マンション


プロローグ

……野比被告の判決は――『懲役十五年』の刑を言い渡す!
うわぁぁぁぁぁぁ!
茶色い柱。きちんと並べられた席。――裁判所の中。判決が下り、歓喜に満ちていた。
涙を流している者までいる。
―――僕が犯人!?何で?どうして、殺人した事になってるんだ?……おかしい。僕は人殺し
なんかじゃない! でも、おかしいよ。だったら、どうしてこんな場所にいるんだろう?
もう、逃げたいよ……ドラえもぉぉぉぉぉんんんんん!

『カチャッ』留置場の鍵が閉まる。監視員は、近くの椅子に腰掛け、煙草を吹かし始めた。
 ……その時、チャラっと音がして―――鍵が落ちた。あの監視員のポケットから。
 あれを取れば……。のび太の腕は、無意識にそれに伸びていた。どうする?取るべきか、
取らざるべきか……!

気付くと、のび太は外に居た。あの高い塀を乗り越えて。 もう、何も考えず―――走り出した。
逃げなきゃ、逃げなきゃ……! ただただ、走っていった。


第一話

「ここが、僕の住む所か……。」
のび太は、あの後指名手配された。が、なんとか長野の田舎町まで逃げ延びた。
のび太は、村役場で住民手続きを済ませ、ため息を吐いた。――十一月末、という事もあって、
息が白くなっていた。思えば、二ヶ月もあんな重苦しい、留置場なんかに居たんだな。でも、
ここまでくればもう大丈夫――多分。
 気付けば、新天地が眼前に迫っていた。古ぼけたアパート。しかし、門柱には『グリーンマンション』
とあった。今時、こんな所あったんだな。まぁ、警察から逃れられるなら別にいいけどね。
 その門柱をくぐると、入り口のドアがあった。ただ、自動ドアではなく、普通の手動式のガラス戸だっ
た。のび太は、ゆっくりと開けた。
 中は、マンションと呼べないほど薄暗かった。電気はとおっているのかな?目の前には、すぐに部屋
があり、ドアに101とあった。その下には、小さく(管理人室)とあった。その右手には、ドアが延々
と続いていた。
「ちょっとアンタ。」
――何か、声色の高い声が聞こえた。のび太がばっと振り向くと、そこには、七十代前半のような老婆が
立っていた。顔が、くしゃくしゃに歪んでいた。いや、睨んでいる、とも見えた。
「アンタ、ここに新しく引っ越してきたやつかい?」
「は、はい……そうですが…何か?」
「私が、このマンションの管理人さ。」
「はい、よろしくお願いします……。」
のび太がはっと気付くと、管理人が明らかに睨んでいた。それも、すごい目つきで!のび太は、自分が
なぜこんなに睨まれなければいけないのか、不快と同時に、疑問が波のように押し寄せてきた。
「アンタの部屋は……203だね。」
そういうなり、乱暴に鍵を放り投げた。のび太は、運動音痴だったがこの時ばかりは、なぜかキャッチ
できた。
「くれぐれも、デカイ音だけは出さんでおくれよ!」
それだけ言うと、ほうきとちりとりをもって、外へ出て行った。
やれやれ、この人は、僕みたいな若い人が嫌いなのかな?
しかし、ふっと息をつくと階段を上って行った。


第二話
のび太は、二階に上った。二階は、一階の薄暗い廊下とは違い、明るい。やっぱり、二階で良かった
と思いつつも、202のドアにゆっくりと鍵を差し込んだ。
「和樹!待ってよ、和樹!」
何か、上の方から、女の高い声が聞こえた。何だろう?カップルの別れ際かな?
それと同時に、ドダドダと階段を駆け降りていった。走った者が、誰かは分からなかった。
 それと同時に、別の思考がのび太の頭の中に入り込んできた。昔、のび太は『源静香』という女子に告白
した。勇気をふりしぼって。―――が、あっけなくふられた。やっぱり、男と女なんて、こんな物だ。
 はっと我に返ると、さっき、声を上げていた女が二階にやって来た。泣いているらしい。昔ののび太
なら、きっと慰めることぐらいはできただろう。しかし、今はすっかり冷めてしまっていた。
のび太はふと、うずくまっている女が、どこかで見た事がある、と感じた。
 おさげ。細い腕。 確か――自分をふった……!

「し…静香ちゃん!?」

のび太が静香と思っている女は、こちらに視線を向けた。涙を拭いながら、真っ直ぐに見ている。見れば見るほど
静香ちゃんだ。静香(?)は、不思議そうにのび太を見ている。
「あなた……誰?」
 のび太は、思わず前へ詰め寄った。
「僕だよ、のび太だよ!」
「聞いたこと無いんだけど……。」
「野比のび太だってば!ほら、覚えてるでしょ?」
「知りません……あっち行ってください!
「そんな!まさか、忘れちゃったの?静香ちゃん…!」
 女は、既に階段がわに身を退いていた。
「何いってんの!?私、『万理子』って言うんです!それより、貴方さっきから何ですか?不審者?それとも
 ストーカー?キモイからあっち行ってよ、オッサン!」

