕落していくのび太を、これより殲滅する。貴様、どけ。楽にしてやりたいんだ。のび太を。」
「嘘つけ!誰だお前!のび太がなんだよ!どうして皆のび太に関わる!」
あの顔には見覚えがある・・・。確か、自慢ばかりするやつだったような・・・・。
それに、目がひどく濁っている。黒く、闇にとり憑かれているかのように。
「そうはさせないわ!」
一瞬、時間が止まった。
そして次の瞬間、スネオの周りが炎で埋め尽くされる
「くっ・・・」
「静香・・・」
それは間違いなく静香ちゃんだった。
静香ちゃんは手に杖をもっている。そこから炎がでているのだろうと、動かない頭で考える。
「大助君!はやくのび太さんを!」
「・・・ああ」
「思わぬ邪魔が入ったな。仕方ない、ここは全力でいこうか。」
途端、スネオの周りの炎が吹き消された。
風。とでもいっておこうか。突風じみた風が炎を吹き消し、槍となって襲い掛かる。
地面がえぐれ、あらゆる生命が吹き飛ぶ。
「くっ・・・・」
静香ちゃんが吹き飛ばされる。
「ちっ・・・。おい静香!大丈夫か!」
「・・・いいから!はやくのび太さんを!」


―そして今に至る
「ああ、わかってるさ!おい!のび太!しっかりしろ!」
爆音が鳴り響く中、僕を呼んでくれる人がいた。
「まだ終われないんだろ!お前の夢はその程度だったのか!?」
激しく叱咤される。だが、僕にはもう返事をする力すらない・・・。
大切な何かが、こぼれ落ちていく、そんな感じがしている。
「おい!夢をもったんだろ!じゃあ諦めるなよ!こんなことで終わる夢は夢じゃない!」
だめだ、僕は・・・。もう君の名前も思い出せないし、どんな夢を持ったのかもきえそうだ・・・・。もう、僕は死ぬのかもしれない。感覚で分かるんだ。最後の一握りの想いが消えたら、僕は死ぬと。
「男なら、最後まで戦えよ!逃げるのか?今までつらい思いをしなかったから、こういうところからさっさと逃げ出すってのか?甘ったれるんじゃねえよ!今終わっても、何の意味もないんだぞ!お前の人生、そんなことでいいのかよ!」
いいわけがない、とはいいきれない。
これでいいのかもしれない。もう、疲れたから。僕は幸せだったんだ。だからもう、眠らせてよ。これ以上の辛いことなんて、いやだよ。
「・・・この野郎!さっさと目ぇ覚ましやがれ!何度いったらわかるんだ!あぁ?今はまだ眠るときじゃねえんだよ!自分が願った夢を思い出せ!」
夢・・・・。そうだね、死ぬ前に思い出してみようかな・・・。
「・・・・・・」
この青いのは何だろう?ドラえもん?・・・・なんだろう、この感覚。
君は・・・・・・誰だろう?大助?・・・・何かを忘れている・・・。
「おい!お前はまだ戦えるだろ!ほら、たてよ!さっさと立って青ダヌキのところに行って決着をつけるぞ!」
戦い・・・・戦い?
そうだ、確か僕は、君と青いのとの戦いを見て・・・・・・。
「あ・・・・・」
全て思い出した。体に力がみなぎってくる・・・。
「思い出したか。よかった。よし、後はスネオとかいうやつを――――」
「・・・うんだ・・・」
夢を思い出した。この夢を人に語ったら、笑い飛ばされるかもしれない。
「ん?どうした?」
「・・・・・戦うんだ・・・・」
大助君にいったら、怒られるかもしれない。だってこの夢は、願ってはいけない夢だったから。
「・・・・おいのび太。大丈夫か?」
「僕は・・・・・君と・・・・・」
それでも、この願いは果たさなくてはいけない。
――おい!夢をもったんだろ!じゃあ諦めるなよ!こんなことで終わる夢は夢じゃない!
確かにその通りだ。諦めてはいけない。
――男なら、最後まで戦えよ!逃げるのか?今までつらい思いをしなかったから、こういうところからさっさと逃げ出すってのか?甘ったれるんじゃねえよ!今終わっても、何の意味もないんだぞ!お前の人生、そんなことでいいのかよ!
そう、そうだ。いいわけがない。
だから僕は今、思うようにする。そして戦った後、もう一度友達に戻ればいい。
そう、僕の夢は。
「僕は・・・・・・・大助君と全力で戦いたい!」
「なっ・・・・。」
突如、僕の体が橙色の輝きに包まれた・・・・。


