第六話 『片倉サブロー』

「だから、僕じゃないんですってば!!」
「店長、こいつもう警察に通報しましょう!!」
 店員が細い指で机をたたきながら、いらだちそうにしながら言った。
「ああ、そうだな!お前、電話持って来い!!
――マズイ!!のび太は警察から逃げる理由があった。――どうすれば――!!

「バアン!!」
事務所のドアが勢いよく開いた。
――身長少し高めの男。どこかでみたような――確か小五の時、クラスメイトだった……
そう、「片倉サブロー」だ!――だが、なぜこんな所に?
「こいつは犯人じゃありません!ウチの正浩が出来心でやったんです!だから、「野比…」じゃなくて
 この人は全くの濡れ衣です!!」
「何だって!?」
――結局、のび太が解放されたのは夜十時頃だった。店はお詫びとして、「ハムセット」を
無料で送る、と言ったがもう何も喉を通らないと感じ、断った。

 マンションに帰って来た。そこで「ふぅっ」とため息をついた。二階に上がると、隣人が
廊下を這いつくばっていた。
「何してんですか?」
「はぅ!?スイマセン、私今日からコンタクトレンズにしたんですけど……落としちゃった
 んです!……ここで!」
のび太は、隣人をゴキブリから救ったことがあった。・・ほっとくわけにはいかない・・。
「僕も手伝いますよ・・!」

―――その時だった。二階の階段の所。そこに「片倉サブロー」がいるのに気が付いた。
 そういえば、隣人の隣の204の大家族の中に片倉がいるのを思い出した。
 のび太は急に気まずくなり、壁側に寄った。片倉はのび太と隣人を無視し、204に走って
行った。

 のび太はまた暗くなってしまった。

※すいません。前のものは、第五話です。タイトルは万引きです。


第七話 あのコンビ

 のび太は、午前五時に起きた。――三時間前(午前二時)、隣人の
コンタクトレンズがやっと見つかった。お礼として、熊の縫いぐるみの形のお守りを貰った。
――変な形だ、と感じた。
それはともかく、家に帰ると、大の字になってすぐ寝た。



「バンバンバン!!」
しきりに、誰かが玄関ドアを叩いている。――誰だ、こんな時間に?
僕は昨日、深夜まで起きていたっていうのに……。
 のび太はよろめきながら立ち上がり、畳に落ちていた鍵を拾い、玄関に向かった。
―――ドアを半開きに開けた。

「『野比 のび太』という男はここにいますか?」
「はい?それ、僕のことですが?」
「あなたがですか?」
もう一度聞き返した男は二人いた。一人は、尖った口。そして、同様尖った三段の髪。狐の
ような眼。そしてもう一人は、さっきの男よりも頭一つ身長が高く、大柄だ。
 どちらも、どこかでみたような気がした。


 …………ジャイアン…………スネ夫…………!!


「失礼ですが、貴方達剛田さんと骨川さん?」
「そうですが・・・まさか、のび太か?」
「やっぱり、のび太!!?」
――懐かしの再会。まさか、こんな所で―――!!
「―――と言いたい所だが。」
「え?何?」
 もう一人の、大柄な男が空を切って、言った。


「野比のび太――お前を殺人容疑及び留置所脱走の罪で逮捕する・・・・。」
――そういうと、愕然としているのび太の手首に手錠をかけた。



   to  be   continued……!
 


第八話 相談
 

「え……!??警……察……!??」


「ぷっ」
「へっ?」
 その瞬間、信じがたい事――のび太が予想だにしなかった事――が起こった。


「あーーーはっはっは!!ドッキリ成功!!」
「ジャイアン、ばっちり、カメラに納めたよ♪」
「のび太、驚いたか!?いやーー、相変わらず面白かったぜ!!」
「え? どういう事ぉぉぉぉ!!!???」

 どうやら、これは二人のドッキリカメラ(いたずら)だったらしい。よくみると、警察手帳も
手錠も偽物だった。―――が、のび太は怒りよりも楽しかったという方が強かった。
 久しぶりだな、二人とも―――。

「ところで、何で二人ともここに来たの?」
「おぉ、心の友よ、よく聞いてくれた!コイツの話を聞いてやってくれよ!」
「スネ夫?どうかしたの?何があったの!?」
「それが・・僕の会社潰れちゃって・・・。」
 スネ夫の話はこうだった。


