本当なら今頃、暖かい布団の中で、明日やることを考えているハズだった。
もしくは、今日のことを静香とメールしていたかもしれない。
とにかく、また平凡な、しかし楽しい日常が始まるための夜になっていた。
ハズなのに。
どうしていつもこうなるのだろうか。
どこで僕は、間違えたのだろうか。

ドラえもん、君をあの時、見捨てたからかい?

自分が助かるために、君を置いて、逃げたからかい?

だから君は、僕に、こんな力をくれたんだろ?

でも、静香は関係ないだろ?だって彼女は、魔法も何も、知らないだろ。
それとも、僕と出会ったことが、間違いなのか。
だからって、この終わり方は無いだろ。
はは・・・・。
なんで静香が僕の前を走ってるんだ?
あの男が放った魔法は、人一人の身体を壊して、おつりが来るほどのものだ。
じゃあ、それが当たったら、静香はどうなる?

もちろん

それは・・・

死・・・・・。

第三章B「覚醒」

爆煙がおこり、少し遅れて、盛大な音が響く。
その音源の方を見つめて、武は薄ら笑いを浮かべる。
あの二人は、間違い無く死んだ。どうせそこらの野次馬だろう。たまたまここにいた
のが、「運が悪かった」だけだ。仕方がない。
そう考え、武は再び、白コートに向き直る。しかし
「いない・・・」
そこには、仮面の破片しか残っておらず、肝心の白コートの姿が無い。
「逃げたか・・・」
結界を張って、周囲の状況を探るが、とてつもなく大きな魔力しか・・・。
ん?魔力?
慌ててそちらを振り返るが、もう遅い。影が顔に覆い被さる。
世界が反転する。投げられた。
あの野郎、魔力、抑えてやがったな。
それが白コートの手だと判断しながら、体制を立て直す。
足を下に向け、40mほどの高さから、軽く着地する。
同時に、バックステップ。直後、それまで武のいた場所に、時空の歪みが出来る。
白コートの舌打ちがした。
間一髪でそれを避けた武は、着地と同時に、大声で笑いだす。
「・・・何がおかしい・・・?」
訝しげに、白コートが武に問う。
その問いに、武は
「ヒィーはっはっはぁ!あー偉くなったもんだぁなぁ。えぇ?昔は虐められてたく
せにさぁ!」
と、答える。
一瞬、白コートの表情が曇る。しかし、そんなことは気にもせず、武は続ける。
「しっかし最初は誰だかわかんなかったぜぇ!雰囲気違いすぎだぜ?自分でもそう
思うことは無いのか?ああ?安雄さんよぉ!!」
最後の一言に、白コート、いや、安雄は反応した。そして、笑う武に向かい
「そうか、ばれたか。まあいいか。ところで、君は一体何なんだ?」
ここで、武は、ニヤリと笑う。
「みたところ、剛田 武では無さそうだが」
その問いに、武は、待ってましたとばかりに
「俺は、メシアだ」
「メシア?」
「そう、救世主だ」
ああこいつやはり頭が・・・。
安雄はそう考え、頭の逝かれた奴を、治す方法を思いつく。
「そうだな・・・」
言うと同時に、ザッと戦闘体勢になる安雄。
「倒し、元の頭に戻してやる」
その言葉と、今まで以上の緊張に、武も、笑みを消し、集中状態に入る。
張り詰めた空間が作られた。

「はは・・・」

その空間を破ったのは、弱弱しい笑い声。
ほぼ同時に振り返った二人の見たもの。
それは
左半身の無い少女の身体を抱えて、涙を一筋流しながら、しかし口元には笑いを浮
かべる、一人の少年の姿。
安雄と武が息を呑んだ瞬間。彼の口から、言葉が漏れる。

「治んないんだ・・・静香が・・・」

そう、再び、弱弱しく、呟いた。

 

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