1話開幕終了

2話対峙は機会を見て。


第二話【対峙】

突如、僕の体が橙色の輝きに包まれた。
「おい、のび太。それは本気なのか?本気でいったのか?」
当然大助君は困惑気味だ。
「本気だよ。頭も久々に冷静に働いてくれる。僕は願ったんだよ。大助君と、いや、大助君達と戦ってみたいってね。そんな願い、受け入れられるわけないかもしれない。」
困惑気味の大助君の表情が、怒りへと変わっていく。
「当たり前だろ!のび太、今ならまだ戦わなくて済むぞ。友達同士、無駄に争うのは良くないと思わないか?」
「思わない。僕は今これが一番いいと考えているから。だって大助君いったじゃない。夢をあきらめるなって、あきらめたら終わりだって。」
「ああいった、いったさ。だがな、それとこれとは話が違うだろ!普通に考えてみろよ!この展開で俺たちが戦って得するのは、さっきの青タヌキと、そこの風使いだけだろ!やめろよこういうこと!どうして、どうして俺たちが―――」
のび太の橙色の輝きがより一層強くなっていく。
「もう、語りあうのはやめにしようよ。これ以上いっても埒が明かないからさ。僕の力の源・・・・。どんなことができるかなんてわからない。わからないけど、僕はここで大助君と戦うんだ。僕が願い、決めたことだから。」
のび太が構えた。その決意を受け取ったのだろう。大助も構える。
「そうか、その意固地を強制するには、もはや会話では無理ってことか。いいだろう、やってやるぜ。だがその前に、すこし聞いてくれ。」
「語りあう必要は―――」
「ないかもしれないが、俺が一方的に話すから聞いてくれ。大事な話だ。この話を踏まえた上で戦う戦わないを決めろ。そのときは全力で行くからよ。」
「・・・・・・わかったよ。」
そういうと、大助がすこし安堵の笑みを浮かべ、語りだした。
「まず、お前に宿ったもの。それは間違いなく蛇だ。そもそも蛇は人がとても強い願いを放ったときにでてくるものだとされている。俺もそうだったからな。蛇には、種類がある。俺の様に蛇と合体し、人の域を超えた超人の力を得る同体。同体のタイプは、身体能力が格段に上がるんだ。能力も中々強力なものが多い。また、周りの空間を操り、ほとんどは自然の現象を媒介にし、能力を使う特殊というのもいる。さっきの青タヌキ、風使いは、特殊になる。もう一つ存在しているようだが、俺はそこまではしらない。このまま蛇を使い続ける人が増えたら、日本はどうなってしまうのだろう?という疑問がここで生まれる。超人の力を手に入れた人間は、あれ狂うかもしれないな。だが、心配はない。蛇にとり憑かれた人は、超人の力を自由に使えるかわりに、それにみあった分心の中から何か大切なものを忘れてしまう。これは言うより体験したら分かるだろうが。そして、心が完全に空になったとき、蛇は宿主を離れ天へと昇る。その時、蛇と共に蛇にとり憑かれた人の魂も天に昇る。つまり、蛇とは一心同体なわけだ。まあ、天に昇った後肉体は死ぬわけではなく、活動を続けることになる。心はないがな。これを俺達は堕落人と呼んでいる。ただそこにたっているだけの、哀しい存在に成り果てるんだ。世間で騒がれている、魂を奪われる、というのは、蛇にとり憑かれたものの成れの果てってわけさ。さて、俺がこう長々と“蛇”という存在について語った意味は分かったか?」
「つまり心を空にしない程度に戦えってことでしょ?簡単じゃない?やばいと思えばやめればいいんだしさ。」
「・・・・はぁー。お前には何を言っても分からないってか。」
「うん、分からないと思う。大助君と僕の意見は、違うもん。」
「お前のその性格叩きなおすには、多少痛い目にあわないと治らないみたいだな。いいぜ、とことん戦ってやるよ!・・・・―――こい!」
大助の体の中を光輝く蛇が駆け巡る。
「いくよ大助君。この戦闘で僕の能力を見つけなくてはならないね・・・・」
大助の手から、光弾が放たれた。