―――スネ夫は、父の会社(骨川物産)を継ぎ、去年若社長となった。他社競争も、いろいろ
な政策をとり、父の頃より凄い成長ぶりをとげた。 しかし、融資していた大手企業が倒産し、
こちらも経済的に危うくなった。 
――そして一週間前の『あの日』。
 何と、会社の金庫の鍵がなぜか、見事に開けられていたのだった。中の残金は、全部何者かに
ごっそり盗られていたのだった。
 ――あっという間に「骨川物産」の株主は他社に株を売り払い、倒産してしまったのだった。


「うぅ……どうすればいいんだ……」
それを聞き終わった後、のび太は自信なさそうな表情に戻った。
「ス……スネ夫?そ、そんな深刻な事、何で僕なんかに?
 静香ちゃんに頼めば――」
その発言とほぼ同時に、ジャイアンが口を挟んだ。
「それなら、俺達も考えたよ。でもよ――、そうか、お前長い間ム所いたから
 分からなかったのか。」

え?なんだ?僕がいない間に、一体何があったんだ?

ジャイアンは、スネ夫が泣いているのをよそに、続けた。
「遭難。静香ちゃんは、大学のサークル仲間と一緒に雪山に行ったんだ。
 お前が逮捕されて、二年経ったぐらいだったな。
 静香ちゃんを慰めるためにサークルの奴らは誘ったんだ。
 まだ十九歳だった俺達と静香ちゃんは、ショックだったぜ。なにせ、のび太
 が逮捕されてから、静香ちゃんはずっと落ち込んでいたんだ、
 お前のために。」

 のび太は落胆、いや、生まれて初めてとびきり刑事ドラマに使う手錠をかけら
れた時よりもショックだった。打ちのめされた。のび太は、あの時既に嫌われ
たのだと思っていた。だが、そんなことは無かったのだ。静香ちゃんは、ずっ
と――。

 ジャイアンは、泣き続けたスネ夫のくしゃくしゃになった顔をみて、爆笑し
ていた。のび太は、ジャイアンの話を聞こうとしたが、やめた。二人は、理由
があって来たのだ。

 のび太は、無い頭を最大限にフル回転させ、回答した。
「スネ夫のことだよ、また新しい会社作ればいいじゃないか!!」
「おお、のび太、お前にしてはいいアイデアじゃねーか!!」
「そのための金が無いから、困ってるんじゃないか……!」
 だが、スネ夫の発言は聞き流され、二人は無謀な案ばかり出しまくる。 
 やがて、話がそれ、
「俺、大型店舗だしたんだよ」「えぇー!」等、世間話と化してしまった。
 
 スネ夫は、『こんな奴らに話しても無駄だった』と後悔した……。


第九話 相談A

「ドンドン!!」
 午前六時。また、誰かがドアを叩いてきた。
「もしかして、借金取り!?」
 怯えるスネ夫。ジャイアンが拳を握り、身構えた。
 ――のびたは、思い切ってドアを開けた―。


 ――そこには、隣人が立っていた。三人は、ほっと胸をなでおろした。
「のび太さん……昨日、免許証落としていきませんでしたか?」
 あ……!と、のび太は胸のポケットを探った。『植物現状調査員』の者が所持している物だ。
 確かに無い。
「有難うございました。」
 のび太は頭を下げて、おじぎをした。
「いえ、こちらこそ、ゴキブリとコンタクトのお礼です。」
 ――その時、二人が割り込んできた。


「ヒューヒュー! のび太もスミに置けねーな、この野郎!のび太のくせに!」
「何!?のび太、どうしてこんな可愛い娘紹介しなかったんだよ!?」
 スネ夫は悔しがり、ジャイアンは冷やかす。 まったく、子供の頃と変わっていない。

 このまま、隣人を帰すわけにもいかないので、朝食に誘った。 いつもはカップラーメン
で済ますのだが、いくら面倒くさがりののび太でも、失礼だと感じ、料理をしようと考えた。
 ――だが、何を作ればいいのだろう?