―――のび太は、圧倒した。違う。この娘は違う。静香ちゃんじゃない……!
万里子は、のび太の尋問(?)から逃れるため、三階に上った。

※和クロさん、すいません。前に送信した話は、プロローグと、第一話です。
 分かりづらくてすいません。


第三話

三階にてのび太も、真相を突き止めるべく、三階へ上った。いや、のび太はもうブレーキがきかなくなっていた。
一つずつ、部屋を調べて行く。 301、空家らしい。ここじゃない。302、表札には『犬山』と書いてあった。
 ここも違う!どこかで、聞いたことあるが―――今は関係ない。そうだ。303を調べた。『沢村』とあった。聞いたこと
無いから、ここだろうか?いや。304も調べて―――見た。表札には、こうあった。


               『源』


 やっぱり!さては静香ちゃん、嘘ついてるんだな。僕を驚かせようと思って―――!
もし、誰にも話し掛けられなかったら、きっとのびたは幸せな妄想を続けられた。しかし、話し掛けた人物が、いた。
「おい」
のび太は、満面の笑みで後ろを振り返った。 そこには、二十代の、今時な服をを着た若者が立っていた。
いかにも、『僕は青春してま〜す』という雰囲気で(のび太がこういっているのには、理由があった。なんと、のび太は三十を
越えていた三十路って言う奴)。
「何ですか?」
「何ですかじゃねーよ、オッサン。万里子ん家の前で、何してんだ?」
「いや〜、ちょっと、静香ちゃんに用があって。」
すると、男は不思議そうな顔と同時に、警戒心がわいた。
「お前、万里子のなんなの?しかも、静香ちゃんって誰だ?」
―――その時だった。静香、いや、正確には、万里子の声が響いた。
「和樹!そいつ、ストーカーよ!追い払って!」
和樹は、ばっとのび太の方に振り向いた。
 のび太は、何が起こったのか、理解できなかった。
え?僕がストーカー!?
 しかし、のび太は考える暇が無かった。―――なぜか?

それは既に、和樹の右ストレートがのび太の顔面に入っていたからだった。
のび太は、あっけなく倒れた。頭の中が、グルグル回っている。
 が、それもすぐに終わり、視界が暗くなった。



のび太が気付いたのは、引越センターのトラックが来てからであった。
片付けと運び出しが終わっても、のび太はもうあそこには行かないと決めた。


第四話 隣人
 ここに来て、二日目。起きてすぐ、お腹が鳴った。 そういえば、昨日から何も食べていなかった。
コンビニ行って買いに行くかな……。財布の中を確認すると、五百円程度しかなかった。
こんなもので、何か買えるか?しかし、心中で文句を言っても始まらない。買いに行くとするか…。
 のび太が外に出ると、何か甲高い悲鳴が聞こえた。
『キャー!!!』
万里子のものじゃないと確認すると、安堵の息を洩らした。
 隣から?のび太が203へ走ると、何か茶色い板が飛び込んできた。
「ゴン!」
「いったぁ〜〜!」
どうやら、思い切り開いたドアにぶつかったらしい。
 のび太がうめいたのとほぼ同時に、人が出てきた。
「あ、ぶつかりました!?本当にごめんなさい!でも、今それどころじゃないんです!あれ、あれ!」
隣人が指差した先には―――何か、茶色い物体があった。 ゴキブリ?
「あれって、ゴキブリですよね?」
「そうなんです!だから、驚いているんじゃないですか?」
のび太は、ゴキブリを、チリバサミでとり、外になげ捨てた。
「終わりました。」
隣人は、不思議そうな目で見ていた。しかし、その目は瞬く間に明るくなった。
「ありがとうございます!もう何言っていいのか……。」
「いや、そんな……。」
「あ、お隣りですよね?これから、宜しくお願いしますね!」
のび太は、何だか久しぶりに温かい気持ちになった。
 


第五話 万引き

「野比!無断欠席とは何事か!!!」
「はい、すいませんでした・・」
 のび太は昨日、仕事を休んでいたため、上司から激を飛ばされていたのだった。
 その帰り―――

 ふぅ!!何も一日中叱る事無いと思うがな・・・・!!!・・久しぶりにビール・・いや、
チューハイでも飲むかな・・。
 そう考え、スーパーマーケット(ここで一番大きい)に立ち寄った。来るのは初めてなので、
飲料コーナーを探すのに戸惑った。―――やっと、飲料コーナーを見つけた、その時―――

「コラ!キミ、ポケットに入れている物を出しなさい!」
店員の声が響いた。―――万引きか?傍には、中学生位の少年が店員を睨んでいる。

まったく、最近の若者って一体どういう神経してるんだ?
僕が中学生の時は、こんな事―――

なぜか、のび太に視線を移した。そして、
「あいつがやれって言ったんです!本当です!!」
のび太は、一瞬少年が言っている事が分からなかった。
 え?僕が言った?何言ってんだ、コイツ。
「おい、本当なのか、アンタ?」
店員がこちらに近づいて来る。
「え?違いますよ!!絶対に!何で僕が―――!!!」
「万引きしないと殺すって言ったんです!」
「ようし、ちょっと来てもらうぞ!」
「え?だから違うといってるでしょう!!」
「分かった、分かった。言い訳は後だ!!」
 のび太は、信用されずに事務所へ連行された。


のび太が消えた後、残った少年は、眼は気の毒そうに見ていたが、口元では微笑を浮かべて
いた――。


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