静香―スネオ
「暴走が始まったか・・・。ならば殲滅する意味もない・・・・か?」
周りに風を纏い、静香など見ていない様子で、スネオは淡々と語る。
「一度ドラえもんに連絡を取った方がよさそうだな。」
一瞬、眼前に炎が吹き上がる。しかし一瞬のうちに風に吹き消される。
「無駄だよ、静香ちゃん。炎は風に勝てない。吹き消されて終わるんだよ。」
「のび太さんの暴走をとめるにはまずあなたを倒さなくてはいけないから。とめようとしたら障害になるんでしょ?」
「フフフッ・・・。障害になっても面白いかもしれないけど、僕は基本的に止めないよ。どうせ君達はのび太に殺されるんだ。僕が手を下すまでもない。」
「あら・・・障害にならないのね?じゃあいいわ。貴方なんて相手にしないから。」
そういい、静香はスネオから体を背ける。
しかし、それが運の尽きだった。
「ふっ、敵に背中を見せるとは何事か!その命、貰い受ける!」
スネオが風の槍を静香に浴びせる。
「あ・・・・!」
避けられない風の槍を、ただ呆然と見ることしかできなかった。
卑怯者、ともいう暇がなかった。風槍の群れが、静香の髪を掠めた。
そして、爆風が辺り一面吹き飛ばした。
「フフフッ、僕が君達を見逃さないわけないよ。まあ、見るのは楽しくないから、この場は離れるけどね。のび太と頑張って戦っていればいいよ。どうせ他人事だからね。」
そういい、風を纏ったスネオは、風と共にきえていった。




「うおおおおおおお!」
「うぅっ・・・・」
周囲の地面は、全て凹んでいた。破壊痕はすさまじいもので、よけることだけにしか集中できなかった。もはや力の差は歴然だった。
「ろくに戦闘経験積んでないやつがいきなり実戦、というのにも無理があるんだよ。わかっただろ?この戦いで。自分の能力もうまく行使できないやつが、下手な夢ほざいてんじゃねえよ。」
「なんだと、この・・・!」
大助君に対して怒りがわくのはどうしてだろう。自分の夢、願い、そういった類のものを貶されたから?違う。僕を明らかに「弱い」と判定していることに、苛立っているんだ。
「僕だってたたかえるんだ!!!!!!!」
放たれる光弾をかわし、大助へと疾駆する。だがやはり、大助はそれに勝る勢いで後退。同じように光弾を撃ちはじめる。
「ほれ、俺に一撃も与えられないじゃねぇか!力量の違いに気付けいい加減にな!能力を使わずに光弾を避けられることはすこしほめてやってもいいが、それ以外は駄目じゃねえか!何が大助君と戦いたい。だ!こんなの戦いじゃねえよ!俺の一方的な追い込みじゃねえか!」
実際その通りである。のび太は自分の力の使い方も知らず、戦っているのだから。
「こいつの使い方さえ分かれば・・・・・・・。」
自分に腹が立つ。能力さえ分かれば、活路が見出せるのかも知れないのに。
―――同体のタイプは、身体能力が格段に上がるんだ。
身体能力が上がるだけじゃ駄目だ。能力を知らないと。
能力、能力、能力。僕の“蛇”の能力。
「使い方・・・使い方・・・・。」
教えてくれよ!僕の蛇だろ!
そう願った瞬間、のび太の体が橙色から赤褐色に変わった。
「なっ・・・・。蛇が・・・・蛇が変わるのか・・・?」
大助は戸惑いを見せる。
「あ・・・・空間・・・・転移・・・・」
のび太は自分の蛇の能力が分かった。どうやら蛇が教えてくれたようだ。
“空間転移”。名の通り、空間を自由に操る、また、物質を転移させることができるらしい。
空間を裂き、別次元へと続く穴を作ることだって、岩を敵の頭上に移動させることなどもできたりするようだ。頭の悪い僕に不釣合いな能力だけど、単純に行けば、大助君より強いのかもしれない。
「大助君。僕はもう能力が何であるかわかったから。大輔君に遅れは取らないよ!」
「よーし、いったな。先に負けを認めたら終わりだぜ!」
「わ、わかってるよ!僕だって・・・。うあああああ!」
二人の死闘が始まる。