 のび太が悪戦苦闘している間に、隣人は、スネ夫とジャイアンに質問攻めを受けていた。
「好きなタイプは何?」
「バカ野郎!まずは名前から聞くのが礼儀ってモンだろ!!……で、お名前は……?」
「じ……実は……私……!」
 二人は、唾をゴクリと飲み込んだ。


「おーい……朝食できたよ……なんとか……。」
 のび太は、黒く焦げた卵焼きと、水水しいご飯を四人分持ってきた。
 ――さっきまで、五月蝿い程だったのに、三人共異様に静かだった。
 なぜか、ジャイアンとスネ夫は恨めしそうにのび太を見つめている。
 え?何があったんだろう?
 それはともかく、のび太は料理(?)を差し出した。


「さあ、食べてみてよ……!」
 が、スネ夫とジャイアンは手をつけなかった。
「お……俺、外で食ってくるぜ……んじゃ」
「待ってよ、ジャイアン僕も行くよ!」
 二人は、逃げ出すように出て行った。

「フ……ウフフ……美味しそうですね……。」
 そうは言っても、隣人は顔が明らかに引きつっている。
「あ……無理して食べなくてもいいよ!」
 のび太は隣人の顔をうかがいながら言った。
「いいえ、たべます!折角、のび太さんがつくってくれたんですから!」
 隣人は、卵焼きを恐る恐る口に入れた……。
「す、すいません、のび太さん!」
 隣人は、口を抑えながら203(隣人宅)へと、猛ダッシュで走っていった。
おそらく、戻しに行ったのだろう。

 のび太は、初めて『料理をしておけば良かった』と後悔したのだった……。


第十話 相談B
 九時頃――隣人の嘔吐がやっと止まった。
「フフフ……もう大丈夫ですよ……。」
 隣人の顔はまだ青白かったが、もう意識もはっきりしてきたようだった。
(と言うものも、隣人はのび太の料理を食べた後、吐いたのだが、ふらりと倒れてしまったのだ。)

「問題は、やはり金を盗んだ奴らだな。」
 ジャイアンは、いきなり呟いた。スネ夫はくたびれ、独り言をぶつぶつ言っている。のび太の
頭も、未だに五年生の算数の問題もできないのに、事業関係なんてもっての他だ。


 ―――ふと、隣人が口をはさんだ。
「あの〜、これってどういう事何ですか?」
「は?」
 のび太とスネ夫は、目を丸くして隣人をまじまじと見つめた。
「つまり、骨川さんは何をしようとしているんですか?」
「それは……盗んだ奴をつきとめて、懲らしめて、僕、いや会社の財産を奪還するんだよ!」
 のび太は、隣人に言う必要があるのかと思いつつも、いきさつを話した。


「う〜ん……もし例えば、のび太さんが盗人だとしましょう。」
「何!?盗ったのは、のび太なのか!?」
「違うよ!例えばの話だよ!」
のび太とスネ夫は、必死でジャイアンを抑える。
「のび太さんなら、大富豪の邸(やしき)と、このマンション(?)のどちらのお金を盗もうと思いますか
 ?」
「普通、大富豪に決まってるよ!でもそれって、当たり前じゃない?」
「そうそう、ボンビーな所に金がたんまりあるわけねーじゃん!」
ジャイアンも、ここだけ分かったらしく、頷いた。
 隣人は突然、『バンッ!!』とテーブルを叩いた。
「そこですよ!!貧乏だと分かっているなら、そんな所からお金を盗もうなんて、誰も思いませ
 ん!このマンション(?)だって貧しい人達ばかりだから、泥棒に入られた事は一度も無い
 んですよ!つまり―――」
 この時、スネ夫はなぜか口を挟んだ。
「いやいや、少し撤回してくれ。僕は貧しくないよ!だって、最近新しいノートパソコン――」

「分かった、分かった。それで続きは?」
「ガーーーン!!」
 あっさり自慢話を受け流され、スネ夫はショックを受けた。そして、その尖った口を、むんず
と掴まれた。
「続けますよ?つまり、倒産寸前の会社のお金を盗むなんて、おかしいんです!――きっと、
 何か別の目的があるんじゃないんでしょうか……?」
 のび太は向き直ると、スネ夫に聞いた。

「何か、心当たりとか、恨まれてそうな人とかいない?」
「そう言われれば……『木鳥』とかいったかな……あいつ、僕を相当恨んでいるらしい!」


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