赤褐色じみた橙色の輝きが強くなる。
それと同時に、のび太の周りの空間が捻れた。
「ちっ・・・・空間を操る能力か・・?だとしたら別次元から俺を狙ってくるはず・・・」
「(大助君の死角は・・・)」
別次元へととんだのび太は、大助の死角を見つけようとしている。
「厄介だな・・・・。」
と、大助が光弾を放つ手を下げた。
「(あっ・・・チャンスだ!)」
のび太はその僅かな隙にかけた。瞬時に飛び、殴りかかる。
「・・・・!」
驚いたのはのび太の方だった。
「どうせそう、単純なやつだと思ったよ。俺が隙を見せたら突っ込んでくるってな。今のはわざと作った隙だっていうのに、どうしてこう単純なんだ?」
大助の蹴りがのび太の腹に直撃する。
「ぁっ・・・!」
10mは飛ばされたであろうのび太は、落下の衝撃に耐え切れず地面に倒れこむ。
「くっ・・・・」
「単純だし、脆い。ほれ、諦めろ。取り返しのつかないことになる前にな。」
駄目だ。そんなこと許されない。とのび太は心の中で自分を奮い立たせる。
「物質・・・・移動・・・・。」
近くにあった小石を全部、大助の頭上に移動させた。
「ん・・・・なんだ?」
大助の頭に小石が降り注ぐ。
「お・・・いてえぇっ。何だこれ・・・石?」
「(これが・・・・本当の隙なのかもしれない!いまだ!)」
のび太は荒れ果てた大地を疾駆する。これを逃したら、もう後がない・・・。
「うお・・・!」
のび太の殴りは大助の腹に命中した。
「や・・・やったよ大助君・・・・。」
脱力してのび太は倒れこむ。
「・・・・・・・」
大助も何も言わない。そうとう効いたのだろうか。
「疲れた・・・。しばらく立てないかもね・・・。」
「・・・・・・」
「大助君?・・・・大丈夫?」
「・・・・俺が折角本気を出さないでいてやったってのに、お前は今本気の殴りをした。俺も本気で一発いっとかないと、対等にならないぞ。ジュースおごっても駄目だ。」
大助の声は、今までの声とぜんぜん違っていた。怒りを通り越し、呆れたような言い方だ。
その中にもとてもつめたい感情のようなものが感じられる。その声を聞きのび太は震え上がった。
「大助君・・・?それってどういう―――」
聞こうとした瞬間、のび太は意識がなくなった。
「っぁ・・・・」
「これが、本気ってやつだ、しばらく眠ってろ。」
その後のび太は、ピクリとも動かなくなった。




のび太の夢的な何か
―――夢を見ている。
「ん・・・・」
ここはどこだろう。岩が連なる、ありきたりなところ。
その中心に、僕がいた。
「おい、何してんだ。早く起きろよ。」
この声・・・
「大助く―――」
大助じゃない。声は同じでも、そこにいるのは大助じゃなかった。
「・・・・誰・・・?」
「おいおい、変なこというなよ。てめぇ、俺のこと忘れたのか?」
「忘れたもなにも、僕は君とはあったことないよ?」
“大助君”の声をした“誰か”は困惑気味だ。
「おいおい、本気で忘れたのか?俺だぜ?俺のことを忘れるなんててめぇもひどいやつだな。」
声は確かに大助のものだ。だが、何か違う。何かが・・・・。
「大助君だったら、僕の名前わかるよね?」
「名前なんて何でもいいだろ。それよりも早く起きろ。起きて俺と戦うんだよ。」
「え・・・?」
「聞いてなかったのか?戦うんだよ、俺と。」
おかしい。さっきまで戦うことを反対していた大助君が、今度は戦うと言い出している。
「・・・・本当に大助君?」
「当たり前だろ。てめぇ、本当に俺のこと忘れたのか?」
違う。忘れてなんかいない。でも、こいつは大助じゃない。何か判る方法があれば・・。
「忘れてなんか無いよ。でも、大助君なのか心配なんだ。さっき倒れていたし。」
「あ?あの程度の傷癒せなくて何が同体だ。てめぇ、俺の治癒能力をなめるなよ。」
引っかかった!大助君は倒れてなんていなかった!
「どうやら、君は大助君じゃないみたいだ。」
「は?どうしてそう―――」
大助君のようなものの上に近くの岩を落とした。
「あたった・・・・!?」
岩は大助に命中した。先ほどは避けれたものも避けられない。明らかに身体能力が違う。
「ケッ、心をのっとることは無理だったか・・・・。」
「声が・・・・かわった?」
「はあ。ばれちまったもんは仕方ねえな。俺は、いや、名前なんていらないな。」
「じゃあ、君、ここはどこなんだい?ここから出られないの?」
「出るも何も、ここはお前の心像世界だ。お前の心の中の世界だよ。だから出ることだって簡単にできるはずだ。出たいと願えばいい。」
「え・・・?心像世界・・・?ちょっと、それはどういう―――」
誰かに質問しようとした瞬間、世界が煌いた。
次の瞬間には、元の世界に戻っていた。




――――
目を開けると、そこには大助が立っていた
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
両者ともかける言葉も無い。でも、考えていることは同じだった。
「(帰ろうか・・・)」
「(帰ろうぜ。)」
大助はのび太を起こし、帰路へとついた。はずだった。
目の前の光景が目に入りさえしなければ。
「静香ちゃん・・・?」
全身を炎に包まれた静香が、そこに立っていた。
「これは・・・蛇を制御しきれてない?まさか・・・暴走するのか?」
大助の顔に緊張が走る。
「暴走ってどういう――――」
「ち・・・・倒すしかないな・・・こい!」
のび太が言い終わる前に大助の体が黄金の輝きに包まれた。
「災厄の種は実が実る前に消すが定石だ・・・・。静香には悪いが・・・・仕方ない」
大助は疾駆する。のび太はとめようと腕を伸ばす。
勝負は一瞬だった。
零距離から放たれた光弾が静香の蛇を貫いた。
途端、静香は倒れこむ。
「え・・・・・」
「・・・・・・・」
何が起こったのだろう?大助が静香の蛇を貫いて・・・。それで・・・。
「何したの?大助君・・・・ねぇ!」
「・・・・・・」
「大助君!静香ちゃんに何を――――」
「うるせぇ!・・・・・・よく聞け、のび太。蛇を使うということは、常に死と隣り合わせなんだよ。今のように暴走しそうな人間も出てくる。それで周りが巻き込まれ、蛇の存在は更に公の場に出ることとなる。」
「でも、でも!・・・・静香ちゃんは・・・?」
「蛇を殺したら、宿り主の心がなくなるっていっただろ。そいつは、もう日常の生活には戻れない。そうだな、俺等の組織の収容施設にでもいれるか。」
「大助君・・・・うそだよね?うそなんでしょ?ねえ!」
「・・・・・・・・。蛇っていうのは、人に破壊しかもたらさない、最悪の兵器なんだよ。自覚しろ、お前も暴走したら周りを破壊しつくし自滅する。まあ、そんなことになる前に俺がお前の蛇を倒すがな。」
「え・・・・」
のび太はみるみるうちに怒りをためていく。
「じゃあ・・・いざとなったら僕を捨てるっていうの・・・?」
「捨てるも何も、蛇に選ばれたやつはいつかこういう結末になるんだよ。早かれ遅かれ、自然とやってくる。仕方ないことなんだよ。」
それは正論だ。正しいとは思うが。
「・・・・仕方ないからって、こんな簡単に人一人犠牲にするっていうの大助君は!」
違うといってくれればまだ僕は許せる。のび太はそう思った。だが、
「ああ、これが運命なんだよ。こんな簡単に人一人犠牲にするのか?は、俺としか戦ってないお前がそんなこと言える立場かよ。数々の戦いの中から俺はこうするしかないことを学んだんだよ。だから、お前が今また戦うというのなら、俺はやってやるぜ。その時はお前の蛇を倒す。」
「・・・・・・・・・・・」
のび太の怒りは沸点を超えた。
「許せない・・・・・。大助・・・・だいすけぇぇぇぇぇぇ!」
のび太は荒れはてた大地を駆け抜ける。
―――――蛇っていうのは、人に破壊しかもたらさない、最悪の兵器なんだよ。
確かに、今このときも何もかもを破壊している。僕の心も、僕の周りを。
でも、それでも、人一人を簡単に犠牲にするなんて、僕の意見と食い違いすぎる。
僕はいくら暴走しても、助けるつもりでいた。いたのに・・・。
「あくまで立ち向かうのか?いいぜ、うけてたってやる!」
大助の手から光弾が放たれる。
「僕だってこれくらい!」
のび太は手で空間を捻じ曲げ、光弾を捻じ曲げた空間に入れた。
「へえ、使い方わかってきたのか。面白い!」
次々と光弾が飛んでくる。のび太はそれを次々と防ぐ。
「一瞬の隙を突く・・・。物質移動!」
空間を引き裂き大地を削り、削り取った岩盤を移動させる。
「ふーん。空間を操るだけかと思っていたが、物体を移動させることができるのか。」
大助は予測していたかのように岩盤を打ち砕く。その間にも光弾の攻撃は続く。
「とはいっても、お前が能力を使うには手を必要とする。つまり2本の手で能力を使い分けるわけだが、俺は一本の指だけでいい。手数でお前は圧倒的に不利だぜ?まだ続けるのか?今ならまだやめてもいいぜ?」
正直もう限界だ。怒りも限界に来てるし、体力も、気力も。でも、
「ダメだ、ここで諦めたら君の行いを許すことになる。だから、ここで諦めるわけにはいかないんだ!」
のび太は限界の体で戦う。それを嘲笑い軽くたしなめる大助。
両者の戦いは、終わりが近い。
「おーおーえらい信念を持ったなあ。だが、これで終わらせるぜ、お前、俺の能力光弾だけだと思ってないか?」
「え・・・・?」
気付いたときにはもう遅かった。大助はのび太の後ろに回り込み、のび太を殴り飛ばした。
「何があったかわからないだろ?隠し玉は、最後までとっておくべきだぜ?ま、俺にはまだ使えるものがあるけどな。」
・ ・・・僕はきづいた。大助の能力を。僕の能力とある程度似ている。
平行世界の移動。今僕等がいるこの場所と同じ世界が連なっているということ。先生が言っていたことを覚えている。大助はこの平行世界を使って、僕の後ろに回り込んでいるという結果が生まれている世界に飛んで僕を攻撃したんだ。結果が成り立っているから、避けるのは自分の反射能力を信じるだけ。いや、信じても無駄だろう。成り立っている結果の前にはどう足掻いても無理だということ。こんな能力、あっていいのだろうか。
「あーあー、勢いあったのに、崩れるの早すぎるぜ?」
「・・・・・・・」
僕は返事もできない。大助に負けたということ、馬鹿にされたということ、体力ももう限界だということもあり、動けないようだ。
「まあいいぜ、いずれまた戦ってやるよ。俺とお前はもう、敵でいいな?それと、青タヌキからの伝言だ。あの山で待ってるってな。俺はいかねえが、いきたいならいった方がいいぜ?」
「・・・・・・・・・・・」
山といえば、学校の左にあるあの・・・・?
「じゃあな、またあう時まで、強くなっておけよ。」
そういい、大助は消え去った。


荒れ果てた大地には、僕と静香ちゃんしか残っていない。
静香ちゃんは何も言わない。僕も何も言わない。
さっきの戦いはあまりにも辛すぎた。
疲れた。
疲れた。
休もう。
休もう。
のび太はすこし、目を閉じた。
今までのことを忘れ去るために。
こんな悪夢、二度と見たくないと。
起きたら、平和な日々がまた始まっていると信じて・・・・・。




第2話 対峙 終了

第3話 崩壊の柱
気が向いたら書き始めると。
 


第三話【崩壊の柱】



のび太は目を開いた。
そこに広がっていたのは、いつもと変わらぬ平和な朝の光景――――
とは程遠い、荒れ果てた大地だった。
生命の息吹を感じさせるものなど無い。
「あれ・・・静香ちゃんは・・・?」
周りを見まわす。しかし静香の姿は無い。
「大助君、かえ・・・」
当然大助の姿も無い。
「そうだった・・・・敵同士なんだったね・・・・」
僕の願いが現実となっている。大助とも敵となり、ドラえもんとも・・・・・・。
「そうだ、山に行けばドラえもんがいるかもしれない・・・。」
大助の言葉を信じるなら、山に行ったほうがいい。だかしかし、
「今は、家に帰らなきゃ。」
心身共に疲れ果てたのび太が、荒れ果てた大地をあとにした。
家に帰り、何も無い部屋で大の字になって寝転がる。
「いろいろなことがありすぎたなぁ・・・。」
思い起こせば、今日は本当に色々なことがあった。
「でも、今は考えるより寝た方がよさそうだね。」
そう思ったからなのか、のび太はすぐに寝てしまった。



――――――。
目を覚ます。
「時間は・・・・」
まだフルに回転していない頭で考え、時計を手探りで探す。
「げ、8時!?一晩中寝てたの!?が、が、が、学校に遅刻しちゃう!ドラえもん!どうして起こしてくれないの!」
叫んだあと気付く。ドラえもんはいない。
「そうだった・・・・・・・。・・・・・ダメだ、いまは落ち込んでいる時じゃない!」
そうしてのび太は急いで着替え、下へと降りていく。
「あら、もう行くの?ご飯食べていかないの?」
とのんきに僕の邪魔をする母が一人。
時計を見れば明らかに遅刻しそうだとわかるこの時間帯。そんな時にご飯だなんて、何を考えているのか。とのび太はため息を漏らす。
どうしたの?という母に、
「時間みた?八時だよ?もう時間ないじゃない!いってきまーす!」
といいのび太は家を出て行った。
――急いで走り、何とか学校に着いた。走ったといっても、最初の500mくらいだけだった。あとは全部歩きとおした。近所の人から学校を休む生徒と思われただろうが、断じて違う、急いでたのだ。その証拠に、
「ハァ・・・ハァ・・・。間に合わなかった・・・・。」
と、息遣いまで荒くしてみる。
しかし、時すでにおそし。校門の前には生徒指導部の教師が群れをなしている。
この学校では、遅刻した生徒に重い罰を設けている。そんなものいらないのに。
「仕方ない・・・。行くしかないよね・・・。」
ため息交じりで学校へと足を踏み出した。
どごおおおおおおおん!
学校の奥の方で轟音が響く。生徒指導部の教師達が急いでその方向へと向かう。
「これは・・・・?どうしたんだろ。気になるなぁ・・。」
そしてのび太はその場所へと向かった。



そこには、大きな球があった。
学校の東棟が丸々つぶされている。僕等のクラスもそこにある。まさか、クラスメイト達は・・・・。
「ど、ど、どどど、どうしよう・・・・・・・・。どうしてこんなことに・・・。」
と、少々困惑し始めた途端。
「お、おい!またくるぞ!」
という教師の言葉が聞こえ、上を見ると・・・・・・
どごおおおおおおおん!
反応するよりも早く、球が落ちてきた。
「さっきよりも・・・・・でかい・・・。」
次は西棟、本棟ともに破壊。これで学校は全壊となったのか。
「一体誰がこんなことを・・・。」
と、現在の悪の根源である球に近づいた瞬間。
「へえ、ここに来るっていうあいつの意見はあってたのか。ちっ、めんどうだな、さっさと山行けっての!」
軽快な声を上げながら、“それ”は近づいてきた。
身長は170くらいあるだろう。ところどころ乱れた赤髪、気だるそうな目、だらしなく着ている制服。僕の嫌いな不良を想起させるような人物だ。
「君は・・・誰?」
「あー、知らないか。そうだよな。俺は園浄巴。ここの学生だ。それでさ、ここに大助ってやついただろ?そいつからの願いでさ。きっとお前がここに来るって行ってたからここを潰しておけって。中にいたら潰されて終わりだろうし、外にいるなら山に行けって警告をだせってさ。あー、かったりー。な、だからさっさと行けっての!」
彼・・・園浄はさりげなくひどい言葉を言った気がする。気のせいだろうか。
「え・・・んじょ・・・う・・・ともえ?」
「そーそー園浄巴!言わなくていいから!さっさと山に行けよ!」
園浄巴は山に行くことを進める。ふと、僕はさっき園浄がさりげなくいった言葉を思い出す。そんなことを思い出して黙っていられる性格じゃない。
「山に行くことは別にかまわないけど・・・さ。学校潰したんだよね?その球で。中の人達はどうなってるの?」
「ん?教えてほしいか?教えてほしいのか?」
園浄は挑発的な態度でのび太に言う。のび太はそれに怒りを感じながら話を続ける。
「教えてほしいから聞いてるんじゃないか!さっさと答えろよ!」
「ほお、そーかそーか!だったら答えてやるよ!」
そして、僕が一番答えてほしくない答えを、園浄は笑いながら答えた。
「全部消しちまったよ!!!!!悲鳴さえ上げれないままにな!悲しいだろうなぁ!つらいだろうなぁ!くっくくくくく・・・・はははははははああああああ!!!!!!!」
僕の頭の中で何かが切れた。
「な・・・にそれ・・・・。本当に・・・・そんなこと・・・・。許さない・・・・・・・・許さないぞ!!!!!!!園浄!!!!!!!!」
といい、僕は近くの石を園浄にぶつける。
「っは!やるのか?俺と?おっもしれえ!死んでから後悔しても知らねえぜ!」
といい、園浄は指を突き立てた。馬鹿にしているとしか言いようのないそれは、同時に絶対の安全を誓っているようにも見えた。
「石が・・・・当たらない?」
石は確かに僕の空間転移で園浄に当てたはずだ。
いや、あたってないというより・・・・・・。
「俺に攻撃はあたらねえよ。たった今俺の指が石に反応する磁石を作り出した。
お前がどうやって持ってきたか知らねえが、お前が持ってきた石は、全てここに吸い寄せられたぜ。さて、次は俺の番だな!」
園浄は磁石を作れるのか?いや、何かに反応する専用磁石?なんだそれ?
のび太が考えふけっている間に、園浄は準備を済ませていた。
「ほら、行け!お前に反応する磁石達よ!」
といい園浄は握り拳だった腕を広げる。
途端、のび太の体に何か硬いものが埋め込まれた。
「ぐあっ・・・・。」
速い。僕がぶつけた石よりも何倍、いや、何十倍も・・・。
そしてそれは今もなお僕の体の中に深々と進入していく。
「っははあ!どうだ!吸い寄せられる力ってのはさ、石投げる速度より速いんだぜ?よけようったって無駄だもんな!当たって正解だよ!だがまあ、そいつはどんどん食い込む。いずれ体を貫通するぞ!」
それはまだまだ進入してくる。どうやら本当に貫通するかもしれない。
「・・・・・・ぐっ・・・・・これを解くには・・・どうしたらいい・・・・・・」
のび太は必死になってそう答える。
「命乞いか!?さっきの威勢はどこに消えたんだよ!・・・まあ、一応答えてやる。
俺が解くか、俺の存在が消えるか。どちらかだよ!」
「・・・・。解いてくれたら、僕は君を消さない。だから解いて。」
「解く?俺が?はっ、馬鹿言え!誰が解くかよ!そんな馬鹿はさっさと消えろ!」
そういい園浄はまた磁石を作り始めた。
「・・・・・・そう、ならいいや―――」
「何が良いんだ?あぁ、そうか、消えることに未練はないんだな?潔い奴は嫌いじゃないぜ!っはは!くらえ!お前に反応する磁石――」
「空間転移・・・・。」
そういうと、のび太はこの世界から消えた。
「・・・・・・・・あ?どうなってやがる。あいつはどこに・・・。」
握り拳を作ったまま、園浄は固まっている。
「・・・・・・・。」
のび太は必勝の機会をうかがう。・・・あー、視界が一瞬ぶれた。こいつが体にかける負担は尋常じゃない。どうやら時間がないようだ。
「あーあー、どこに隠れたんだ?こいつでどこまでも追えるんだぜ〜!」
だが園浄は手を広げない。これが意味することは・・・・。
「・・・・・・・わかった。園浄は反応する存在が見えないとその力を行使できないんだ。ということはつまり。」
のび太は算段をたてる。あいつの守りを打ち砕き、完全に打ち負かす方法を。
今は思考がクリアになっている。体に深々と進入していくこいつのおかげで考えをまとめやすくなった。今は園浄に感謝だ。
「よし、これで行こう・・・。」
算段を立てたのび太は、園浄の後ろに姿をあらわした。
「・・・・・・。磁石が反応してる・・・。後ろだな!」
園浄は振り向く、そこには何もない。
・・・・そう、あの巨大な球すらも・・・・・。
「自分で持ってきたものは自分で処理するんだ!園浄!」
空間ごと裂いた球を投げる。
「はっ、そんなもの―――!」
そう、この球は磁石でとめられる。だがこれで今園浄は両手がふさがっているはず。
故に、ここで勝負を決める必要がある。
「次はこれ!」
適当な石を投げつける。だがそれは園浄の足元の磁石に吸い寄せられる。
「っははあ!無駄だ!俺に石はあたらねえ!」
「これで終わりと思ってはいけないよ!」
そう、これには続きがあった。
今もなお石を吸い寄せさせ、目くらましに使ってみる。
その間に僕は後ろに行く。
「・・・・また後ろだろ?馬鹿か?お前死んだな!ほれ――」
「・・・・・・足、動かないでしょ。その磁石のおかげで君の足場は石だらけ。足が埋もれてること、気付かなかった?更に言うと君は今その球を見ている。見ていないと力を行使できないから。目を離したら球が自身にぶつかるから。だから後ろは最大の死角。それを補うために、僕に反応する磁石、いや、僕とそれを結ぶ磁界を作ったんだろ?まあ、そいつからの一方的な吸い寄せになる原理はわからないけど・・・。」
説明口調になった僕に、焦り始めた園浄が言う。――心の中で何かが笑う。
「冗談じゃねえ!誰が力を行使できないだ!?今すぐこの手を広げたらお前なんて消えちまうんだぜ!命を握られている立場の野郎が達者な口きくな!」
「ふぅん、だったら早くしてよ。その力、行使してよ。」
「・・・・・・・・・・。」
園浄は黙り込む。――笑うのをやめない
「・・・・・やっぱり、使えないんだね。全く。強がりはいけないよ。・・・さて。話すことはもうないよね?」
その言葉を聞いた園浄は、声色を変える。――園浄をみてまだ笑っている。
「お、おい。まさか本気で俺を殺す気なのか?やめておけって!大助が何をするかわからないだろ!お前殺されるかもしれないぞ!」
この状況を打開したいのだろう。しかし、――心の中の何かが消えていった。
「・・・・・いいよ、もう敵同士だ。関係ないね。・・・言いたいことはそれだけ?・・・じゃあ、ね。」
そういいのび太はあらかじめ別世界にあったガラスの破片を園浄めがけ発射した。
「い・・・・・・いてえ!あ、やめ!ぐああああああああ!!!!!!!!!」
園浄の磁石の力が弱まったのか、球が落ちてきた。
しかし、完全に落ちる前に、その球は消えてなくなった。
「・・・・・。ん、体に埋め込まれてた変なものも・・・なくなってる。」
体がすっきりした。しかし、これが意味することは。
「・・・・・・園浄。あの球をあの時点で撃ってたら、僕は死んでたのに。僕を殺したくなかったのか?」
そこには何も残ってない。人がいた形跡も。
「・・・・・・・・死人に口なし・・・・か。」
辺りを見回す。学校はつぶれ、所々に戦いのあとが残る。
これはきっとかなりの範囲に知られているだろう。
「もう、ここにはいられないな・・・・。ここは、僕が日常生活に戻れるための、最大の柱だったのに。」
のび太は山へと向かう。
ここの学校を、昔の思い出と共に、力の行使の代償として、記憶の中から消していった・・・・・・・・。




第三話【崩壊の柱】終了

短めにまとめすぎた。。。。。


第四話【信じたもの・信じた道】は機会を見て・・・・・・。


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